Wynonie Harris

Good Rokin' Tonight

1947-2003 " Good Rockin' Tonight " Collectables COL-CD-2872/CD





 2004年はロック50周年であるそうだが、今日はそのもう少し前の曲を紹介してみよう。「Good Rockin' Tonight」はWynonie Harrisの1948年のヒットだ(発表は'47年)。ジャンプ・ブルースの代表曲と形容されることがあるが、その通りに強調されたビートの上で熱いボーカルと2本のテナーサックスを中心とした管楽器が吹きまくっている。tp、tb、as、ts x 2の管5本と p、b、drの編成で、ギターこそないもののロックンロールを感じることができる。Wyonie Harrisは写真と音から、厚い胸板、鋼の声、男の色気という感じがするが、実際にも飲めや遊べやのロックスターの先駆けであったという記述を見つけることができる。彼の歌声は、この時代に管のコンボに伍して歌っていたのであるから、さぞバカでかく、気持良かったろうと思う。その場にいたかったものだし、せめてSP盤でもどこかにあったらその「鳴りかた」を感じてみたい。


 この曲のオリジナルは同時代の歌手/作曲家のRoy Brown('47)だ。無名時代の彼はこの曲を作曲。自分のアイドルであったWynonie Harrisに歌ってもらうべく画策するもこの時は取り上げられず。しかし幸運を得て、DeLuxe Recordsからデビューのチャンスを得た。なんと夜中に社長に電話ごしに歌って聞かせたという。彼の声はバラード歌いもしくはクルーナー(Bing Crosbyのモノマネをしていたという)タイプで、彼のオリジナルバージョンはしなやかな味わい、ジャズだと言われてもうなずいてしまうもので、そこからはロックの息吹は感じられない。それを考えると、その直後に急転、リズムを強化して「煽る」曲に仕立てたWynonie Harrisのバージョンは一つの発明である。この曲の大ヒットはWynonieにゆずったが、この曲をきっかけにRoy Brownも一時代を築くことになる。
 ここの曲にはたくさん好カバーがある。最も有名なものはElvis Presley ('54)だ。彼の2枚目のシングルであるが、ロカビリーに仕立てた解釈と歌唱力は想像を越えたもので、前奏なしのイントロから歌いきりまで息つく暇もない名演。ここまで人の曲を「オリジナル」にしてしまうのは、Elvisの得意技なれど、只々感心するしかないのである。なおElvisはWynonie HarrisやRoy Brownのステージを直接みているそうであるが、特になめらかな喉の使い方は、Royの影響を強く受けてるのではないだろうか。

 この直後、Rick Nelson ('57)、Carl Perkins ('58)、Buddy Holly ('58)らが相次いでカバーを発表しているが、彼らはみんないわばElvisのカバーだ。また、Paul McCartneyもたびたびライブで取り上げており、'91年と'93年のライブ盤で2度も発表しているが、Paulも微笑ましいElvis振りだ。一方、James Brown ('64)もカバーしているが、こちらは一番のWynonie直系で、強くてスピードがある。またはんなりと歌うPat Boone('59)はこの曲のクルーナーの遺伝子が出てきているもの。その他独自性の高いものに、70年代ロックなMontrose('73)、何を演っても彼そのもののになってしまうJerry Lee Lewis('58)などがある。しかしこの曲のカバーはどれを聞いてもおもしろい。こうなると21世紀のカバーも聞いてみたい。ここに挙げられていないカバーをお持ちの方がおられたら、教えていただきたい。

(たかはしかつみ)


Roy Brown



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