Ben Sidran

Lover Man

1985 " Love Man " Magenta MA-0204LP/LP





 わたしにとっての Ben Sidran 初体験はこのアルバムですから、もしかしたらすごく的外れの Ben Sidran を語ってしまうかも知れませんが、何卒ご容赦のほどを。
 しかしまあ自分のレコード棚を振り返ると、やんなっちゃうくらい思い出がよみがえっちゃいます。特に81年から86年に出たアルバムってのは社会人1年生から6年生までなので、甘く切ない思い出の雨あられ紙吹雪しとどの涙…なんのこっちゃ。
 このアルバムは日本仕様で、邦題が『Lover Man』、原盤は『On The Cool SIde』、邦盤は4曲も少ないんですよ。(でも邦盤のみの収録曲が1つあり) ジャケットも全く違います。当時の売らんかなAORの一環だったのかな、オッシャレーな雰囲気でまとめてあります。(ジャケットは原盤)


 でもでもそんなこととは露知らず、当時乙女最年長組だったわたしの胸に、ヤマハDX7の奏でるキラキラの音色がダイヤモンドダストのように降りそそいで、しばし世の中のわずらわしさを忘れさせてくれた Ben でした。ありがとう。どんなにか救われたことか…
 詞は思索にとんでいて哲学的だし、風貌も実は好みでして、このアルバムを契機に、インテリの誉高い Ben をしばらく追い続けることになるのでした。彼の手にかかるとジャズもブルースも Ben のフィルターを通して味わいが変わる気がします。何ていうか天火干しにしたアジとか干し貝柱とか、あっさりしてるけどうまみが滋味に変わって噛むほどに美味しいっていう、そういうとこが好きです。
 わたしがこのアルバムで一番好きな「場所」があるんです。世にも美しい、DX7によるヴァイブの「Lover Man」のイントロが終わって、次に移る瞬間。これを最初に聴いたときはもう〜鳥肌立ちました。本人によるノーツにも「おそらくレコードの中で一番気に入っている時間でもある」と書かれています。現役の乙女も昔乙女だった人も1回聴いて〜〜! うるうるするから。歌もいいんですよね。この曲の彼のヴォーカルは存外力強いんですけど、概してするめみたいです。(干したもんばっかやな)
 昔のアルバムが再発されてうれしいこの頃、お金の続く限り買って聴かなくちゃ。それにしてもこれじゃ一生ビンボーじゃん。

(なかのみどり)





Copyright (c) circustown.net