2013.01.29
Get Up I Feel Like Being A Sex Machine Get Up I Feel Like Being A Sex Machine
James Brown

Sex Machine (1970)

前回はファンク特集の第1回目としてファンクの始祖、James Brownの『Live At The Apollo』をご紹介しました。ゴスペル・チャーチの熱気をそのまま記録したようなライブ・アルバムはR&Bの骨太な雰囲気が感じられる、まさにゴスペルそのものでした。
それはまだファンクという言葉もジャンルも確立する以前のサウンドでしたが、このライブ・アルバムをきっかけにしてJBはスターへの階段を上り始めます。

James Brownは1933年にサウスカロライナ州に生まれてジョージア州で育っています。60年代に入ってモータウンやシカゴ産のノーザン・ソウルがヒットを生み始めていた時代に、南部出身の彼はそれに負けないような新しいジャンルの音楽を生み出そうとしていたのでした。60年代のソウルはダンスとは切っても切れない関係がありました(いや、当時に限らずそもそもブラック・ミュージックは現在に至るまでダンスとは密接不可分な関係にありますね)。ソウルのメインストリームはダンス・スタイルの変遷とともに様々なヒット曲を生んできたからです。JB自身がダンスが得意だったこともあって彼自身がひとつのダンス・スタイルといっていいオリジナルなものを作り上げていったのです。
それがJBの生み出したダンス・ミュージックの新しい形、ファンキー・ミュージックでした。

その最初の曲と言われているのが1964年にリリースされた「Out Of Sight」
後の研究家によって、この曲をもってファンクの出発点とするのが定説となっているようです。それまでのR&B然としたメロディアスな曲調とは一変してあくまでもリズムに重きが置かれています。それは多分に新しいダンス・ミュージックの形を模索した結果ではないかと思います。
この曲を皮切りとしてその流れを汲む「I Got You」、「Papa's Got A Brand New Back」など、タイトなリズムのダンス・チューンを生み出していきます。

それでは、その「Papa's Got A Brand New Back」を聴いてみましょう。単調なリフが延々と続くパターンは意識して聴いていないとひどく退屈に感じるかもしれませんが、聴き続けていくと妙に心地よくなっていきます。ブラスもリズムの一部となっているサウンドはシンコペーティッドな揺らぎがあって、よく聴くとリズムは決して一様ではありません。そのリズムに知らず知らずのうちに乗ってしまいます。明らかに人が奏でているリズムの一定でない揺らぎ。これにハマってしまうんですね。これは一種の麻薬かもしれません。延々と続くリフレインは脳の深いところを刺激するのかも・・・。

「Papa's Got A Brand New Back」は初期のJBのファンク・スタイルとしての到達点と言えるでしょう。
そしてこの頃にはMaceo PakerのサックスがJBのファンク・サウンドを支える上でとても重要なアクセントになっていることが分かります。JBの音楽は彼の突出した個性も然ることながら、勤勉で彼の音楽的な意図を汲み取ることのできる優秀なバックのミュージシャンに支えられてのことでした。そのあたりのことは次回にでも触れてみたいと思います。
それにしても映像を見るとJBのダンスは後のMichael Jacksonに多大なる影響を与えていることが分かります。

60年代の中期から70年代の初頭にかけてはJBの快進撃が続きます。「Cold Sweat」(67年)、「I Can't Stand My Self」(68年)、「I Got The Feelin'」(68年)、「Licking Stick」(69年)などのファンキーなナンバーを次々と発表していきます。どれもワンパターン、ワンコード。でも快感!
そんなJBの代表的なファンク・ナンバーと言える70年の「Get Up I Feel Like Being A Sex Machine」を聴いてこの回は終わりにしましょう。

とにかくここ最近、来る日も来る日もJBを聴いています。かなり中毒になってるかも(笑)。JBは聴き続けていかないとその魅力が十分には理解できないことがよくわかりました。身体が馴染んでいくという感じが、とてもフィジカルな音楽であることを実感しています。








今日の1曲


(Kazumasa Wakimoto)




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