The Mighty Wah!

Heart As Big As Liverpool

2000 / 2001 " mersey boys & liverpool girls - Sound of
The Mersey: 1978-2001 " EMI 532 3882/CD





 サッカーと音楽は切ってもきれない関係にあります。観客で一杯のスタジアムには音楽がとても似合います。サポーターが自然発生的に歌う応援歌は選手を鼓舞し、時には自分たちのホームタウンへの帰属意識を煽ります。
 ブラジルのサンバ、イングランド人の「大脱走のテーマ」、オランダ人のおおらかな「アイーダ」、………我が国にもあります。先日惜しまれて亡くなった河島英五さんの「元気出してゆこう」は隠れた人気曲です。男子校の学生歌風の曲調がなんともいい雰囲気。葬儀が行われたその日、浦和市駒場スタジアムでもバンカラに歌われていました。


 さて先日リリースされたばかりのこのCDは、リバプールとマージーサイド生まれの音楽のコンピレーション。選曲は Liverpool FC 博物館の館長、すごいね、ロックのCDの監修をするサッカー博物館の館長。なれるものならなってみたいね。それはともかく、Liverpool というと、The Beatles、マージービートという印象が強いと思いますが、イギリス人の特に男性にとってはフットボール(=サッカー)の街でもあるわけです。ちなみに Beatles の有名なベスト盤の赤と青は、彼の地の2大ライバル、Liverpool と Everton のチームカラーから来ていると言われています。収録の21曲は Liverpool FC の賛歌集の形を取っていますが、直接のサッカーソングはありません。Echo & the Bunnymen, The LA's などの人気バンドから、Steven Kennedy(Paul McCartneyの音大を出た人)なんていう新人までの曲が並びます。
 21曲のトリを勤めるのが、Pete Wylie 率いる The Mighty Wah! のこの曲です。 Wah! は80年代前半のニューウェーブバンドの一つとだと認識しておりましたが、久しく名前も聞かず忘れてました。しかし Liverpool コンピレーションで出会ったこの曲はすごいですよ、感動的な Spector サウンド。流れるストリングス、からむコーラス、英国的で、Walker Brothers を思い起こさせるちょっとウエットなサウンド、勿論打ち込み一切無し。この人はいつから こんなになったんでしょ。21世紀にもなるというのにこんなことしていていいんでしょうか。8年ほどもシーンから遠ざかった状態からの復活劇だそうです。でも彼にとって、最高のサウンドで最高のテーマを歌っているに違いありません。
 この曲では、ホームタウンとフットボールが Liverpool の同義語として存在しています。歌われている愛はフーリガンなどと形容される独善的なものでなく、威厳を持った敬愛を感じます。純粋な少年から、けんかっ早いアンチャン、酔っ払いのおっさんまでの心を一つに出来るのは、転がるボールと音楽だと信じているのです。

(たかはしかつみ)





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