Johnny Mathis
I'm Coming Home 1973 " I'm Coming Home " Columbia KC32435 / LP |
||
Thom Bell が奏でるストリングスとホルンの調べの彼方に、懐かしい家路が映り込んできます。あともう少し歩くと我が家。
このアルバムは、「I'm Stone in Love With You」や「Stop, Look, Listen (To Your Heart)」といった The Stylistics のカバーも含まれていますが、全体を通して非常に内省的なアルバムに仕上がっています。最後の曲を除いて、Thom Bell-Linda Creed の黄金コンビの作品です。アップテンポな曲はなく、殆どバラードで占められており、初めて聴いた時は地味な印象でしたが、聴きこむ度にどんどん惹かれてしまいました。全体を通して優しいメロディーの中に切なさと寂しさが漂っています。 The Stylistics や Spinners での仕事とはちょっと違う、Thom Bell を垣間見ることができます。Thom Bell が Johnny Mathis の声を借りて自身のソロ・アルバムをリリースしたかのようなアルバム。 |
||
Johnny Mathis は1950年代末から活躍しているエンターティナー系の歌手ですが、特に歌い上げる歌唱ではなく細く繊細な声の持ち主。この声のためにラスベガス・ショー辺りで特に女性に人気があると言われています。Johnny Mathis が 畑違いの Thom Bell にプロデュースを依頼した経緯についてはわかりませんが、結果的に、Johnny Mathis の情けな〜いボーカルが、この内省的な地味なアルバムに非常にマッチしています。
「A Baby's Born」、「Sweet Child」といった子供を包みこむような愛情豊かなバラード曲から察するに、" エンターティナー Johnny Mathis " というよりも " 個人 Johnny Mathis " を前に出したアルバムということも言えるかもしれません。 Johnny Mathis のみならず、エンターティナー系の歌手は70年代においては、ポップス・フィールドで活躍してきたベテラン・プロデューサーやアレンジャーと組んだ仕事が多く、Andy Williams は Al Capps や Nick DeCaro、Engelbert Humperdinck は、Charlie Callelo や Bobby Eli ....、といったようになかなかあなどれません。 |
||
このアルバムも素晴らしい「500円の名盤」です。お探しください。
Album Produced, Conducted, Arranged By Thom Bell. (富田英伸) |