達郎書き起こしプロジェクト by ロック軍曹とサーカスタウン

1998/08/09 Sunday Song Book「COZY 特集 (前半)」



山下達郎/氷のマニキュア 1998『COZY』*1
山下達郎/ヘロン 1998『COZY』*2
山下達郎/フラジール 1998『COZY』*3
山下達郎/ドーナツ・ソング 1998『COZY』*4
山下達郎/月の光 1998『COZY』*5
山下達郎/群青の炎 1998『COZY』*6
山下達郎/ブーメラン・ベイビー 1998『COZY』*7

すべて、1998.8.26 発売予定『COZY』より。

レコーディング終了後、取材・プロモーションなどで忙しい。札幌、大阪、
福岡に行ってきた。発売近くなると、また名古屋などに行く予定。
まりやさんの秋に発売予定のシングルのデモ録りも行った。(これはドラマ
のタイアップだそうで、大阪に来る前にデモを急ぎで仕上げたと先日大阪の
FMに出た時に言っていました)。

オリジナル・アルバムとしては通算11枚目。実に7年ぶりのオリジナル・
フルアルバム。『On The Street Corner』や『Big Wave』などの企画ものを
入れると通算で17枚目。

7年ぶりと言っているが、Eric Clapton の『Pilgrim』はオリジナル・アル
バムとしては8年ぶり。Stevie Wonder がニューアルバムを出すとやはりそ
れくらい。90年代に入ると皆インターバルが長くなっているということで、
なぐさめにしている。

出来上がってみると、なんで7年もかかったのという気もする。本来は96
年にでる予定だったが、遅れてしまった。

今週、来週で、全15曲、72分47秒を紹介する。


1. 松本隆の作詞。80年代によくやった言葉数の多い、たたみかけるスタイル。
割とクールな曲なのでコーダだけブラスがある。これだけのために New York
に行ってきた。

一人ではこういう(アルバム作成の)作業はできない。人の輪の中でやならく
てはならない。ちょっと歯車が狂うとなかなかうまいこといかない。なには
ともあれ、社会復帰ができた。


2. アルバム中、唯一手が加わっていない(シングル・バージョンと同じ)。
マスタリングが違うので、少しクールに感じるかもしれない。達郎さんは
こちらの方が好きとのこと。

録ったのが50曲以上。テイクは100を越えた。どのアルバムに近いかと
いうと五目味というかバラバラの『Go Ahead!』に近いが、一人の人間がやる
にはあまりにレパートリーの幅が広いので、コンセプトを作りようがない。
なので、コンセプトはなくて『COZY』というのは居心地が良いという意味で
聴いて心地のよい15曲ということでとらえてもらえれば良い。


3. 今年の春の SANYO のフラジールの CM のフル・バージョン。始めは日本
語でやろうとしたが、Alan O'day による英語詞にした。アカペラではじま
り、生まれてはじめてドラム・ループで作った。
間奏とコーダは Randy Brecker。大阪の Blue note まで追っかけていって
大阪のスタジオで録った。その他 New Yorkで、 Lew Soloff などでソロ
を録ったが、Randy Brecker の勝ち。『Circus Town』以来、22年振りの邂
逅となった。

4. 96年のミスター・ドーナツの CM 用に作った曲で。元々はコンピュータの
同期ものでフル・バージョンを作ってあったが、昨年、元 Sugar Babe の
ドラムの上原裕が 10年振りに復帰した。一曲録ってみようということにな
り、この曲を New Orleans ビートでやってみようということで、これが復
帰第1作。第2作が(大滝詠一の)「幸せの結末。」。同期もののフル・バー
ジョンをボツにして、生ドラム編が採用された。5年前だったら絶対にや
らなかったスタイルだけど、同世代の人がやらなくなったので、自分でや
ることにした。珍しいロックン・ロール・バージョン。

5. 83年の『Melodies』以来、自作自演のシンガー・ソングライターのスタン
スでやってきているが、一番つらい作業が作詞。どこまで作詞で自分の集
中力がキープできるかということで、他の作詞家に頼めればなぁと思った。
しかし達郎さんの作品は字数が少なく(他の3分の1から5分の1)、洋楽
的なメロディーなので、日本語がのりにくい。ほとんどの職業作詞家がギ
ブアップして、採用されなかった。男の作詞家が良いと考えていたところ、
結局昔から自分のテイストに一番近い、松本隆さん以外いないと。松本さ
んとパートナーを組んでいた人達が最近レコードを作らなくなってきたの
で、それでは達郎さんが一緒にやりませんかと2年前にお願いに行ってで
きたのが「ドリーミング・ガール」。今回、15曲中4曲が松本隆さんの
作詞。この「月の光」も松本さんの作詞。他人の詞を歌うのはなかなか大
変で歌いこむまで何日もかかった。演奏は80年代前期の達郎サウンドに
近い。佐藤博のすばらしいキーボード・プレイ、元 Tower Of Power の
Lenny Pickett のサックスの強烈な Blow など聴きどころが多い。コーラ
スは、山川恵津子、佐々木久美、竹内まりや、三谷泰弘、山下達郎の5人。

今回のアルバムは14年ぶりにミキサー(レコーディング・エンジニア)を吉田
保さんがやっている。ミックス、そして録音も3分の2ほど吉田保さんがやっ
ている。

6. '94のはじめのキリンビールのCMの曲。ほとんどオンエアーされることな
く終ったもの。達郎さんも気に入っている一曲で、今回やっと発表できた。
一人で全部の楽器をやっている。5年前ならコーラスをいれたり、バックを
ゴージャスにしたが、年のせいか歌をじゃまされたくないので、シンプルに
した。

7. 今回1曲だけカバー・バージョンが入っている。この曲は加山雄三さんの
1965年の作品。去年還暦を迎え、トリビュート・アルバムを作る際、誘いを
受けたが、今回一人だけで勝手にトリビュートした。 加山さんの作品で一
番好きな作品。ロックン・ロールなのでドラム、ベース、その他楽器をすべ
てを一人で演奏したマルチプレイ。昔からずっとカバーしたかった曲。


誕生日メッセージなどは時間の関係で無しでした。本当はもう1曲かけたかっ
たそうですが、今回は7曲かかりました。

来週も『COZY』特集です。



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