Gigliola Cinquetti

Non Ho L'eta

1964 King HIT1077/Single





 初めに、私事で恐縮ですが、竹内まりやさんと私は誕生日が2日違い(まりやさんが3月20日、私が18日)で、同年代なんです。そういうこともあって、今回のカバーソング集『Longtime Favorites』はわれわれの世代の音楽的ルーツをまりやさんがどう歌われているかに人一倍興味があります。音楽的環境の違いはありますが、われわれは雑誌メディアよりも創生期のテレビやラジオから大きな影響を受けた世代じゃないでしょうか。テレビでいえば、スマイリー小原さんの踊る指揮で今も目にあざやかな「ザ・ヒット・パレード」や伝説的な「シャボン玉ホリデー」(今思うと二つの番組とも「渡辺プロ」の歌手が大勢出ていました)からは日本語訳詞の欧米ポップスを聴き、ラジオからはベストテン番組や各レコード会社の持っていた番組(L盤アワーとか)などから多くのポップスの楽しさを教えられたものです。


 さて、Gigliola Cinquetti の「Non Ho L'eta」は、幼い恋心を歌った彼女の'64年の大ヒット曲です。'66年ごろからポップスをラジオやテレビで聴き始めた私は、リアルタイムでは聴いていない曲です。まりやさんは、ご兄姉からの「感化」で当時、既に「おませな」ポップス大好き女の子だったんでしょうね。当時、カンツォーネというと、私にとっては、男性では、Bobby Solo、女性では Gigliora Cinquetti が代表的な歌手でした。「ノ・ノ・レタ、ノ・ノ・レタ」で始まる歌いだしは、当時中学生の私にもすぐ口ずさめる歌でした。それは、情感を抑えながら歌う彼女の歌と、日本人好みのメロディラインがまだそれほど音の洪水の中にいなかった中学生の少年の心に響いていたんですね。そう、彼女の歌は、「雨 La Pioggia」ほか、「サンレモ音楽祭」の話題をよく取り上げた文化放送のポップス番組でよく聴きました。確か、その番組のディレクター氏がサンレモ音楽祭に取材派遣されていた記憶があります。また、カンツォーネもよくオン・エアーされていました。

 最近、巷にでているカバーソングの多くは、なぜ、その歌手がそれを歌っているのかがよくわからないものが多い中で、まりやさんの『Longtime Favorites』は、ご自身の'60年代の生活を楽しくしてくれた歌たちへのオマージュと言ったらいいのでしょうか。同世代のポップスファンにとっては、あの時の自分と出会える時間を持てるアルバムではないでしょうか。Sugar Babe の「過ぎ去りし日々"60's Dream"」を聴きながら、『Longtime Favorites』のリリースを心待ちにする日々です。

(伊東潔)





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