2014.01.30 - 追悼大瀧詠一 | ||
暗闇坂むささび変化
はっぴいえんど 風街ろまん (1971) |
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ぼくはロンバケ・ジャスト・高校生のナイアガラーで、そこからすごい勢いで遡って一連の作品を聴きました。大滝詠一の諸作品は高校生の私の耳に何の違和感もなく飛び込み、ぼくをとらえていたのです。しかし今から考えてみると不思議なもので、ロングバケーションのサウンドはロングバケーションの前になく、やってる音楽までさっぱり違う(表層的には)。でも惹きつけられた。何故か。こどもの耳に訴えるのは、歌のうまさと音の良さだったのではないかと思います。ビートルズが優位なのはやはりこの要素が圧倒的で、キンクスはどう頑張っても音の「もや」を聴き手が取り払わないと「おぉぉぉ!」という感動に出会えない。こどもは感覚的な刺激に飛びつくのですね。はっぴいえんどの『風街ろまん』も音質、音圧がストレートに響いてきたのではないかと思います。
ロングバケーションは大滝詠一の歌にひかれたのですが、その一方大滝詠一はあまり歌がうまくないのではないかというおろかな直感を持っていました(そのまた一方でぼくはユーミンは歌がうまいとずっと思っていたので、私の耳はそのレベルです:)。それが上手い!と気づかされたのが、『風街ろまん』のこの曲です。
「暗闇坂むささび変化」は細野晴臣の曲で、何かに似ている、とか、細野さんフラットマンドリンがすげえぇぇぇ、とか色々あるのですが本論に関係ないのでカット。この曲の主眼は細野晴臣と大滝詠一の2声ハーモニーにあります。はじからはじまで2声のハーモニー。ついたりはなれたりのどっちが主旋律かわからなくなるハーモニー。ジョンとポールみたいなハーモニー。この曲を歌ったことがあります。大学のサークルの夏合宿とかで風街のテープを持っていった。延々ラジカセで他人の迷惑も顧みず聴いているんですよ。『EachTime』の夏だったはずですが、なんで「風はペパーミント♪」とかでなくて「ももんがー♪」だったんだろう。しかしかわいそうな人はいるもので、巻き込まれてくれて、耳コピーで一緒に歌ってみた。初めての2声ハーモニー。このついたりはなれたりの旋律が快感。自転車をこぐようなもんで、落ちると倒れる。ちなみによく似た 《離れず2声》は「12月の雨の日」でも大滝自身のダブルであるのですが、「暗闇坂」が圧倒的にいい。細野晴臣ともこーんなに合っていました。
大滝サウンドの音の良さ。はっぴいえんども、ファーストも、シュガーベイブも、ムーンも、他のコロンビア・ナイアガラも、そしてロングバケーションも。意匠は違えど一貫した音の良さ。こどもの直感も刺激する音の良さ。そこにはどんなマジックがあったのか。それを探求すべく当サイトにて、笛吹銅次めざしウェブ・エンジニアにひたすら励む私です。音は出さないけど、何かは細部に宿るっ。