伊東ゆかり

L'AMORE HA I TUOI OCCHI

1965 King BS-7077 / Single





 長い間、この「恋する瞳」は自分の中では引き出しの奥にしまってある宝物のような存在の曲でした。中学生の時に買ったシングル・レコードを時々出してきては、聴いてひとり悦に入り、いい曲だなぁと思っていました。今回の『ロングタイム・フェイバリッツ』の中でカヴァーされ、まりやさんもこの曲を心の中で暖めていたのかと思うと、とてもうれしい気持ちになります。
 さて、この曲は1965年1月、イタリア北部の町、サンレモで行われた第15回サンレモ音楽祭の入賞曲で、伊東ゆかりとイタリア人のBruno Filippiniが歌ったものがオリジナルということになります。この音楽祭で歌われる曲は、すべてイタリア産の新曲で、この当時はそれをゲストの外国人とイタリア人の各1名が別々に歌い、曲が審査されていました。そして優勝曲と入賞曲が決まるわけです。ちなみに1965年の優勝曲は Bobby Solo と New Christy Minstrels が歌った「Se piangi, se ridi」(君に涙とほほえみを)でした。


 「恋する瞳」はとても優雅なメロディを持っていて、聴けば聴くほどに味わいが深まる曲だと思います。伊東ゆかりは若くして歌手デビューし、十分なキャリアがあるとはいえ、当時まだ17歳。日本人として初めてサンレモ音楽祭に出場し、なれないイタリア語の曲というハンデキャップがありながら堂々たる歌いっぷりだったようです。
 写真を掲載したシングルは1965年3月に日本で発売されたオリジナルのイタリア語ヴァージョン。録音は帰国後の日本で行われたと思われ、彼女の歌もイタリアで実績を残した自信が感じられます。アレンジの東海林修もいい仕事をしています。この後、日本語とイタリア語がちゃんぽんのものも発表されています(現在彼女の全曲集は複数出ているのですが、ほとんどこのヴァージョンが収録されているようです)。まりやさん効果で「恋する瞳」のイタリア語ヴァージョンが入ったCDをキング・レコードが出してくれるといいと思うのですが…。

 最後にコンポーザーに関してですが、作詞の Vito Pallavicini は1965年のサンレモだけでも Gene Pitney / Nicola Di Bari の「Amici Miei」(青春に恋しよう)、Petula Clark 他の「Invence No」(悲しき運命)」、そしてPino Donaggio 他の「Io che non vivo」(1966年に Dusty Springfield が英語詩でカバーして大ヒットを記録することになる「You Don't Have To Say You Love Me」(この胸のときめきを)の原曲)を入賞させた人気作詞家だったようです。作曲の Gorni Kramerとのコンビでも、後に Milva の「Nessuno di voi」(悲恋)などもヒットさせています。

(森勉)





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