ムーンライダーズ

スタジオ・ミュージシャン

1978 " NOUVELLES VAGUES " GW-4043 PANAM/Crown/LP





 昔、ある日突然それまでは嫌いだった人が急に眩しく見えて、胸がドキドキしちゃうってこと、ありませんでしたか? または、食わず嫌いで長年食べなかったものを何かのきっかけで口にしてみたら、ものすごく美味しかった、なんてこと。ムーンライダーズと出会ったときの印象はまさにそうでした。へんな声、へんなメロディ、こんなのもう聴かない!としばらく放り投げていたのに、脳のどこかにしっかり染み込んでたのかなぁ、再び針を落としたら、もうすでにムーンライダースの世界に片足突っ込んでました。以来数年間、友達を巻き込んで足繁くライブに通うようになったのでした。
 その出自をはっぴいえんどと対比されるムーンライダーズですが、九州出身の一少女からみればどちらもいかにも東京を感じさせるバンドでした。でも、ムーンライダーズには自分に近いものを感じてたかもしれません。曲の後ろに見え隠れする殺風景な町並や土臭さが、わたしにとっては「手が届く東京」だったのかも。


 『火の玉ボーイ』でガツンと打ちのめされて以来、『MOON RIDERS』、『Istanbul mambo』、『NOUVELLES VAGUES』と計4枚リリースされる数年間がわたしのライダーズフリークのピークだったのですが、彼らの音楽は、はっきり言って「分かるヒトだけ、聞いてくれればいい!」と言い放ってしまいましょう。万人に受けるというタイプの音楽ではありません。ライダーズの魅力にはまらなくても、それは相性というものでしょう。だから、この文章を読んで、聴いてみて、「なんじゃこれは」と思われてもいいんです。(現にうちのダンナがそう。全くわからないと言います。クヤシー)でも「ん?ビビビ」っときたそこのアナタ! あなたはライダーズのほかのアルバムも聞かなければならなくなるでしょう。
 それぞれ好きなことやってるけどライダーズスパイスで味付けされて、食べるとライダーズならではのお味ってのがこのバンドの魅力。「スタジオ・ミュージシャン」は哀愁ただよう佳曲ですので、要チェキですよみなさん。胸にしみます。夏の雨の匂いを感じてくださいね。
 慶一さんの怪しげな曲も、岡田さんのキャッチーな曲も、かしぶちさんの大陸的な曲も好きだけど、博文さんの詞の世界が一番好きななかのです。
 やんちゃな音楽好きの少年たちが集まったバンドらしいバンド、ムーンライダーズ。未だ現役でやってるかっこいいバンド、ムーンライダーズ。ずっとこのまま「オトコノコたち」でいてね。わたしが束の間「オンナノコ」でいられるために。

(なかのみどり)





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