Todd Rundgren

Long Flowing Robe

1971 "Runt. The Ballad of Todd Rundgren" Rhino R2 70863/CD





 これは「僕」が金曜の夜、ダンスホールにナンパに出掛けたけど、さえなくてウダウダしていて、そこにロングドレスの「彼女」が現れて、一瞬で恋に落ちてしまう歌です。この曲はナイーブというか、青春な内容なのですが、こういう歌が歌える Todd Rundgren が僕は好きです。金曜の夜の高揚感、ダウンタウンの雑踏、異性への憧れ。夏の夜に時々、思い出したように聴きたくなります。
 この曲はティーンエイジャーソングではあるのですが、普通の曲と趣を少し異にします。Todd 得意の一人多重録音が、聞き手に個人的な体験と空想の世界の両方を想像させる。クラビネットとギターソロが簡潔なイントロを作って、あとは聞き手がすごくポップな世界に放り込まれるだけ。


 ナンパをするとイキがってみても、あまり肉体感がなくて、全て Todd の頭の中で起きているような気もします。
 そう Todd は何か生身の感じがしないと思いませんか。サンプラザで見た完璧なビッグバンドアンサンブル(『Nearly Human』ツアー)、宇田川町時代のタワー渋谷店でもらったサイン(ライノから旧譜が一斉再発された時)。個人的な生の記憶もあるんですが、何かどっから来たかわからない不思議な人ですね。
 曲の中盤、ダンスホールで「僕」が「彼女」に触れた途端、「彼女」はどこかに消えてしまう。しょぼくれた気持ちで家のベッドに潜り込む「僕」。
 すると「僕」の頭の中で何かが鳴って、「彼女」はロングドレスを風にゆらしてベッドルームの入り口に立っている。やった、妄想完成。ちなみにこの「頭の中で何かが鳴る」モティーフが好きです。後の「I Saw The Light」とか、「All The Children Sing」にも違う形で出てきます。ポップな曲を選んだかのように。
 この作品は1971年、Todd のソロ活動2作目のアルバムの冒頭を飾ります。この後、次々と名作、問題作が生み出されます。Todd ファンはたくさんいらっしゃると思いますが、みなさんはどの曲・アルバムがお好きですか?もし Todd 体験がこれからならば、このアルバム も お勧めします。ジャケット変だけど。

(たかはしかつみ)





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