2014.05.28
Never Let Him Go Never Let Him Go
Jody Miller

Single (1965)

Jody Millerは最近気になっている女性シンガー。1941年アリゾナ州フェニックス生まれ、現在ではカントリー・シンガーとして有名ですが、60年代中期にデビューした頃は、大人のポップスを歌う、歌の巧いガール・シンガーという感じだったと思います。

注目を浴びたのが1965年に全米25位のヒットとなったシングル「Home Of The Brave」でした。Barry MannとCynthia Weilが作り、Bonnie & The Treasuresが録音した曲のカヴァーですが、Steve DouglasのプロデュースにBilly Strangeのアレンジという(いかにもキャピトルの)音作りに、パンチの効いた歌唱が乗ったなかなか迫力のあるヴァージョンになっています。

その後、70年代までチャートでは振るいませんでしたが、この人が歌うカヴァー曲って自分の琴線に触れる曲が多いんです。アルドン〜スクリーン・ジェムズ系が多くて、例えばMann & Weilの「Magic Town」、King & Goffinの「Let Me Get Close To You」や「He Hit Me」(!)、Van McCoy作の「Baby I'm Yours」、The Chiffonsのカヴァー「He's So Fine」などなど(ちなみにこのJody Miller版の「He's So Fine」のヒットは、この曲とGeorge Harrisonの「My Sweet Lord」が似ているということを世の中に気付かせてしまいました)。

その中でも一番グッときた曲が「Never Let Him Go」でした。この曲は前述の「Home Of The Brave」の少し前にキャピトルからリリースされたシングルで(Capitol 5353)、曲を書いたのはDavid Gates。Maureen Evans(CBS, 1965)やFrank Gorshin(A&M, 1966)、Glenn Yarbrough(RCA, 1965)など、同じ時期に何人もの歌手がこの曲を録音しているので、Jody Millerへの書き下ろしというよりは、出版社に登録していた楽曲だったのかも知れません。(過去の「サンデー・ソングブック」ではJody MillerとGlenn Yarbroughの曲がオンエアされています)

Jody Millerのヴァージョンは、どことなくDionne Warwickを思い起こさせる気品と洗練さがあります。アレンジも担当したDavid GatesはかなりBurt Bacharachのサウンドを意識したんじゃないでしょうか。ちょっと暑苦しい歌い方が目立つ時もあるJodyも、この曲では抑え気味で本当に素晴らしい歌唱です。全くヒットしなかったのが不思議ですね。

僕がこの曲を好きになったのは、かなり昔にDavid Gatesのソロ・アルバム『Goodbye Girl』に入っていたセルフ・カヴァーを聴いた時でした。タイトルは女性宛に置き換えられ、ブリッジと3番目のヴァースは省かれていますが、60年代に数多くの曲を書いたDavid Gatesが10数年後にあえてこの曲を取り上げていることを思うと、本人もかなり好きだったんだなと嬉しくなります。


今日の1曲


(高瀬康一)




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