The Young Rascals
How Can I Be Sure 1967 " Groovin' " Atlantic SD8148/LP |
||
ファースト・アルバムの『The Young Rascals』、セカンドの『Collections』とR&Bを中心としたカヴァー曲を多く用いることによって、自分達のルーツを奔放に、泥臭く表現していた彼らが、1967年夏に発表した本作では、自作曲を中心に、自らのアイデンティティをよりストレートに展開しました。全てのロック・ファンに聴いて欲しい不朽の名盤。
ニューヨークのクラブ・バンドとして出発した The Young Rascals は1965年にR&Bの名門 Atlantic レーベルと契約します。Atlantic が黒人以外のアーティストと契約した最初が彼らでした。メンバーは Felix Cavaliere(Vocal,Organ)、Eddie Brigati(Vocal, Percussion)、Gene Cornish(Guitar,Bass)、Dino Danelli(Drumus)の4人。4枚目のアルバム『Once Upon A Dream』からはグループ名から Young がとれ、The Rascals と改名して黒人音楽への情熱を深化させるとともにヒット・グループとしての不動の地位を築きます。 R&Bのアイデンティティーを前面に打ち出した彼らは後に『Freedom Suite』などで大きく開花し、スケールの大きなブルーアイド・ソウル・ミュージックへと発展することになります。 |
||
「How Can I Be Sure」では Eddie Brigati が「変わり続けるこの世界でどうして信じることができるのか」と静かに絶望し、「A Place In The Sun」では「きっと太陽を見つけてみせる」と希望を抱く。こうした振幅を持った切なる思いは、当時の病んだアメリカの気分を象徴しているのではないでしょうか。しかしこうした思いは21世紀に入った今もってある種のリアルさを持って私たちの心に届きます。
一方で、Felix Cavaliere の朗々とした歌声は非常に個性的で陽気なイタロ・アメリカン然とした独特の響きをもっています。名曲「Groovin'」は陽光降り注ぐ地中海のリゾート地へのニューヨークからの憧憬といった感じ。ドラムの Dino Danelli のカヴァー・イラストもこのアルバムの雰囲気をよく伝えています。また Atlantic きっての名プロデューサー、Arif Mardin がストリングス・アレンジを手掛けたこともあり、アルバム全体にそれまでとは違った色彩感を与えています。 1998年に、このアルバムを含む Atlantic 時代の7作品がすべて日本盤ボックス・セットとして(一部世界初)CD化されましたが、このときに監修を務めたのは山下達郎氏。待望のそして入魂のリ・イシューでした。 (脇元和征) |