2013.10.23
The Weight The Weight
Levon Helm (Ringo Starr and his All-Starr Band)

Ringo Starr and his All-Starr Band (1990)

日曜に読んださわやかな原稿のおかげで、Levin Helm を観たときの事を思い出した。

いまから25年前に、私はニューヨークでレヴォンを観ている。友達と二人でアメリカ横断の真似事をしたのだが、仕上げの地がニューヨークだった。ニューヨークに数日滞在して、その時やっていたコンサートに3回行き、その一つがレヴォン・ヘルムのものだった。会場は Lone Star Cafe というライブハウスで、友達と別行動で、ひとりで行った。それなりに冒険であった。ちなみに友人はエンパイア・ステートビルに登って、そこで日本人の女の子をナンパして盛り上がっていたらしい。

Lone Star Cafe は Fifth Avenue and 13th Street にあったという。今から考えると、ニューヨークといってもさほどびくびくする必要のある場所ではない。マンハッタンを真ん中から先っぽまで歩いた。地下鉄もどんどん乗ってみた。この時ニューヨークで知っていたのは、自由の女神像とセントラルパークとメトロポリタン歌劇場くらいで、無難な場所をわくわくして歩いていたわけだ。

中古レコード屋には行った。レコード屋の目星はなかったが、新宿で養ったカンはニューヨークでも通用して、簡単にいくつも見つかった。どの店にもレコードが沢山あった。店全部のレコード箱を見て楽しかった。安いだけの理由で、特に珍しくもない盤をどんどん買った。でも名盤で日本のタワーでは売ってないはずのものをちゃんと選んで。店ではプロの買い付けかと聞かれた事もあった。ヴィレッジの店では、日本人のしかも旧友!にばったり会ってしまった。彼に、買い過ぎたから持ち帰るの手伝ってくれと言われたのには困った。ぼくだって、それなりには買っていたから。

レヴォンは単独のコンサートだった。バンド編成だったが、誰がいたのか。残念ながらライブの内容はあまり思い出せない。年月の事もあるが、なにより当時は The Band の曲をあまり知らなかった。The Band はすごく大人の、おじいさんの音楽のような気がしていた。私は The Last Waltz には間に合わず、1988年当時は The Band は過去のバンドという印象すらあった。Lone Star Cafe は小さく照明が暗い店で、私はレヴォンの左側から彼がドラムを叩く横顔を観ていた。押し込むようなバチさばきがよく見えた。彼の頭上には巨大なバッタが吊してあった。Lone Star とは一つ星、すなわちテキサス州のことで、またカフェの屋上には巨大なイグアナが鎮座していたそうだが、そんなことは何も知らなかった。

私がニューヨークでレヴォンを観た翌年、彼は Ringo Starr & His All Starr Band の一員として来日した。盟友 Rick Danko も一緒である。リンゴの待ちに待った武道館公演。The Weight は序盤突然あらわれた。The Band のメンバーの持ち歌の最初に。そのイントロで客席からは思いがけず大きな拍手と歓声が上がった。これだけ多くの人が待っていたのかという驚きと同時に、そのビートはそれだけの説得力を持つものだった。私は初めて The Band とつながった。武道館では、レヴォンに続いて Dr. John が、さらに Rick Danko がリードヴォーカルをとった。この一曲だけで武道館はため息をついた。そして私は、The Band の『普通の』ファンの仲間入りをした。


今日の1曲
Garth Hudson もゲストで参加しています。

(たかはしかつみ)




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