The Four Seasons
December,1963 (Oh, What a Night) 1975 " Who Loves You " Curb/Warner Brothers BS2900/LP |
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Four Seasons といえば、やっぱり「Sherry」、「Big Girls Don't Cry」、「Walk Like A Man」といった60年代の名曲群のイメージが強烈ですよね。私も個人的には「Ronnie」、「Save It For Me」、「Alone」などのあの素晴らしき(笑)1964年頃の作品が一番好きです。この頃は Frankie Valli のリードとバックコーラスとの掛け合いスタイルが鉄壁の完成度を誇っていた正に黄金時代。達郎ファンとしても何度聞いてもこたえられません。また1969年のコンセプト・アルバム『The Genuine Imitation of LifeGazette』がキリンジに言及されるなど再評価の兆しがあります。しかし70'sの Four Seasons も忘れてはいけません。私のような30代の人間が彼らに親近感を覚える理由に、1970年代以降も現役であり続け、その中で記憶に残る数々の名曲を作り続けて来たからに他ならないでしょう。そんな彼らも、1970年代当初は時流に追従することが難しくなったのか、好敵手 The Beach Boys 同様にその人気にかげりが出てきました。ヒットも縁遠くなり、メンバーの頻繁な変動や Motown への移籍なども行われましたが、商業的成功はしばらく得られませんでした。
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こうした不遇な状況に変化が生じたのは1975年。この年は50'sや60'sのポップス界の巨人の復活が相次いだ時期です。アメリカの産んだ偉大な彼らの足跡を振り返る時期が丁度訪れたのでしょう。まず Paul Anka が「Having My Baby」のNo.1ヒットで鮮やかに復活し、それに続くように Neil Sedaka が「Laughter InThe Rain」を、Glen Campbell 「Linestone Cowboy」を大ヒットさせました。そしてその合間を縫って同じく復活したのが誰あろう Frankie Valli。「My Eyes Adored You」のNo.1ヒットで現役をアピールしたことが彼に自信を与えたでしょうし、Four Seasons の復活を期待する気運も高まったことでしょう。
また、その前後数年の全米チャートを賑わしていたのはPhiladelphia Soul を筆頭とするソウル/ディスコでした。ディスコ・ブームの当初の担い手はもちろん黒人層でしたが、その音楽は同時代の白人ミュージシャンにも影響を与え、そうした中からビッグ・ヒットが次々生まれるようになりました。Avarage White Band の「Pick Up The Pieces」No.1 ヒットを皮切りに、Bee Gees「Jive Talkin'」、Elton John「Philadelphia Freedom」、KC & Sunshine Band「Get Down Tonight」と「That's The Way」、そして David Bowie の「Fame」。これらがすべて全米No.1に輝いたのがこの年でした。 |
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Frankie Valli が名作ソロ『Closeup』を作った後、この年に Four Seasons は Warner Brothers へ移籍し、起死回生のアルバム『Who Loves You』を発表します。このアルバムから、オールディーズ・グループのイメージを刷新すべくディスコ・サウンドに挑戦した2曲「Who Loves You」と「December, 1963 (Oh, What a Night!)」の連続ヒットを飛ばしました。
『Who Loves You』は全曲 Bob Gaudio とパートナー Judy Parker の共作によるアルバムで、録音はハリウッドの The Sound Factory、プロデュースは Bob Gaudio 自身。このアルバムから元 Critters の Don Ciccone がベース&ボーカルとして参加し、Valli、Gaudio と並ぶ働きをしています。 実に「Rag Doll」以来12年ぶりのNo.1となった「December,1963 (Oh, What A Night!)」はまさに典型的な70'sのディスコ・サウンドですが、Bob Gaudio によるイントロのピアノのリフとサビのコーラスは永遠に不滅でしょう。70'sポップ・クラシックと言いたくなる名曲です。そもそもは1930年代の禁酒法時代をテーマしたとのことですが、Judy Parker がいやがり1963年となったらしいのです。この1963年12月の意味って何でしょうね?Four Seasons の全盛期であったことは確かですけど。 |
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見方を変えると大ベテランである彼らがこういうヒットを飛ばしたことで、白人によるディスコ・パターンがここで完成を見たのかもしれません。Bee Gees が Four Seasons に先駆けて「Jive Talkin'」の大ヒットを飛ばしましたが、彼らのファルセット・スタイルにソウルとともに Four Seasons からの影響を感じるのは私だけでしょうか。その後1978 年に Barry Gibb は Valli に映画『Grease』の同名主題歌を提供し、Valli 自身にとって2曲目のNo.1ヒットに輝いています。Bee Gees から Four Seasons への恩返しだったりして?
その他には、西海岸録音の影響からか Beach Boys 的な作風も目立ちます。中でも Bob Gaudio のピアノと Don Ciccone の歌が素晴らしいバラード「Slip Away」とウェスタン をテーマにした16ビート・ギターポップの「Silver Stars」は傑作です。後者は中段の Beach Boys 的展開を含めてプログレッシヴな印象すら受けます。アルバムとしても Beach Boys の『L.A.』や 10CC の『Bloody Tourist』級のクオリティを持つと個人的に思いますが、皆様はいかがでしょう? (パープル蛭子) |