Laura Nyro

Angel In The Dark

2001 " Angel In The Dark " Omagatoki/Rounder OMCX-1067/CD





 夏の驟雨のように激しく温かく・・・。

 circustown.netの発足時に
Laura Nyro のことを書きました。新しいサイトのオープンという熱気の中で書かれた文章は、今読み返すと想いばかりが先行して気恥ずかしさが残りますが、「今この機会を捉えて彼女のことを書くのは何かの必然である」、という強い思いだけは、今なお燻り続ける火種として僕の心の中に残っています。
 昨年、『Live From Mountain Stage』が出てライブでのリラックスした彼女の歌声を耳にすることができました。さらに『Time And Love:The Essential Masters』のリリースもあって、今なお静かに語り聴かれ続けていることを嬉しく思うと同時に、若い人たちにも是非彼女の歌声に触れて欲しいなと思います。


 そして新世紀の今年、晩年の彼女のラスト・レコーディングが我々の元に届けられました。
 天国からの思いがけない贈り物は、彼女のオリジナル曲「Angel In The Dark」で穏やかに幕を開けます。16曲中8曲がオリジナル。残りの半分は彼女のルーツでもあり最も愛聴してきたであろう曲達のカヴァーで構成されており、こんな最良の形で最後の歌声をひっそりと残しておいてくれたことに改めて感謝の思いでいっぱいです。
 Burt Bacharach や Carole King をはじめR&Bの名曲カヴァーも取り上げていますが、 George Gershwin や Rodgers&Hart といった作曲家達のトラディショナルな名曲にも彼女ならではのアプローチを試みており、彼女の音楽的アイデンティティがしっかりと刻まれています。様々なタイプの曲をしかし彼女以外の誰も再現できないような情感を込めて綴っていきます。
 『New York Tendaberry』の頃のようなほとばしるような感情は当時の彼女の年齢から考えても影を潜めていますが、かわって母としてまた一人の円熟した女性として、ふくよかでたおやかな情感をこめた丁寧な歌の数々に言葉もないほどです。
 演奏陣は70年代中期以降の彼女のアルバムではお馴染みの、John Tropea、Bernard Purdie、Randy Brecker、Will Lee、Chris Parker・・・といった燻し銀の面々。
 子どものこと、平和のこと、地球のことを歌う晩年の彼女。暗闇を照らす天使のような歌声がいつまでもいつまでも途切れることのないように。

(脇元和征)





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