Carole Bayer Sager

Sometimes Late at Night

1981 " Sometimes Late at Night " Boardwalk 33237/LP





 愛に包まれた美しいメロディー。心に優しく暖炉が灯った様。
 Carole Bayer Sager はニューヨーク生まれ。1960年半ば頃から活躍していたキャリアの長い職業作詞家です。Screen Gems の Don Kirshner に見い出され、作詞家としてデビューした時はまだ高校在学中だったとのこと。 Carole Bayer の名前で様々なニューヨークの作曲家と組んで曲作りを行いました。Toni Wine と作った Mindbenders の「A Groovy Kind of Love」等は彼女の初期の代表曲です。
 70年代に入ると彼女は、Melissa Manchester、Peter Allen、Bruce Roberts といったMOR系の優れたソングライターと組んで数多くのヒットを生み出していきます。またこの頃、ミュージカルや映画音楽のフィールドで活躍していた作曲家 Marvin Hamlisch と結婚。2人のコラボレーション作品も生まれます。ちなみに Lesley Gore の「California Nights」や Barbra Streisand の歌唱で知られる、映画『追憶』の表題曲、「The Way We Are」はこの Marvin Hamlisch の作曲によるもの。


 職業作家として活動を続けてきた彼女に、多くの仲間達が歌を歌うことを薦め、エンジニア出身の Brooks Arthur プロデュースの下、1977年にファーストアルバム『Carole Bayer Sager』を、翌年1978年に『..Too』をリリース。両アルバムともこれまで彼女が提供したきた楽曲を取り上げた多くのアーティストに支えられた、素敵なアルバムとなりました。特にセカンドアルバム『..Too』は、David Foster や Michael McDonald らも参加して、AORの名盤としても人気を博しました。
 その後、 Marvin Hamlisch と離婚した Carole Bayer Sager は、Burt Bacharach とコラボレーションを開始し、1981年、Christopher Cross に提供した映画の主題歌、「Arthur's Theme (Best That You Can Do)」(邦題/「ニューヨーク・シティ・セレナーデ」)がアカデミー主題歌賞に輝きます。同年、Carole Bayer Sager はこのサード・アルバム『Sometimes Late at Night』を発表、その裏ジャケットには愛むつまじい2人の姿がありました。
 Peter Allen、Neil Diamond とのコラボレーション2曲を除き、楽曲は Burt Bacharach と Carole Bayer Sager の共品。曲によっては盟友、Bruce Roberts も加わっています。参加ミュージシャンは共同プロデューサー、 Brooks Arthur の人脈よりこれまで参加した西海岸のスタジオ・ミュージシャンを起用、しかし全体を覆い尽くすサウンドは Bacharach そのもので、優雅で甘くロマンチックなサウンドに仕上がっています。管弦楽で曲と曲を流麗に繋げてみせるところなどいかにも Bacharach という感じ。 Bayer Sager は決して歌のうまい人ではないのですが、自立した女性のあり方と可愛らしさが同居してとても魅力的。僕は Carole Bayer Sager と女優のダイアン・キートンとちょっと被さってみえてくるんです(笑)。
 その後2人は結婚し、公私共に最高のパートナーとなります。1980年代以降、 Burt Bacharach は精力的に活動していませんでしたが、このアルバムは Burt Bacharach にとっても非常に優れた作品となりました。
 現在、Carole Bayer Sager は Burt Bacharach と残念ながら別れてしまいましたが、今では作詞家のみならず、プロデューサーとしても活躍を続けています。Carole King の2001年の最新作『Love Makes the World』では、エグゼクティブ・プロデューサーとしてクレジットされていました。このアルバム『Sometimes Late at Night』は最近めでたくCD化になりました。

(富田英伸)





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