Spanky & Our Gang

Like To Get To Know You

1968,1999 "Like To Get To Know You" Vivid VSCD 738/CD





 音の玉手箱をひっくり返したら、出てくるわ出てくるわ、グッド・オールド・ミュージックの洪水。
 "スラップスティック・コメディ"という言葉を想起してしまう Spanky & Our Gang のファースト『Spanky & Our Gang』、セカンド『Like To Get To Know You』そしてサード・アルバム『Without Rhyme Or Reason』の3枚がようやくCD化されました。ファースト以外は世界初CD化の快挙。
 Spanky & Our Gang はシカゴのグループ。結成された当時は4人組でしたが、その後メンバー・チェンジがあり、Oz Bach が脱退して Malcolm Hale (G.)、Nigel Pickering (G.)、John Seiter (Dr.)、Kenny Hodges (B.)、Lefty Baker (G.) そして Elaine"Spanky" McFarlane (Vo.) の6人組になりました。 Spanky McFarlane はシカゴのシンガーだったのですが、旅行で訪れたマイアミで名物のハリケーンに襲われ、鶏小屋で雨宿りをしていたら、Nigel Pickering と Oz Bach がたまたまその場に居合わせ、朝まで歌い明かしたことがきっかけとなってグループが結成されたという嘘のようなエピソードが残っています。グループ名の由来は映画『ちびっこギャング』からとられています。


 そんな結成時のエピソードもあながち嘘ではないだろうなと思わせるぐらい、彼らの音楽は不思議な魅力に溢れています。シカゴのグループらしく1920年代の禁酒法時代のスタイルをコンセプトにした、マルクス兄弟などのコメディアンを彷彿とさせる何ともスラップスティックなスタイル。(このアルバムのジャケットもそんな禁酒法時代をモチーフにしています。)ブルース、フォークを基調としながらジャグ・バンドのスタイルやジャズを絶妙にブレンドし、独特のコーラス・スタイルをまぶしたオールド・タイムな雰囲気が彼らのビジュアルと見事にマッチしています。これはとても"ソフト・ロック"という一言で片付けられる音楽ではありません。
 そんなユニークなサウンド・スタイルをバックで支えているのが、プロデューサーのJerry Ross をはじめ、彼のプロダクションにいたアレンジャーの Jimmy Wisner、Joe Renzetti、 もともとジャズ界にいた Bob Dorough とStuart Scharf などの多彩なスタッフ陣。
 余談ですが山下達郎氏はかつて、「パレード」は完全に Jim Wisner を意識したというようなことを語っていました。
 特にプロデューサーが Jerry Ross から Bob Dorough と Stuart Scharf にかわったこのアルバム以降は一幕の寸劇を観ているようなコンセプチュアルな作りです。とりわけ、アルバムの後半、「Like To Get To Know You」〜「Chick-A-Ding-Ding」〜「Stardust」〜「Coda(Like To Get To Know You)」と切れ間なく続く流れはすばらしいセンスです。
 この何とも洒落のめした、それでいてアメリカン・ミュージックの奥深さをきっちりと刻んだ彼らのアルバム、買いです。

(脇元和征)





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