2012.10.04
風の回廊 風の回廊
山下達郎

Single(MOON-719) (1985)

「風の回廊」は1985年の3月25日にシングル発売された。高校2年の夏になるちょっと前、バスケ部の友達のSちゃんの家に遊びに行った時にラジオからこの曲が流れてきて、冒頭のアカペラの爽やかさに背中がゾクゾクっとしたのを覚えている。まるで夏の到来を告げるファンファーレのようだった。「この夏のBGMはこの曲しかない」と思った。

高校2年の夏というのは人生で1回しかない。いや、もちろんどの歳の夏も人生で1回しかないのであるが、43歳の夏と17歳の夏では、貴重さでいったら比べ物にならないのではないか。17歳の夏、バスケと海と女の子に燃えた。恥ずかしくなるくらい、絵に描いたような青春を体験したと思う。そのBGMにいつも「風の回廊」は流れていた。(“コリドー“という読み方が出来ずに“カイロウ“と読んでいたが…)

「遥か遠い日の後姿 なんて優しく甦る」という詞が、今聴くとまるで陽炎みたいなあの日々の記憶のようだ。今から10年くらい前に高校の同窓会の通知が来たが、「遠い日々への回廊」を戻っていく勇気がなくて辞退した。まだ当分は風の中の朧げな記憶のままでいい。

ちなみに高校2年の夏の終わり、サザンオールスターズの「Melody」がシングル発売された。「秋のBGMはこの曲しかない」と思った。更に11月には大滝詠一の「バチェラー・ガール」がリリースされ、しばらくはその虜になった。青春とは移り気なものである。

(高瀬康一)




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