Jerry Reed

Guitar Man

1966/1995 " The Essential Jerry Reed " RCA 66592-2/CD





 「Elvis、あのギターサウンドが欲しいのかい?」

 Elvis Presley は明らかにいらだっていた。何度やっても、あのサウンドが得られない。1967年9月ナッシュビルのRCAスタジオのでの出来事。

 「Elvis、それなら彼を呼ぶしかないんじゃないかい?」

 RCA のプロデューサー Felton Jarvis の勧めで Elvis のレコーディングセッションに招かれた彼の名は Jerry Reed。この曲「Guitar Man」の作者にして、歌手、ギタリスト、今回の主役です。Elvis は前年の66年に Jerry Reed が発表したこの曲を一発で気に入りカバーを熱望。シャウトとつぶやきがゴッチャになった感じで突き進むこの曲は、ほれたのも当然な程 Elvis にふさわしい。 Elvis の録音方法は「一発録り」が特徴ですが、レギュラー・メンバーの中に一人リードギタリストとしてほうり込まれた Jerry はこう語っています。「Elvis は気持ちが入ってくると、目の輝きが違うんだ。それで何かが起こるんだよ」。Jerry の力強いガットギターのフレーズが Elvis に火をつけたかと思うと興奮します。60年代中盤はちょっとテンションの高くない映画の仕事にかまけていた Elvis にとって、久々の最高の録音となりました。この曲は翌68年のNBCテレビのカムバックスペシャルでもメインテーマのように扱われ、エルビスの「復活」を語るにはなくてはならないものとなりました。


 「Jerry、君は普通のカントリーソングの録音なんてやめるべきだよ」

 Jerry Reed は、なかなか自分の音楽が作れないでいた。そんな60年代の半ば、ナッシュビルの親分 Chet Atkins は Jerry に続けます。

 「Jerry、僕の家でギターを弾いてくれるように歌うんだ。自分に正直な音楽を作るんだよ」

 彼のギターの師ともなった Chet Atkins のアドバイスで Jerry が1966年に発表したのが「Guitar Man」。Jerry がレコーディング・アーティストになって、10 年以上の月日が経過して、ついにできた Jerry Reed の音楽がこの曲です。アイデアあふれたギターフレーズに、力強い歌声と演奏、それにギター弾きの悲哀をユーモラスに歌った歌詞があいまって、Jerry 初めてのヒット作となりました。彼の音楽人生も一筋縄では行かないもの。50年代に歌手を志望するも成功せず、作曲も大成功とは行かず。60年代はセッションギタリストとして食いつないでいたそうであります。「Guitar Man」はそんな Jerry の転機を語るとても重要な曲です。
 苦労の甲斐もあってか Jerry は実に多種多芸。音楽もギターインストから、カントリバラード、ソウル色の強いノべルティーソングと多芸ですが、さらにはテレビショーの司会を Glen Campbell から引き継いだり(ビデオがあったら見てみたいですねそういうの)、映画に出たり(最近ではウォーターボーイに出てたんですね!)と大活躍をされています。
 去年の新春放談は Buddy Harman の話でしたが、今年は Jerry Reed と来ました。僕も "Country Boys Dream" にしびれちゃって、Jerry Reed と Elvis を聞いています。そこには人間のテクニックと集中力が、豊かなアイデアの上に詰まっています。

(たかはしかつみ)







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