もう一つの冬の夜景は、ニューヨークのストリートである。ストリートには様々な人の生活がある。そしてそれはどれもロクなもんじゃない。しかも
Lou Reed が題材にする人々の生活は尋常ではない。暴力、ドラッグ、そして人の死が溢れている。そんなテーマを Lou Reed
は穏やかに歌う。穏やかな旋律にやさしいエレキギターのストローク、そして余分な感情表現を廃した語りと言っていいヴォーカル。それはどんなにニューヨークの冬の街並みがきれいでも、その裏ではマトモなことなんてありゃしないんだという静かな告発。
この曲はベトナム戦争の記憶である。主人公は、仕事を失い、ベトナムで片腕を失い、妻子には逃げられる。全く救いがない。しかも
Lou Reed のヴォーカルには救ってあげようという意志もない。ただただ事実を見よ、と。聞き手はこの突き放した姿勢、そして簡素極まりない歌唱と演奏にただただ引き付けられる。
主人公はどんなにもがいても、救いは訪れない。2月にクリスマスは来ない。
冬から冷たくて厳しい季節であることを忘れさることは出来ない。