2012.08.13
		前山にて 柴草玲 うつせみソナタ (2004)

裏山へ続く懐かしい夕暮れ小径。
聞えるのはひぐらしの音。


"うつせみ"「空蝉」は蝉の抜け殻のこと。
この世の虚しさを表現した言葉＝現身(うつせみ)。短い季節"夏"を謳った"ソナタ"が８つ収録されていました。

どの曲も心に底に宿っている優しい夏の心象情景が描かれていました。
時間が止まったような様々な夏の瞬間を切り取っていて、忙しい日常を忘れさせてくれました。


「前山にて」はラストに収録されているナンバーで、アルバムのハイライトとなっています。
変わらぬ山と過去の幼い自分、現在と向かい合う今の自分、そしてそれから先の自分。揺れる気持ちが夏の景色とシンクロしながら溢れ出していきます。

柴草玲さんの基本的なスタイルはピアノによる弾き語り。
奥深いメロディーとそのオリジナリティ。小柄な柴草さんがピアノを前に座った時、その場の空気は一瞬止まり、柴草玲ワールドに染まっていきます。

"前山"とは、柴草さんの故郷、志賀高原の麓にある実際にある山とのこと。
子どもの頃から親しんでいた場所のようです。


柴草さんの"前山"は聴く人の心に、それぞれ自分の故郷の山々の風景を写し取って響いています。


今日の1曲：柴草玲 - 前山にて