2012.10.04 | ||
SPARKLE
山下達郎 FOR YOU(RCA/RVC RAL-8501) (1982) |
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大滝詠一の『A LONG VACATION』はそれまで聴いてきた日本の音楽とは一線を画す画期的なアルバムでした。繰り返し繰り返し本当によく聴いたなあ。そこを足がかりとしてナイアガラの滝を遡っていくと、シュガーがいたりアレンジャーのクレジットに山下達郎という名前を発見したりして・・・。え?山下達郎ってあの「Ride On Time」の山下達郎?
追体験とか再発見がわずか1年半ほどの間にぐわーっと重なって、一連の流れがつながって、それから初めて出た達郎さんのアルバムが『FOR YOU』。
あの鮮やかな鈴木英人氏の青いジャケットがまず鮮烈でした。
そしてレコードに針を落とした瞬間、流れてきたカッティング・ギターの乾いたサウンド。
ぶっ飛びましたね〜。ジャケットどおりの内容。あのなんと表現していいか分からない感覚。体験したことのない世界観。名状し難い衝撃!
今から思うと『ロンバケ』や『FOR YOU』で80年代はきらびやかに幕開けしたのだと思います。まだバブルという言葉が生まれる前の、日本がハツラツとしていた時代。
郷里の宮崎は街中の街路樹にパームツリーが植わっているような土地で、晴れた日のスコーンと抜けるような青空とともにまさに文字通り、いわゆるリゾート・ミュージックが似合う街でした。
まあ、そういう開放的な土地柄もあってか「夏だ海だタツローだ」というのが割とすんなりはまっていったのかもしれません。
だから『FOR YOU』のアルバムは飽くことなく本当によく聴きました。
そういう原体験のおかげで、あの「SPARKLE」のカッティングのフレーズは何度聴いても色褪せることがないし、今聴いても82年のあの心象風景の中にすんなり戻っていけるのです。
そしてその原体験は、今となっては初めて遠くに一人旅をした時のような何ものにも代え難い甘美なものになっています。