Alzo

Don't Ask Me Why

1971 " Looking for You " Bell




 雨上がりのひととき、ちょっと散歩しながら聴きたくなる1曲。繊細なギターの音、やさしいメロディーが胸に染み込んできます。
 60年代後半に パーカッションの Udine と Alzo & Udine というデュオを組んでいた Alzo 。アルバム「C'mon And Join Us」は、国内ポリドールより、最近リイシューされました。
 しかしそれよりも素敵なアルバムはこれ、1971年に Bell Records からリリースされたアルバム「 Looking for You」。
 全曲、詩曲は Alzo (本名 Alzo Fronte) で、優しいアコースティックギターの音色、繊細なコーラス、そしてラテン風味を少し加味した素敵な曲が収録されています。特に4曲目の " Looks Like Rain " 。Alzo 本人による何重にも重ねられたコーラスには、胸がキュンとしてしまいます。


 このアルバムはジャズ界でアバンギャルドなボーカルを聴かせてくれた Bob Dorough が全面プロデュース、アレンジにあたっており、クレジットには 盟友の Stuart Scharf(Guitar)の名前もみつけることができます。パーソネルは、Alzo(vo.g.), John Brel(b.), Bob Dorough(key.), Bill Goodwin(dr.), Emil Latimore(conga),Stuart Scharf(g.)
 Bob Dorough とStuart Scharf は、Spanky and Our Gang のアルバムにも参加しており、その中でも繊細な響きを持つアルバム「 Like to Get to Know You 」もプロデュースしています。素晴らしいコーラスアレンジは Bob Doroughの手によるもの。
 Bob Dorough についてちょっとだけ。最近、Bob Dorough が音楽監督を手掛けた子供向けテレビ番組のサウンド・トラック「Multiplication Rock」がCD化されました。かけ算をメロディに合わせて子供達と歌ったり、とっても楽しい〜アルバムです。(富田英伸)

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この Alzo さんの唯一アルバムに関する文は1999年夏、 circustown.net 開設と同時にアップしたものでした。このアルバムは個人的な思いもとても強く、これからこの circustown.net というサイトを続けていくにあたって、" CD化にもならなくてもこんな素敵なアルバムが世の中にあるんだよ"、という意味も込めて取り上げました。Alzo さんのことを殆ど知らないまま。

それから約3年、2002年11月のある日、Alzo さんご本人と思われる方からメールが届きました。びっくりです。まさか海の向こうのご本人からメールをいただくなんて思ってもいませんでしたから。
そこには...、

" 日本で僕の音楽どうやって聞いてるの? "
" Alzo & Udineが日本でCDで出ているみたいだけど、いつ、どこのレーベルから? "
" 未発表のアルバムがあるんだけど聞いてくれない? "

といったことが書かれていました。
日本に自分の音楽を聴いている人間がいることが信じられない、いろいろ知りたい、そういったご様子が綴られていました。
数回のメールのやりとりの中で、Alzo さんは、自分の音楽をもっと世に知ってもらいたい、たくさんの人に聴いてほしい、という強い希望をお持ちなのがすぐわかりました。
そこで、すぐに以前よりずっと昔からAlzoさんを探しておられた、長門芳郎さんに連絡をとりました。長門芳郎さんはすぐ Alzo さんのいるのロングアイランドに飛んでいきました。
2人は長い時間をかけ話し合い、時間を重ね、このアルバムは念願かなってCD化になりました。ほんとに素晴らしい喜ばしい出来事でした。とうとう Alzo さんの音楽は多くの人の耳に届くことになりました。

未発表のままになっていたアルバムのリリースを控え、さあこれから!という時。突然、訃報が届きました。急性の心臓発作。ほんとに「これから」だったんです。Alzoさんにとっても、長門さんはじめ、Alzo さんを支援してきた方々にとっても。ご本人も音楽に対してもう一度、一線で活躍をしたい、本格的にカンバックする希望もあったと思います。
僕達もいつの日か、ライブ等を通じて Alzo さんと直接お会いできるのではないかと夢見ていました。ほんとにいつか絶対逢えるんじゃないか、そう思っていました。

Alzo さんにとってこれまでアメリカ音楽ビジネスとその運命は非情でした。
でも Alzo さんの優しい音楽はそんなことは無縁に淡々と響いています。これからも多くの人の心を癒していくことでしょう。あの窓を伝う霧雨のようなAlzo さんの12弦ギター、ずっと僕達の心で鳴り続けていくんです。あの12弦の調べは永遠の音になりました。

Alzoさん、
Alzoさんの作ってきた音楽は僕達もしっかり伝えていきます。
どうぞゆっくり休んでください。

(2004.02.03 富田英伸加筆)

 





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