The 5th Dimension

Up,Up And Away

1967/2000 " Up,Up And Away " Buddha/Arista74465 99665 2/CD





 前回に引き続き、Jimmy Webb 絡みで。
 Jimmy Webb の作曲家としてのキャリアは 5th Dimension から始まったと言っても過言ではありません。本作のプロデューサー Johnny Rivers に引っぱり込まれたのが最初。プロの作曲家を目指してオクラホマの田舎から出てきた彼はLAに住み着き、Motown Records の出版社で雑用係をしていたとか。そこで Johnny Rivers に出会い、ちょうど彼が売り出し始めた 5th Dimension のソングライターとして抜擢され、この曲が大ヒットしてグラミー賞まで獲得したというのですから、夢を抱いて田舎から出てきた青年が食うや食わずの生活の果てについにその夢を果たしたって感じかなあ。まさに絵に描いたようなアメリカン・ドリームを成し得たって言っちゃうとこの場合、かなり話をかっこよくしちゃうのかなあ、やっぱり。


 ま、とにかく Jimmy Webb にとっての出世作ともなったこのアルバムは同時に 5th Dimension の面々にとってはデビュー・アルバムでもあり、「Up,Up And Away」の大ヒットともにアルバム自体も1967年に8位まで駆け上がるという大ヒットを記録しました。
 メンバーは Lamont McLemore、Marilyn McCoo、Ron Townson、Florence LaRue、Billy Davis,Jr.の男3人女2人による混声コーラス・グループ。グループ名は彼らが5人組であったことももちろんですが、よりモダンなスタイルを志向したいという彼らの思いも反映されていました。多面体の魅力とでも言いましょうか。
 そんな思いもあってか、彼らは Willie Hutch のようなソウル畑のソングライターの曲を取り上げる一方で、積極的に白人の作曲家を登用していきました。こうしたアイデアはもう一人のプロデューサー、 Bones Howe によるところも大きかったようで、Jimmy Webb と並んで彼らが最も多く取り上げたソングライターとして Laura Nyro もよく知られています。
 そういうわけですから、彼らの楽曲はブルージーでソウルフルというよりも、むしろ洗練されたコーラス・スタイルがひとつの"売り"でした。こういうスタイルには当時から賛否両論あったようですが、今になってみると60年代末的な混沌とした要素も随所にかいま見られて、その大仰なパフォーマンスぶりも含めて貴重な存在だったと言えます。
 Jimmy Webb はこのアルバムに5曲を提供しキーボードも弾いています。バックのミュージシャンは、彼らのアルバムには欠かせない Hal Blaine のドラムス、Al Casey のギター、Larry Knechtel のピアノ、Joe Osborne のベースというポップス・ファンにはたまらない最強の布陣。
 The 5th Dimension の初期のアルバムは今年、ボーナス・トラックが付いて初めてCD化されました。意外にも彼らの評価はこれまで低かったのかもしれません。

(脇元和征)





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