2020.07.27 - Cinema Music Composers | ||
Love Affair
Ennio Morricone (1994) |
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(2020年7月6日に亡くなった Ennio Morricone さんを偲んで。長きに渡って、素晴らしいメロディを届けてくれた Ennio Morricone さんに感謝です。ご冥福をお祈り申し上げます。)
Cinema Music Composers シリーズ、
今回は趣向を変えて、3つの映画、『めぐり逢い』の中で流れた3つの曲を聴いていきたいと思います。
映画『めぐり逢い』は過去3度、映画化されています。
最初に制作されたのが1939年『邂逅(めぐりあい)』(LOVE AFFAIR)です。監督は後に映画『我が道を往く』(GOING MY WAY、1944)を撮ることになるレオ・マッケリー(Leo McCarey)で、主演はシャルル・ボワイエ(Charles Boyer)とアイリーン・ダン(Irene Dunne)でした。
『邂逅(めぐりあい)』の撮影当初は監督のレオ・マッケリーとミルドレッド・クラム(Mildred Cram)が作った基本ストーリーしかなく、脚本がまだ未完成のまま撮影ロケに入ったそうです。そこで脚色をまかされたのが、デルマー・デイヴィス(Delmer Daves)とドナルド・オグデン・スチュワート(Donald Ogden Stewart)の2人。2人は毎日、顔を突き合わせ、基本ストーリーを元に練りに練って脚本に仕上げます。そして、その都度、完成した分だけ監督の下に出来上がった脚本を送ったそうです。
デルマー・デイヴィスは後に監督として1957年の映画『決断の3時10分』(3: 10 TO YUMA)という優れた西部劇を撮ります。1959年の映画『避暑地の出来事』(A SUMMER PLACE)も彼の作品です。ドナルド・オグデン・スチュワートの方は1940年の映画『フィラデルフィア物語』(THE PHILADELPHIA STORY)でアカデミー脚色賞を受賞しました。
監督のレオ・マッケリーは1957年に自分で監督したこの映画をセルフリメイクします。映画『めぐり逢い』(AN AFFAIR TO REMEMBER)です。主演はケイリー・グラント(Cary Grant)とデボラ・カー(Deborah Kerr)。ストーリーの骨格、重要シーンは前作とは殆ど変わりなく、完成度をより高めた形となっています。印象的な音楽を担当したのは、Harry Warren。彼の晩年の作品となります。
1994年にウォーレン・ベイティ(Warren Beatty)が制作で再度リメイクします。映画『めぐり逢い』(LOVE AFFAIR)で、主演はウォーレン・ベイティ、アネット・ベニング(Annette Bening)夫妻。脚本にはウォーレン・ベイティが加わり、主人公を元アメフト選手にし、現代的にアレンジしています。そして音楽をイタリアの作曲家、Ennio Morricone に依頼しました。
先程書いたように練られた脚本によって様々なシーンで仕掛けられた洒落た会話、そして会話の中に織り込まれた伏線。そしてその伏線の回収はお見事!としか言いようがありません。特にラスト近くのセリフは何度観ても涙してしまいます。まだ未見の方は是非。
今回は特に好きなこのシーンを。
女性は名もなきコーラスガール。プレイボーイの男性主人公の祖母がこの歌声で女性の人柄を見抜き、孫にふさわしい女性だと確信するシーン。歌の途中、遠くで船の汽笛が鳴り、祖母との別れが近づいてきます....。
旅のひと時の癒しのシーン。男性主人公の祖母の登場は基本ストーリーには大きな影響を与えないのですが、このシーケンスが存在することによって、2人の優しさが伝わり、お互いの気持ちが通じ合う大切なシーンとなります。
それぞれの年代に制作された映画『めぐり逢い』から、同じシーケンスを観ていきたいと思います。いずれも音楽が重要な要素となっています。
1939年『邂逅(めぐりあい)』から "Plaisir D'Amour" / Jean Paul Martini
まず最初に制作された『邂逅(めぐりあい)』から。ここで歌われたのは18世紀にパリで Jean Paul Martini によって作られた曲。日本では"愛の喜びに" のタイトルで広く知られています。この旋律を元に、George David Weiss は Elvis Presley が歌った "Can't Help Falling in Love" を作ることになります。
1957年『めぐり逢い』から "An Affair To Remember (Our Love Affair)"/ Harry Warren
レオ・マッケリー監督によるセルフリメイクとなった1957年の映画『めぐり逢い』(AN AFFAIR TO REMEMBER)から同一のシーケンスを。デボラ・カーの歌声をアテたのは Marni Nixon。曲を書いたのはミュージカル黎明期から活躍していた Harry Warren です。タイトルバック "An Affair To Remember (Our Love Affair)" で歌ったのは Vic Damone でした。
1994年『めぐり逢い』から "Love Affair " / Ennio Morricone
1994年の映画『めぐり逢い』から。祖母役で出演したキャサリン・ヘプバーン(Katharine Hepburn)はこれが遺作となりました。アネット・ベニングのハミングをアテたのは、Ennio Morricone の作品に欠かせない女性シンガー、Edda dell'Orso。
祖母が住む南洋の島のロケーションもとても素敵です。撮影は映画『暴力脱獄』(COOL HAND LUKE、1967)、映画『明日に向って撃て!』(BUTCH CASSIDY AND THE SUNDANCE KID、1969)などを撮ったコンラッド・L・ホール(Conrad L. Hall)。美しいカメラワークです。
"Love Affair" Suite / Ennio Morricone(1994)
1994年の映画『めぐり逢い』のオーケストラバージョン。後半は、Gilda Butta によるピアノ、そしてソロ・ボイスは Edda dell'Orso です。Ennio Morricone が近年になって作った楽曲の中でも特に好きな曲となりました。
Ennio Morricone の初期の楽曲は以下でも紹介しています。
I Cantori Moderni di Alessandroni(Magic Voices シリーズ)
Edda dell'Orso(Magic Voices シリーズ)