Ray Stevens

Misty

1997 " Ray Stevens' Greatest Hits "
Barnaby/Victor VICP-60100/CD





 よくアレンジの妙ということが言われます。オリジナルよりカバーで歌われたほうがヒットしたり、またオリジナルよりカバーのほうがその歌が定番化、スタンダード化して有名になったりすることがあります。
 「Misty」は、ジャズ・ピアニストの Eroll Garner が作曲したものに、作詞家の Johnny Burke (Jimmy Van Heusenとのコンビで多くの作品を世に出し、「Darn That Dream」、「Polka Dots And Moonbeams」などはジャズのスタンダードとしておなじみ)が詞を付けたもので、いろんなミュージシャン(私の好きなSarah Vaughnの名唱は有名)、やオーケストラで歌われたり演奏されたりして、スタンダードといってもいい作品ではないでしょうか。


 1975年に Ray Stevens がこの「Misty」を取り上げて、バンジョーの軽快なイントロとともに、カントリー&ウェスタン風味で味付けされたポップコーンが弾けるようなリズムに乗り、これがあの「Misty」かと驚くような大変身をさせてヒットしました。
 それまで耳にした「Everything is Beautiful」、「America,Communicate With You」などの朗々とした声を聴かせた歌いぷり(リアルタイムでは、1968年の Monument 時代の「Mr.Businessman」やおとぼけ(?)路線の「Gitarzan」などは聴いていましたが)とは、どうにも結びつかない曲者ぶりを知ったのです。
 Monument時代のおとぼけソング(というかコミックソング)の「Ahab,The Arab」などは後になって知ったのですが、1974年には当時世相を騒がせたストリーキング(町中を素裸で疾走する)をテーマに架空の街頭インタヴューを織り込んだ「The Streak」でなんと全米ヒットチャート1位になる快挙(?)を成し遂げたシンガーでもあります。ノヴェルティ・ソング、コミック・ソングだけではない、日本ではちょっとお目にかかれない曲者シンガーの一人と言ったらいいでしょうか。

(伊藤潔)





Copyright (c) circustown.net