2012.12.09
Winter Light Winter Light
Linda Ronstadt

Dedicated To The One I Love (1996)

 '60年代の後半から'70年代を中心として、'80-'90年代、さらに、2000年代に入っても歌い続けている女性歌手の一人に Linda Ronstadt がいます。'70年代のポップス・シーンは、優れたシンガー・ソングライターを輩出し、数多くの名作、傑作が発表される中、彼女はあくまでもひとりの「歌手」として活躍しました。つややかで伸びのある声、歌に対する柔軟な姿勢などが彼女の持ち味です。
 その活躍した要因を挙げるとすれば、「A World Without Love」などのヒット曲で知られる英国の男性ポップ・デュオの Peter & Gordon の Peter Asher をプロデューサーに迎えコンビを組み、Buddy Holly の「It's So Easy」をはじめとするオールディーズや Jimmy Webb などのシンガー・ソングライターの作品を取り上げたことにあります。そして、オールディーズ、シンガー・ソングライターの作品を問わず、歌手として真摯に歌に対する姿勢を崩さなかったことだと思います。その結果、'70年代、'80年代のアメリカのポップス界を代表する女性歌手として位置づけられたのではないでしょうか。
 「Winter Light」は、1996年にリリースされ、同年のグラミー賞の「Best Music Album For Children」賞を受賞した『Dedicated To The One I Love』に収められています。
 このアルバムの日本盤ライナーノーツの中で、彼女は以下のようにコメントしています。
 「このアルバムは子供たちを穏やかな眠りに誘うような作品なの。だから、決して彼らが目覚めさせないよう、耳元で囁くように歌ってみたわ。」
 アルバム全体のサウンドは、今までにない彼女の抑えた、まさに囁きかけるヴォーカル、それに女性歌手の Valerie Carter のハーモニー、ハープほかの透明感のある音色が溶け込むものを基調にしています。
 「Winter Light」は、もともとは1993年の同名アルバムの最後を飾る歌ですが、このアルバムに入ったのも不思議ではなく、この歌の前の Queen の「We Will Rock You」(とても素敵なアレンジ)から違和感なく、この歌につながれていきます。
 特にサビの「Now The Clear Sky Is All Around You/Ah Ah/Love's Shadows Surround You〜」の部分、ピアノをバックに歌われる彼女の歌唱は、賛美歌を思わせる詞とメロディが聴くものの気持ちをとても和やかに浄化させていきます。
 彼女の歌唱によって、雪が深々と降る冬の夜、幼子を眠りに誘い、暖かい心地よさで微睡む幼子の表情が目に見えるように感じます。
 このアルバム全体を通して感じることは、ささやかではありますが、子供も大人にも、とても大事な歌の贈り物、宝物をいただいた気持ちを抱かせてくれることだと思います。

(伊東 潔)




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