circustown.net Presents Spring Special


The Four Seasons

Dawn (Go Away)/Rag Doll

1963/1964 Philips 40166/40211 Single
Re-Issued by " Dawn(Go Away) / Rag Doll " Ace CDCHD554





 The Four Seasons。
 彼らがいなかったら60年代アメリカン・ポップスの世界はちょっと味気ないものになっていたかもしれない。彼らによって遙かなる60年代へと僕らは導かれ、ロックンロールの楽しさとワクワクするような興奮を追体験できたのだと思います。
 The Four Seasons の音楽には屈託のない明るさと、それがゆえに逆説的に醸し出されるメランコリックな雰囲気が混在していて、ちゃんとリズムをキープしているのに体とは裏腹に訳もなくジーンときて涙が出てしまうような切なさがあるんですね。
 それは彼らの音楽が、イタロ・アメリカンであるところからくる本質的に陽性な部分と、いわゆるラテン的なロマンティシズムという、微妙なバランスの上に構築された世界だからなのではないかと、勝手に納得したりしています。


 加えて、Frankie Valli の独特のファルセット・ボイスは一方でコミカルさを演出しながらも、そのシング・アロングは聴き手を甘美な世界へといざなってくれるという紙一重なところが感じられるし、プロデューサーの Bob Crewe、アレンジャーの Charie Calello によるよく練られた骨太なサウンド、リズム、コーラスの有機的な結びつきなども、そうしたバランスを成立させるために決して欠くことのできない要素になっています。東の Hal Braine とも言われた Buddy Saltzman のユニークで一度聴いたら忘れられないドラムのフィルやフレーズも、ある種の高揚感とともにちょっと切ない雰囲気に満ちています。
 そして、もう一つ忘れてはならないのが詩の世界。「Dawn」 では「僕みたいな男と一緒にいたら君は幸せになれない、もう行っておくれ」と歌い、逆に「Rag Doll」はぼろをまとった人形、すなわち貧乏な家の女の子だからおまえにはふさわしくないと家族に反対されながらも「そのままの君が好きなんだ」となるわけです。こうした階級、身分の違いによる叶わない愛の歌を、あの裏声と明るいメロディで聴かされるとやっぱり胸が締めつけられるではないですか!こうした詞の内容を知って聴いてみるとあのヴァース付きで入る「Dawn」も「Rag Doll」のドラムのイントロもたまらなく切なく聞こえてくるわけです。
 「Dawn」は Bob Gaudio と Sandy Linzer の共作で全米3位まで駆け上りました。間に「Ronnie」のヒットを挟んで 続く「Rag Doll」は全米1位の大ヒット。こちらは Bob Crewe と Bob Gaudio という60年代屈指のコンビ。Vee-Jay から Philips に移籍してからは主にこの二人のコンビにアレンジャーの Charie Calello を加えた鉄壁のトライアングルで The Beatles を中心とするブリティッシュ・ビート勢を向こうに回し怒濤の快進撃を続けます。
 多感なころ初めてこの2曲のことを詞の背景も含めた解説付きで聴かせてくれたのが山下達郎氏の「サウンド・ストリート」でした。当時(80年代初頭)は、The Four Seasons のレコードは殆どが廃盤状態で、それこそ番組のエアチェック・テープを擦り切れるほど聴いたものでした。現在では、英 Ace よりこの2曲が収められた同名アルバムが2in1でCD化されています。マスタリングもすばらしく手軽に彼らの音楽を楽しむことができてるようになりました。いい時代になったものです。

(脇元和征)





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