2014.03.11 | ||
冬越え
細野晴臣 HOSONO HOUSE (1973) |
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今年は3月に入っても寒い日が続いています。なかなか暖かくならなくて春の到来が待ち遠しいのですが、それでも陽の光は少しずつ眩しくなってきてるし、そろそろ花粉症も始まって春はやっぱりすぐそこまで来ているのですね。
この季節になると細野さんの『HOSONO HOUSE』を聴くことが多いのですが、今年はとりわけよく、というかここ10日余り飽きずに毎日のように聴いています。いや、本当に飽きないんです。細野さんのソロ・アルバムとしては『泰安洋行』の評価が高くて、好きだという人も多いのですが僕はどちらかというと『HOSONO HOUSE』のほうが好きです。それもこのアルバムを初めて聴いた30数年前に比べても今のほうが断然好きというか、じわじわと少しずつ好きなってきています。
『風街ろまん』の雰囲気を残しつつ『泰安洋行』のテイストもほのかに感じられて・・・。
ざっくりと懐の深いセッションが繰り広げられています。噛むほどに味わい深いすスルメのようなアルバム。若い時よりも少しは読解力が増してきたのか、音楽の趣向が変わってきたのか分からないのだけれども・・・。
なんというかこのキャラメル・ママが初めて揃ったゆったりと、でも密度の濃い揺らぎのある演奏がとても気持ちいいのです。
ナイアガラが福生の米軍ハウスならばこの『HOSONO HOUSE』は狭山の米軍ハウス。わざわざ狭い8畳の部屋で音が回り込むように録られたという、もこもことした感じがまた独特の空気感を持っています。ザ・バンドの『Music From Big Pink』にも通じるような雰囲気です。
このアルバムは冬から早春にかけてのアルバムだなあと思います。なんといってもこの曲が入っているからだと思うのだけど
あっこちゃん(矢野顕子)のカヴァーも甲乙つけがたい、「終りの季節」も別れが伴う春の曲だと思うし・・・。でもそう考えると“ゆでめん”も大滝さんのファーストもみんな冬のイメージ。『扉の冬』(吉田美奈子)は文字通りだし『ひこうき雲』(荒井由実)も、この頃出たアルバムからはみんな同じ匂いを感じてしまいます。
ともあれ、春先に聴くこのアルバム。細野さんの20代前半の淡い色の時代の記憶がしっかりと刻印されています。当時の狭山の雰囲気ってこうだったのかあと思う「恋は桃色」やロマンティシズムが仄かに内包されている「薔薇と野獣」も、長い時間をかけてじわじわと胸に迫ってくるのです。
“冬越えさ 季節の変わり目さ クシャミをひとつ”
今日の1曲