Craig Nuttycombe

Sunshine

1978 " It's Just A Lifetime " A&M SP-4683/LP





 突き刺さるような寒さが和らぎ、ようやく陽の光が暖かく感じられてきました。通勤のため朝早く駅に向かう足取りも軽くなります。こんな時期、必ずといって聴きたくなるのが Craig Nuttycombe の「Sunshine」という曲。それはまるで朝、部屋の角にできた日溜りのように僕を暖かくさせてくれるのです。
 Craig Nuttycombe というシンガー・ソングライターをどれだけの人がご存知でしょうか。僕も知ったのはつい数年前。いつものように行きつけの中古レコード屋で店員さんに薦められて試聴したのがきっかけ。その時に聴いたのがこの「Sunshine」で、ハート・ウォームな声と穏やかなメロディがたまらなく心地良く身体に染み込んでいったのを覚えています。それ以来この曲が入った『It's Just A Lifetime』というアルバムは部屋のレコード置き場の一番前に長い間居座ることになるのですが、好きになればなるほど、名前もちゃんと読めないこのシンガー・ソングライターへの謎は深まるばかり。インターネットで調べても、このアルバムのプロデューサーである Glyn Johns のサイトに引っ掛かるだけで、当の Craig の情報は全く掴めませんでした。


 ところがしばらくたって知り合いから、Craig が朋友の Dennis Lambert と組んで70年に発表したアルバム『At Home』の存在を聞かされます。Lambert & Nuttycombe 名義のこのアルバムがまた素晴らしく、ついでに Dennis Lambert のソロも手に入れて・・・というように次第に Craig 周辺の音楽を辿るようになっていったのです。そして遂に昨年、90年代に発表された Craig の3作品が国内発売され、その解説でようやく彼の音楽活動の全貌が明らかになったのでした。
 とは言え、99年に発表された最新作を聴いてもこの人の音楽性は『At Home』の頃と何一つ変わっていません。 30年間変わらず John Sebastian 辺りを思わせるナイス・フォークスで、Peter Gallway を太くしたような、Hirth Martinez と Hurricane Smith を足して2で割ってアクを取ったような、誠実で人なつっこい声も昔のまま。
 変わっていくことを強制されているような社会で日々生きている僕らにとって、Craig の優しい声は "別に変わらなくていいじゃん" と言っているようです。"ただのちっぽけな人生なんだから・・・" と。
 「Sunshine」の最後には Stevie Wonder の「You Are The Sunshine Of My Life」の一節が歌われます。僕はそこが大好きで "たとえちっぽけな人生でも太陽は輝くのさ" と勝手に解釈して(笑)明日もがんばろうと思うのです。

(高瀬康一)





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