達郎書き起こしプロジェクト by ロック軍曹とサーカスタウン2002/5/19 Sunday Song Book「History of 山下達郎 (5)」
山下達郎/アトムの子 1991/6『Artisan』, 1992/2 Single
山下達郎/Jungle Swing 1993/10 Single, 1995/11『Treasures』
山下達郎/My Gift To You 1993/11『Season's Greetings』*1
山下達郎/Be My Love 1993/11『Season's Greetings』*2
山下達郎/パレード 1994/1 Single, 1995/11『Treasures』*3
山下達郎/Dreaming Girl 1996/5 Single, 1998/8『Cozy』
山下達郎/ヘロン 1998/1 Single, 1998/8『Cozy』
山下達郎/Love Can Go The Distance 1999/11 Single, 1999/11『On The Street
Corner 3』
山下達郎/君の声に恋してる 2001/6 Single
*1 オリジナルはAlexander O'Neal(1988年)。
*2 オリジナルはアメリカ人オペラ歌手Mario Lanzaの1950年のヒット曲。
*3 '82年リミックスバージョン。オリジナルは1976年。
内容
・ツアー
「ツアーもあと4本というところまで来ました。明日、明後日、5/20,21に中野サ
ンプラザホール。本拠地に戻りまして東京の最終公演でございます。お待ち申し
上げております。これが終わりますと今週の土日、25,26に沖縄で最終公演でご
ざいます。いよいよあと4本。張り切って行きたいと思います。」
・アトムの子
「もちろん鉄腕アトムの歌でして。1989年に手塚治虫さんがお亡くなりになりま
して、トリビュートソングを作ろうと思いまして、91年のアルバムに完成10日ぐ
らい前に、超突貫工事で入れました曲です。これが92年2月に『Artisan』の後発
シングルとして発売になりました。ちょうどその頃にSSBがスタートしましたの
で、SSBの一番オープニングのところのジングルはいまだに「アトムの子」が使
われているわけであります。」
・History of 山下達郎
♪ Jungle Swing
「ツアーと一緒にお送りして参りました「ヒストリー・オブ・山下達郎」5回目
を迎えますが、今週でオフィシャルな音源に関しては終了しようかなと。来週は
ちょうど沖縄での千秋楽に重なりますので、そのときに番外編をやって、6月に
入ってレギュラープログラムに戻っていこうかなという感じです。」
「『Artisan』が91年6月に出まして、それのツアーが92年頭まで続きまして、
92年は竹内まりやの『Quiet Life』のプロデュースとアレンジをやりました。
明けて93年、いよいよ私40歳になりまして。この40代の10年間は私にとって試行
錯誤、あっちに行ったりこっちに行ったり、私自身の責任じゃないことも含めて
いろんなことがありました。よく考えてみると、80年代のコンピュータミュージ
ックに翻弄された数年間とすごく似通っておりますので、また5年か10年すると
それがプラスになってくるという感じであります。それがある意味では私たちの
世代と申しましょうか、私はセカンド・ジェネレーションでして、私より5,6つ
上の人がファースト・ジェネレーションですが、そういう人達は日本のロックや
フォークがまだ生まれたての時代を生きてきた人間なので、こういう40代や、ま
して50代で現役としてどういうぐらいにやるかというノウハウが日本の音楽史に
まったくない世界をやっていますので。40代や50代でどうやろうか、みんなそれ
ぞれに試行錯誤を繰り返して、まあ私もその一人ですけど。こういう言ってると
長くなるんですけど。」
「93年6月に「Magic Touch」、93年10月に「Jungle Swing」というシングルを
出しました。これ以降、ずっとシングルを出し続けるのですけど、一作毎に全然
作風が違うということがいまだに続いております。そろそろまた落ち着いてきそ
うな感じがしますけど、いずれにせよそれは試行錯誤の結果であります。そうな
ればなるほど作家主義、アレンジ主導、作品主義といいますか、そういうことが
繰り返されていく訳です。この「Jungle Swing」というシングルは自分一人で
全部演奏しています。自分でも割と気に入っている一曲です。結局オリジナルア
ルバムには入りませんで、95年の『Treasures』というベスト・アルバムに入っ
ております。」
「91年に『Artisan』、92年に竹内まりや『Quiet Life』、93年に作ったのが89
年の「クリスマス・イブ」の大ヒットを受けまして、クリスマス企画アルバムを
作ろうじゃないかと。でも山下達郎はへそ曲がりですから、普通のクリスマスア
ルバムじゃ面白くないので、一人アカペラとオーケストラで歌われたスタンダー
ドナンバーをミックスして作ろうというアイディアでできましたのが、93年11月
に発売された『Season's Greetings』というアルバムです。二つの顔を持って
おります。まず一人アカペラで歌われたクリスマスソング。これはAlexander
O'Nealのカバーであります。」
♪ My Gift To You
「『Season's Greetings』は『On The Street Corner』の番外編とでも言うべ
きものです。本当は一人アカペラで全部やろうと思ったんですけど、この際勿体
ないので、どうせクリスマスアルバムを作るなら、オーケストラを一回やってみ
ようかと。一回やってみたかったんです、オーケストラをバックでやる奴を。誰
でもそういうトライをするんですけどね。クリスマスアルバムはある程度実績が
無いと作れないと、アメリカなんかではそういわれます。クリスマスアルバムを
作れるのが実績がある人の証明だと昔から言われますけど。自分もクリスマスア
ルバムを作れる身分になったのかと、そういうことを思いましたが。それはとも
かく、80年の『On The Street Corner 1』、86年の『2』、99年の『3』と、そ
の間に挟まってほぼ6,7年置きに一人アカペラの作品が出ていることになります
。」
「オーケストラのスタンダードナンバー、これはクリスマスソングではないので
すが、ただやりたかったというだけで無理矢理はめ込んだ。もともとはMario
Lanzaというイタリア系アメリカ人が大ヒットさせたナンバー。」
♪ Be My Love
「元々はMario Lanzaの50年のミリオンセラー。オーケストラアレンジをしてい
ただいたのが服部克久さん。「こういう曲だったら俺に任せろ!」服部さんの得
意な時代の曲だそうで、すばらしいオーケストレーションでございます。近い将
来、オーケストラをバックにしたライブをやろうと思っております。これはそん
なに遠くない、数年の内にやろうと思っておりますけれども。多分NHKホールと
大阪フェスティバルホールで行う予定であります。そのときはこれと同じ編成で
『Season's Greetings』の再現をしてみたいと思っておりますので、お楽しみ
に。」
「翌1994年はちょっと寄り道がありまして。このヒストリーの一週目でご紹介し
た、私が一番最初にプロとしてデビューしたバンド、シュガーベイブの1975年の
ただ一枚のアルバム『Songs』、これを94年にデジタルリマスターして、オリジ
ナルマスターからCD化しました。ボーナストラック付きです。この時にまた偶然
というのは恐ろしいもので、附合するように、今回の『Loveland, Island』じ
ゃないですけど、「パレード」というシュガーベイブ時代のレパートリーが「ポ
ンキッキーズ」という子供番組に使われたのでシングルカットになりました。『
Songs』のリマスターと同時期に。この時代に、今回のRCA/Air Yearsツアーじ
ゃありませんけど、シュガーベイブばっかりのレパートリーでライブをやろうと
いうことになりまして。「Yamashita Tatsuro Sings Sugar Babe」、この時は
東京で四日しかやりませんでしたけど、そんなものがありますが、それはまあ来
週にでもおかけしようと思います。という訳でちょっと横道ですが、これは1976
年の『Niagara Triangle』のバージョンを大瀧詠一さんがリミックスして94年
にシングルカットしました。」
♪ パレード
「90年代以降はシングル、シングル、シングルという感じなんですけど、毎度申
し上げております様に、私は90年代の後半に「空白の3年」と言われる時代があ
ります。95,96,97とほとんど作品らしい作品が作れなくて、シングルをポツポツ
と出すだけだった時代があります。その時代に出たシングル「世界の果てまで」
などは95年に出た『Treasures』というベストアルバムに入っておりまして、後
のオリジナルアルバムには入れることができませんでした。本当は96年に『
Dreaming Boy』というタイトルでアルバムを出す予定でしたが、見事にこけま
して。そこから『Cozy』が出るまでに2年の歳月を要します。本当はそれの先行
シングルになるはずだったこの曲は、結局そこから2年以上も宙に浮いたままで
アルバムに入ることの無いという悲劇の曲になってしまいましたが、私は作品と
しては凄く好きな1曲です。96年5月のシングル。」
♪ Dreaming Girl
「シングル「Dreaming Girl」を出して、96年にアルバムを出すはずが、諸々の
事情で出せなくなってしまいました。その結果、97年は活動らしい活動ができま
せん。KinKi Kidsに「硝子の少年」とか、人の曲を書いている様な有様です。自
分の活動はほとんど何もできません。ようやく体勢を立て直しまして、98年にア
ルバム制作が再開されまして、98年1月に出たシングルが「ヘロン」という曲で
す。これは元々90年代頭に作った曲をお蔵入りしてたのを、どうしても出したい
という方がいまして、当時の長野オリンピックのタイアップソングとして使われ
まして、再録に近い形で「ヘロン」を使いました。続きまして98年4月に「いつ
か晴れた日に」と98年は2枚シングルが出ております。シングルの数は出てるん
ですが90年代はアルバムが実になかなか出なかったという。」
♪ ヘロン
「98年8月に実に7年ぶりにアルバム『Cozy』が発売されます。『Artisan』と『
Cozy』の間にずいぶんシングルが出てますね、しかし、今見ますと。しかも曲が
全部傾向が違うという。実に作家的な90年代だったなと思います。今RCA/Air
Yearsのツアーをやっているせいかも知れませんが。自分で俯瞰して呆れますが
。そろそろ落ち着いてくるのかなと思う今日この頃ですが、まだわかりませんね
。何しろこういう年齢でどういう作品を作るべきかなんてことは、私に限らず誰
もわかってないんですよ、実際(笑)。結局、自己模倣に行くか、実験するけどな
かなか実績が上がらずに苦しむか。でもやっぱりチャレンジしないと駄目ですね
。どういう曲をやれるか、とことん行くしかないと思いますが。」
「お陰様で『Cozy』が出まして、その割を一番食ったのがまりやの方でして。ま
りやは実に8年もアルバムを出せなくて、『Bon Appetit!』までずれ込むという
世界であります。どうもすいません。」
「98年『Cozy』から先は割と元のシフトに戻りまして、80年代終わりから90年代
始めみたいな、自分のを作って、まりやのを作って、僕の企画物を作るという、
そういう繰り返しでここの4年来ている訳です。そんな訳で99年にすごく遅くな
りましたが、『On The Street Corner 3』。でも今から見ますと『Season's
Greetings』から6年なので、まあこんなものかという感じであります。それまで
『1』,『2』はすべて人の曲でしたが、『3』は初めて自分のオリジナルソングが
入ります。1999年11月発売『On The Street Corner 3』の先行シングルとなり
ました。」
♪ Love Can Go The Distance
「以前このSSB、その時はSaturday Song Bookでしたが、前にヒストリーをやら
せて頂いたときが9年も前です。1993年6月。シングル「Magic Touch」が発売さ
れた頃。まだ『Season's Greetings』が出る前です。あれから9年も立ちました
が、ちょうど40歳になったときにそんなヒストリーなんてものをやりましたが。
以降の9年を俯瞰しますと、シングルだけはよくまあ出してますが、まあしかし
曲調はバラバラですね。作家主義といいますか、いかに試行錯誤しているかとい
うことですが。40代の山下達郎を自分で総括しますと、40代前半の空白の数年間
はさすがにもう駄目だなと。『Go Ahead!』の頃と同じような感慨がありました
が。それを考えますと、自分が今でもやっているのが不思議な位です。RCA/Air
Yearsなんてバッカみたいなことをやってますがですね(笑)。ようやくその空白
を取り戻すべく、『Cozy』以降4年間やってるなという感じです。大分戻ってき
ましたが、次のアルバムはさあどうしようか。シンガーソングライター路線か、
インスト中心路線か。どうしようかなって。まだなかなか揺れ戻しから回復して
いないという感じがありますが。」
「『On The Street Corner 3』、この後でまりやのアルバムを2枚やりまして、
RCA/Air Yearsのリイシュー/リマスターしまして、さあ次ですが。この間に「
ジュブナイル」というシングルが2000年、それから去年(2001年)は「君の声に恋
してる」。そして『Bon Appetit!』にかかり切りでしたのでニューシングルが
なかなか出ませんが、タイアップは何曲かあります。現在やっておりますのはカ
ルピスウォーターとか、去年から続いております「サタスマ」、今は「デリスマ
」になっておりますが、そういう様な物と、まだ先に控えているものがあります
が、さあどうするかと。まあのんびりやっていきたいと思っております。」
「まあツアー中のヒストリーなので、まあこんなものかなという感じでございま
す。とりあえず5週間で駆け足でやってまいりました。キャリアが長いので、今
回はなるべく昔の奴を重点的にやろうという考えなので、ここ数年間ははしょっ
てはしょってはしょりまくっております。また数年すればヒストリーなんてもの
をまた回顧してみたいと思っております。来週は番外編で副業関係。作曲、編曲
、ギタリスト、コーラス、そういうものを少し掻い摘んで。ライブのレアバージ
ョンも掻い摘んで、やれるだけやってみたいと思います。余った分はまた6月に
「わがままリクエスト」などでフォローしたいと思います。」
♪ 君の声に恋してる
・Q&A
Q: 『Melodies』の歌詞カードは手書きですが、達郎さんが書いたのですか?
「違います。これは当時のMoonレコードのスタッフが書きました。」
Q: Smile Companyの名前の由来は?
「当然Beach Boysの『Smile』ですよ。」
Q: 『Melodies』のインナーフォトの時計のメーカーは?
「そんなことを聞いてどうすんだって。あの当時は確かセイコーのダイバーウォ
ッチだったかな。」
Q: 『On The Street Corner 1』のLP(80年)、86 version(86年)、リマスター
(99年)のジャケットの撮影場所と日は?
「なんだよそれは?80年はNYの安いカメラで撮ったスナップです。86年はステー
ジセットです。名古屋の愛知勤労のステージセットを撮ったものです。リマスタ
ーは『On The Street Corner 3』と同じですね。写真を布に印刷したものの前
に立っている奴です。あれは凄くバーチャルな世界です。」
Q: 『Big Wave』のリマスターCDにボーナストラックが入っていないのはなぜで
すか?
「当時はリマスターすることに意義があったので、ボーナストラックはあまり重
要じゃありませんでした。あれは89年のバージョンでしたからね。」
Q: 『Pocket Music』のボーナストラック「My Baby Queen」が当時のアルバム
に入らなかったのはなぜでしょうか?
「当時のアナログLPには(収録)時間が足りなかったから入らなかっただけです。
CDはLPより収録時間が長いのでボーナストラックという必然性が出てくる訳です
。他に未発表曲はありますが、ほとんど歌が入っておりません。よしなに。」
・SSB500回記念プレゼント
1) アナログ9枚組『RCA/Air Years Box』10名
2) スペシャルボーナスディスク『Come Along』リマスターCD 10名
3) 『Big Wave』オリジナルアナログ盤 5名
4) 『僕の中の少年』オリジナルアナログ盤 5名
5) 「クリスマス・イブ」12インチ・ピクチャーレコード 3名
6) 竹内まりや「Plastic Love」12インチ、サイン入り 3名
7) 「9 Minutes of Tatsuro Yamashita」ピクチャー12インチ 1名
8) シュガーベイブ『Songs』エレック盤オリジナルアナログ盤 1名
今後の予定
・5/26は「History of 山下達郎:番外編」。
・「棚つか Philadelphia Soul編」はいつに延期?
・夏になったらBruce Johnstonの特集を。
circustown.net による放送書き起こしです。文責 circustown.net。抜け誤りはお知らせください。
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