2014.08.30 - 追悼大瀧詠一
ナイアガラ音頭 ナイアガラ音頭
布谷文夫 with ナイアガラ社中

シングル(ナイアガラトライアングル) (1976)


ONDOの季節

大瀧さんが亡くなり、はや8か月。新盆を迎えました。
僕の住んでいる北海道もONDOの季節。学校、神社、商店街から「北海盆唄」や「子供盆おどり唄」などが流れていました。

おらがナー おらが国サの コーリャ ソレサナー 盆踊りヨー♪(北海盆唄


大瀧さんの精霊も福生に戻られ、櫓の上から盆踊りを見ながら『ONDO VACATION』(通称:オンバケ)あるいは『BON DE VACATION』(通称:ボンバケ)の構想を練ったのかな(収録曲は「楽しみ四倍音頭」や「シベリア氷原音頭」!?)などと考えながら、盆ダンスの最高峰「ナイアガラ音頭」とその周辺曲を取り上げてみました。



GO! GO! Niagaraのハガキ

「ナイアガラ音頭」が発売されたのは、今から38年前の1976年(昭和51年)3月25日。ラジオ番組「GO! GO! Niagara」のリスナーからのハガキにインスパイアされて作った曲だと、大瀧さんご自身がラジオやCDのライナーなどで何度も紹介しています。


ゴーゴーナイアガラ
第29回 年忘れリクエスト(1975.12.29)

さて、横浜の“我田引水の自称弟子のくりーむそーだすい。”さんからですけれどもね。
えー、1つ提案があるというわけですよ。『この番組…』ハガキを読みましょうね。

『あのね、1つ提案。この番組さぁ、“ゴー・ゴー・ナイアガラ”なんて、ダサいタイトルやめにしてさ、』
……って、これダサいかね?このタイトル。えー。

『ついでに、大滝氏はDJを降りてプロデューサーとして隠居して、その代わりに伊藤銀ちゃんをDJにしてさ。タイトルを「銀ちゃんのドーンとやってみよう!」にしようよ。』
っていうんだ。ヘヘッ(^_^)

『そんでもって大滝氏はコンポーザーとして、「ナイアガラ音頭」っていうのを作ってさぁ、布谷さんが歌うんだよ。ねーねー、いいでしょ、そうしようよ。』
…コレ、いい! コレ、さっそくいただいてねぇ、もう作っちゃったんですよ、ハハハッ(^_^)v。

「ナイアガラ音頭」っていうのを作りましてねー、一昨日でしたか、布谷さんがうち来まして、もう歌を入れました。そして「Niagara Triangle」に入ります!

ヒョッとすると、シングルでB面切るかもしれませんヨォ。大滝詠一と布谷文夫のカップリングなんていうのが、そういうリクエストもありましたね。


当時、流行っていた「欽ちゃんのドンと行ってみよう!」の「ニッコリ音頭」(三波春夫)に対抗してこんな曲はどうか?というリスナーの投稿に対するラジオ番組の「発表ネタ」ではありますが、ビギン、ルンバ、マーチなど、突き詰めてリズム研究をする中で、日本の「音頭」にたどり着くのは必然だったのでしょう。だからこそ、「コレ、いい!」と強く共鳴したのだと思います。

この曲を僕が初めて聞いたのは1991年(平成3年)。『NIAGARA TRIANGLE Vol.1』32DH 503版のCDをレンタルし、カセットテープにダビングして何度も聞きました。当時CDは廃盤だけれど、レンタルCDとして置いてある店がボチボチある時代。『NIAGARA MOON』を愛聴していて、リズムに対する欲求が強かったこともあり、「ナイアガラ音頭」は「コレ、いい!」とイントロを“聴いたトタンに一耳惚れソング”となりました。



音頭・オンドー・ONDO

「ナイアガラ音頭」には、大きく分けて(1)アルバムバージョン(ナイアガラ・トライアングル)、(2)シングルバージョン(とステレオMIXの東西文化交流バージョン)、(3)インストバージョン、(4)Let's Ondo Againに折り込みの英語バージョンの4つがあります。このほか(5)ライブでも違うバージョンが歌われています。ここでは最初に作られた(1)のシングルバージョンをメインに、曲の感想に加え、ついでにヤッコラヤノヤーと多少分析した深読み内容をかいていきます。なお、深読みは失敗することもあるので、読者の皆様はくれぐれもケチをつけたりなさらないよう、ご勘弁ください。

まず、この曲のイントロが実に魅力的です。ドラムに続いて三味線がフェードインしてくる瞬間は、暗くなり始めた夕方に涼しい風にのって、どこからともなく聞こえてくる笛や太鼓の音に辺りを見回すと浴衣を着た人たちが盆踊り会場に急いでいる、そんな情景を思い浮かべてしまいます。ドラム、三味線とベースが同時に、そして女性のお囃子に笛と“洋和折衷”を重ね、だんだんにぎやかになっていきます。「ナイアガラ・ムーン」では、滝の飛沫を分け入って、ビギンのリズムが聞こえてきて、空に照る月に向かってどこまでも昇っていくというロマンチックな光景を思い浮かべたもので、同じ夜更けでもだいぶ違いますが(^^;)、大瀧フェードイン楽曲群にはどれも強く心惹かれています。

イントロの楽器に続き、強力なリズム隊をものともしない、布谷さんのウナリが始まります。
(1)は「ハア〜」から始まり、(2)では曲全体のテンポをあげたためか「エェ〜」から始まっていますが、「ナイアガラ音頭」は「東京音頭」や「北海盆唄」のように「ハア〜」から始まる「ハア小唄」の系譜であると思いますので、(1)の方が魅力的に思います。ちなみに(3)は、「あなたが唄う」ので、どんな出だしで唄いはじめるか、“あとは各自で”です(^_^)。



福生よいとこ(ナイアガラ音頭サウンドを追え)

これもあちこちで書かれていますが「ナイアガラ音頭」は、布谷さんの歌が先、邦楽部門(笛とか)には歌とピアノだけ聴かせて、洋楽・ポップス部門(ドラム・ギターなど)には歌とリズムボックスだけを聴かせて、別に録音して合わせたというものですが見事に混じり合ってます。

大瀧さんは、「ナイアガラ音頭」は「ココナツホリデー」をイディオムにした作品であると言及したこともあるようですが、「音頭」の基本型「ドンドン・ドンガラガッタ、チョチョンがチョン」ではなく、「ドドッド・ドッド、ドドッド・ドッド」がずーっと続きます。この曲の要素を削っていくと最後に残るのはドラムのリズムで、三味線やお囃子は味付けなのかなと思います。あまたある音頭の中でどんな音頭をイディオムとしてチョイスしたのかとずっと気になっていました。
2001年(平成13年)、「GO! GO! Niagara Archives」でかかった曲の中に、「ナイアガラ音頭」のルーツではないか!とニラんだ曲がありました。その曲が三橋美智也の「福生よいとこ」です。

「福生よいとこ」は昭和47(1972)年4月に「新民謡」として一般にも販売され、福生市の公式ページにも歌詞が載っている曲です。似たようなアレンジをしている曲としては、三橋美智也「相馬盆唄」があり、大ヒットしたそうです。
「福生よいとこ」という曲は、もともと『NIAGARA MOON』の「福生ストラット」解説で曲名は知っていましたが、「ドドッド・ドッド、ドドッド・ドッド」というリズムの入れ方に、はじめて聞いた時「ナイアガラ音頭だ!」と思いました。
この「福生よいとこ」、当時、GO! GO! Niagaraで大瀧さんがコメントもしていたということがわかりました。

ゴーゴーナイアガラ
第78回「リクエスト」(1976.12.07)

さて、YR子くん、今年はどうもご苦労サンでした。ナイアガラダンスカンパニーの座長さんですけれどもね。えー、本当にダンスを踊っていただきましてねー、バツなぎが出来たというか、非常にナイアガラに新風を吹き込んでくれたというかね(^_^)。
っと、いうので、これをお送りいたします。三橋美智也で「福生よいとこ」。

『ハア 花の空から 雲雀が唄う〜 街の中から ヨイトコラサッサ
福が生まれる 夢が湧く♪…』
「福生よいとこ」でございました。

ナイアガラ音頭にも少しこの味を加味しております。なんといっても、ワタクシの今いるところですからね。実際はチョト外れてはいるんですけれどもね。一応は、福生の街にいつも買い物に行きますので、名前を使わせていただいておりますけれども(^_^)


ということで、曲調の発想としてはビンゴ!でしたが、素材そのものでなく「味つけ」に過剰に反応しすぎているだけなのかもしれません。

「福生よいとこ」の作曲・編曲、「相馬盆唄」の編曲をしているのは山口俊郎という、三橋美智也のデビュー曲「おんな船頭唄」を作っている方です。山口俊郎氏の出身は岐阜の養老町。Yoo-LooとNiagaraは「滝」でもつながるような縁を持っています(^^;)
脱線しますが、大瀧さんが音頭の話をするときは、中山晋平の新民謡の話からはじまり、“キング”レコードの話(大村能章などの作曲家)へ行くことも多いように思います。実はキングでデビューした大瀧さんですから、自分の音楽史も重ね合わせ、我こそは音頭の後継者だと感じ取っていたのかもしれません。



布谷さんの想い出

三橋美智也については、布谷さんも好きだったようで、「達者でな」をあちこちで歌っていたようですが、この曲だけでなく、布谷さんの声自体に三橋美智也を感じます。上磯と蘭越、そう近くないですが、一応北海道の南の方出身という共通点もあります。

15年程前、栗山町で布谷さんに1度だけお会いしたことがあります。
大滝さんがイーチタイムスで、百人呼んでレコード聞かせたら、一人はシクシク泣いて、誰かがゲラゲラ笑う、そんなサウンド目指したいという発言をしていましたが、布谷文夫さんは声だけでそれを実現出来ていました。栗山町でのライブで聞いた「スキヤキ」は、烈しさ、虚しさ、爽やかさ、温かさが詰まり、秋の高い空に谺していた。今でもあの歌声は忘れません。
感激のあまり、楽屋にサインをもらいにいったら、今度、P-VINEから再発があるんだよと、近くにあったコピー紙にメモまで残していただきました。ピーバインの殴り書きに、ちょっと受けました。



ごはんがうまい(1番歌詞)

音の分析に次いで、詞へも焦点を。
ナイアガラ流の“詞作”では、キーワードをもとに連想を重ねて試作し、途中の誤解・珍解釈も楽しむ、たゆまぬ“思索”が求められます。「ナイアガラ音頭」の歌詞も出だしを決めて連想しながら継ぎ足していったのではないか、と考えて進みます。

ハアー (ハアどおしたどした) 今日も元気だ 御飯が美味い (コラショ)♪


出だしの件は、専売公社が出したたばこ
「いこい」のコピーからいただいたものではないでしょうか?
このコピー自体は昭和32年(1957)に作られたものということなので、「ナイアガラ音頭」が発売された昭和51年(1976)当時も流行っていたかわかりませんが、時代的にはあり得ると思います。もしかしたら、「今日も元気だ〜」のフレーズを漫才や喜劇で誰かが使っていたのかもしれません(三遊亭圓楽?)が、そこまでは追求できませんでした。

もともとの「たばこ」を「ごはん」に代えて歌うことで、働く庶民(労働)から消費者・生活者(消費)へ視点が移行しました。糸井重里1982のキャッチコピー「おいしい生活」に先駆けること6年です(^_^)。



箸を持つ手にゃ(1番歌詞(続))

出だしが「ごはん」に決まったので、「はし」→「2番:みそしる」→「3番:たくあん」と“トントン拍子”に歌詞が決まったのでは、という分析だけではあまりに「花」がありません。
単純明快な健康賛歌のフレーズに、「箸を持つ手」に「花が咲く」光景が加わったところこそ、自分がユーモアの込められたナンセンスソングだ!と心惹かれた部分なのです。そこで、なぜ手に箸をもち、なぜ花が咲いたかについても少し追ってみました。

箸を持つ手にゃヨー チョイト花が咲く (ハー それからどした)♪


モノの本を読むと、民謡は、田植、茶摘、木遣りなどの労働歌と神事、婚礼、盆踊り、童謡などの舞踏俗謡、新民謡(創作)などに分かれていて、相馬盆踊歌、秩父音頭、郡上踊りのように五七五や七七七五の短い小唄形式のものと、八木節や相川音頭、江州音頭、網干音頭のような七七または七五調連続の長いくどき形式のものがあるなどと書かれています。また、盆踊りには、非常に大きく分けて「死者の霊をなぐさめる」ものと、「稲が穂を咲かせるための豊年を祈願」するものがあるとされています。

福生の近く、秩父では、豊年踊りの1つとして有名な「秩父音頭(秩父豊年踊り)」が踊られています。「秩父音頭」は通常、「鳥も渡るかあの山越えて 雲のさわ立つ奥秩父」という歌詞ですが、色々な歌詞があり、こんな歌詞もあるようです。

桑を摘む手も 筬(おさ)持つ手でも 盆にゃ踊の 手に変わる(秩父音頭)


通常、歌われているものとは違うので、「ナイアガラ音頭」への直接的な影響はないものと思いますが、労働の象徴「手」が豊年祈願として盆の季節に「踊り」と結びついている例の1つです。今回は、生活へ視点が移行しているので「食べながら踊る」のでしょう。踊り食いならありますが、食べ踊りというのは、座りながらダンスとおなじくらい難しそうです(^_^)。

そもそも、今回「ナイアガラ音頭」に登場するご飯は、何御飯ですかね。音頭を踊る時間帯は夜ですが、「今日も元気」と朝起きて、おもいっきり伸びをしながら、ごはんを食べ(ながら音頭を踊っ)ているような気がします。とにかく、古来より盆踊りに「手」が必要とされていることはわかったので、「花はどこにいった」のか、探しに戻ります。



花が咲く(1番歌詞(続々))

もともと「花が咲く」のは、四季折々、春夏秋冬のはっきりした日本の自然の摂理です。春の隅田川もうららですし、尾瀬でも水芭蕉が、宝塚でもすみれが咲いています。
「草津節」でも「お湯の中にもコーリャ花が咲くヨ」ですし、「庄内ハイヤ節」でも「秋にゃ黄金の 花が咲く」ですし、「真室川音頭」に至っては、「花の咲くのを待ちかねて」います。「花」の意味しているものはそれぞれ違います。ちなみにクレージーのハナ肇氏の「ハナ」は「鼻」由来なので、これはお呼びでない、です。

脱線ついでに、『レッツ・オンド・アゲン』の多羅尾伴内楽團「337秒間世界一周」は、大瀧さんいわく「真室川ソウル」という原題を改題したということでした。僕はこの曲のモチーフはArea Cord 615『TRIP IN THE COUNTRY』の「Katy Hill」だと思っていたので(お国巡りにかけているところがシャレている)、林伊佐緒が「真室川音頭」をジャズアレンジで「真室川ブギ」として演奏したように、大瀧さんがチャレンジしていたのは音頭の「ソウル」ミュージックアレンジだったのかもしれません。

だいぶずれましたが、稲穂が「咲く」ことで「米を食べる」ことが出来るということですから、やはりナイアガラ音頭は「豊年」を祈願し、今の生活を有りがたいものと考える歌といえるのだと思います。



ニッコリ笑って花が咲く(1番歌詞(続々々))

「ナイアガラ音頭」作成に関して、伝統的な音頭だけでなく、当時流行していた歌も検討の対象です。こっちの線が強いと思います。三波春夫のデビュー盤「チャンチキおけさ/船方さんヨ」のカップリングは「オールアバウトナイアガラ」年譜の音楽活動の最初(10歳の中でもトップバッター)に据えている原点の1つ。
「ナイアガラ音頭」はその制作の経緯からして、「ニッコリ音頭」(春夏秋冬)の作者であり、歌い手である三波春夫を仮想敵(?)に仕立て、音頭を徹底的に研究して作ったのではないかと思っています。

三波春夫が唄った音頭をたどってみると、紅白で歌った最初の音頭「世界平和音頭」に行きつきました。
丸い心で 両手をつなぐ つなぐその手に 花が咲き 夢も咲きます チョイト和やかな(世界平和音頭)


というフレーズです。ここからの要素も入っているのではないでしょうか。となると、こういう音頭が生まれていたに違いありませんねー。

『幸せ四倍音頭』
箸を持つ手にゃ たった一度の踊りでヨー
チョイト ロマンスの花が咲く (ハー それからどした)

二日目のプロポーズに 三月目の長持唄(ヨイショ)
お手を拝借(ハートントン)♪ 




オンド・ステップ(1番歌詞(韻律))

「颱風」「びんぼう」「いらいら」など、もともとリズミックな曲を作るときに「四音」で通してきた大瀧さんですが、ここまでは民謡・音頭の形式にそった詞の語数で丁寧に組み立てをしています(七七七五のタイプ)。

7(今日も3・元気だ4)、7(ごはんが4・うまい3)、
7(箸を3・持つ手にゃ4)、5(花が咲く)

そしてサビへと突入します。
元々、歌詞が決まっていて、音頭の基本「七・五」に合わせて歌ったのでしょうが(4(「ナイ」アガラ)+3(「オン」ドデ)、5(おどりゃんせ))、このサビのメロディこそ、「ナイアガラ音頭」を「ナイアガラ音頭」あらしめている部分だと思います。
突然ですが、大瀧さんは、岩手県江刺郡野手崎村字中宿(今の奥州市江刺区梁川中宿)で生まれて、遠野、釜石、花巻、釜石と転々とされたそうです。「しし踊」のリズムが自分のルーツの1つだとご自分でも触れられていましたが、岩手地方の日本最古の盆踊り「ナギヤドヤラ(ナニャドヤラ)」などもみていたかもしれません。
このナギヤドラヤは岩手でも北の方、青森の八戸、野辺地、岩手の二戸などの南部領のところ中心のようなので、江刺、遠野と関係性は低いとおもうので、音韻的に「ナイアガラ」に似ているなどコジツケると、トンデモ的な様相が強くなってしまいますが「ナイアガラ」で音頭やるルーツに「ナニヤドヤラ」があったらなんだか面白いですね。

話があらぬ方向に飛びましたが、要は「ナイアガラ」という言葉を音でどう料理するかを探りたいと思ったのですが、答えとしては「≪決まったルールがあるわけではない≫というルールがある」のだと思います。
「ナイアガラ・ムーン」の「ナイアー・ガラ・ムーン♪」
「ナイアガラ・ムーンがまた輝けば」「霧に覆わーれ〜た “ナイアガ〜ラ”の月―♪」
「ジングル : ナイアガラ・マーチ」「NA・I・A・GA・RA GO!GO!」
ですからね。

ナイアガラ音頭で 踊りゃんせ(ソレ) 
かたい事言わずに 踊りゃんせ(ソレも一つ)
かたい事言わずに 踊りゃんせ(はいかんそー)


(2)のシングルバージョンだと後ろのビートが強いので、それほど気にならないのですが、(1)だと、このサビは前からのつながりを断ち切るような唐突感が強く、音頭のビートに合わせて、踊っていた人もどう踊っていいか、とまどうような部分ではないかと思います。
当時作られた、ナイアガラ音頭の振付チラシ(この夏、日本全国、音頭でハッスル!!Ondo Step!!)をみてみると、「このオンド・ステップは、非常に簡単です。バンプやゴーゴー等のステップを組み合わせてもよく、様々なヴァリエーション・ステップで楽しく踊ってください。」とかいてあり、コモドアーズの「The Bump」やヴァン・マッコイの「(Do)the HUSTLE」なども参考に自分で「かたい事言わずに 踊りゃんせ」ということになっていて、マニュアルのようでいてマニュアルでない、ナイアガラ流解説でした。



蝶が舞う(2番)

ようやく2番の深読みに。今日の次は明日。当たり前のようでいて、なかなか気づかない。タコウエな発想です。
「ごはん」から「味噌汁」へはなんとなくわかりますが、この蝶はどこから飛んできたのでしょうか。

ハアー 明日も元気だ 味噌汁美味い お椀持つ手にゃヨー チョイト蝶が飛ぶ♪


外国曲「ちょうちょう」からの発想なのか、やっぱり音頭からなのか。例えば「伊勢音頭」の「“蝶”よ花よと育てた娘 今日は 晴れての御嫁入り」みたいなところからなのか、花札で、「牡丹に“蝶“」というようなところからの発想なのか、それとも三波春夫や当時の歌謡曲でそういう歌詞の歌があったのか勉強不足で分かりません。モハメド・アリのような華麗なステップで踊ってもらうことをイメージしたのかとも思いましたが、それだと歌詞が「蝶が舞う」となるのかな、など決定打が出ません。
今のところ、僕としては、割と単純に森進一の「花と蝶」の2番の歌詞「花が咲くとき 蝶が飛ぶ 蝶が死ぬとき 花が散る」から来ているんじゃないかなと二ラんでいますが、いかがでしょうか?「各自で」ご検討をお願いします。

ナイアガラ音頭で 踊りゃんせ ダンス・トゥ・ザ・ナイアガラ ミュージック
ダンス・トゥ・ザ・ミュージック ナイアガラ


「ダンス・トゥ・ザ〜♪」で英語になった途端に入るエレキベースがカッコイイです。洋の楽器をフィーチャーすることで、音の上でも「ダンス」を支えてます。ここが(2)のシングルではあまり目立たないところです。そして、最後にミュージックとナイアガラを入れ替えることで歌った時のまろやかさが違うというか、ナイアガラで締りが出ているように感じます。



チョイトハエ止まる(3番)

続いて3番。
日本の夏といえば、蚊のような気もしますが、ここではなぜ、ハエが登場したのでしょうか。僕の深読みは、音頭は踊りなので、踊につながる何かを持って来ようと思い、思索した結果、2番の蝶(バタフライ)→バタフライ(スイミング)→スイム(踊)→フライ(踊)ですが、どうでしょうか。

ハアー 明後日も元気だ 沢庵美味い 楊枝持つ手にゃヨー チョイトハエ止まる



少し関連ですが、映画『ブルースブラザーズ』(1980)の中で、レイ・チャールズがカヴァーしている「Shake Your Tail Feather」(オリジナルは1963年The Five Du-Tones)、ツイストに、フライ、スイム、バード、ダック、モンキー、ワツシ、マッシュポテトなどの踊りが出ており、それぞれそれなりに認知されていたのだと思います。オリジナルではFlea(ノミ)だったところが、Flyに変更されています。
注目すべきは、ハエ止まるのところで、ドラムがドタドタドコドっと、ハエが止まった音響までやっているところです。で、最後になんだかんだ言わずに踊りゃんせ」の前にまた、「ダカダカダカダカ」とドラムの連打が入ります。これは、たぶん、音頭を踊って、ハエが撃退された効果音じゃないかなと思っています。

音に戻りますが、最後に「ジャラジャジャーン」と終わる間際に、箸で御飯茶碗を「チン!」と1回叩く音が入っているのですが、映画『長屋紳士録』の「のぞきからくり」の唄を彷彿とさせられるようで、結構好きです。


ナイアガラR&R音頭(ライブバージョン)

NHK-FM でかかった大滝詠一の「メイキング・オブ・イエロー・サブマリン音頭」 (1984.6.22)は「音頭」について大瀧さんの足跡をたどる番組構成となっていました。よくきいてみると、ここでは今まで聞いたことがない音頭曲を聴くことができました。
1978年7月コンサートで「ナイアガラ音頭」のロックンロール・バージョン「ナイアガラR&R音頭」を、早いテンポのロックサウンドにあわせてを熱唱しています。まだはっぴいえんどの「かくれんぼ」を歌った時のようなロッカーの片りんをみせつけられます。

ただし、歌詞がチョトちがいますゾ(^_^)。


「ナイアガラR&R音頭」
Yeah! Yeah! Yeah! Yeah! Yeah〜!
Wow! Wow! Wow! Wow! Wow〜!!
今日も元気だ トースト美味い  ナイフ持つ手にゃヨー 咲くフラワーよ
オンドでロックンロール、踊りゃんせ(⋆)
かたい事言わずに踊りゃんせ
 かた事言わずに踊りゃんせ
⋆「踊れ ロックンロール」の異論あり。


本曲は『大滝詠一 NOVELTY SONG BOOK』に収録されました(2023.3.21追記)


レッツ・オンド・アゲン(英語バージョン)

さて1978年7月にロックンロール(ナイアガラ)音頭を歌った後、この歌はさらに進化をしていきます。9月には作っている最中というアナウンスがありました。


ゴーゴーナイアガラ
第172回「お座敷ソング」(1978.09.25)

「九ちゃん音頭」が終わり、「オンドー」の声が。

さて、最後になぜかみんな音頭になってしまいましたが、「ナイアガラ音頭」を時間の続く限りかけてみようと思います。

「ナイアガラ音頭(シングルバージョン):ハイかんそー」

さて、3年と3か月間続いてまいりました、「ゴー・ゴー・ナイアガラ」も、今回の173回目「お座敷ソングスペシャル」をもちまして終了することになりました。
長い間のご愛聴まことにありがとうございました。それではまた逢う日まで、お目にかかる日まで。いつお目にかかれるかわかりませんが(^_^;)。

現在は、「レッツ・オンド・アゲン」というアルバムを作っておりまして、11月25日発売の予定でございます。その後、1年間ぐらいはレコードを出さないでブラブラしていようと考えております。
「レッツ・オンド・アゲン」期待して聞いていただく思います。
それでは、またいつの日か、バイバイ

「ダンス―・トゥー・ザ・ミュージック・ナイアガラ〜♪(フェードアウト)」



そして、ゴーゴーナイアガラのリスナー(論寒芸男さん)からの提案で「音頭よ もう一度」ということで作った曲、出来た曲の題名は英語で、曲のなかには「ナイアガラ音頭」の一節が英語として、入っていました。

「Let's Ondo Again」(一部)
1番
Today I'm fine, nice taste rice, chopstick having hand flower bloom, yoi yoi yoi
Niagara Ondo de dance dance dance, Don't say nothin hard, dance dance dance (one more time) Don't say nothing hard, dance dance dance

2番
Tomorrow I'll be fine, nice taste miso-soup, cup having hand butterfly fly, yoi, yasae, enyasano dokkoisho

3番
The day after tomorrow, nice taste takuan, tooth-pick having hand just fly stop, yoi yoi yoi
Niagara Ondo de dance dance dance, Don't say nanda-kanda dance dance dance
Niagara Ondo de dance dance dance, Don't say kanda-nanda dance dance dance
Niagara Ondo de dance dance dance, Don't say nanda-kanda dance dance dance


ある本のなかにこんなセリフがありました。
「古いしきたりの中の自分、民族的な血と歴史をもつ自分を捨てなければ、日本人には西欧的な自己はもちえません。でも、日本においては、日本を否定することこそ、もっとも日本的なことなのです。日本という国の文化も、いつもそのようにして育ってきました。だから文化的であろうとする日本人は、つねに日本のなかでひどく孤独になるのです」
山川方夫「ジャンの新盆」


ライブバージョンで「咲くフラワーヨ」と英語交じりだった日本語は、英語バージョンで「flower bloom」となり、明後日は元気かどうか省かれました。ナンダカンダがカンダナンダに変化したり、日本語自体も変わっています。このセルフカバーの変遷に洋と邦の文化、音と韻という歌の持つ力を常に考えて、孤独な戦いを続けていた大瀧さんらしい色々な思いを感じます。今は、上の世代から伝えられた文化の蓄積を感じながら、昔の音楽も、現在進行形の音楽も、日本の音楽も、海外の音楽も同じように楽しむ。こんな21世紀型の“モダンで乙な”音楽とのつきあい方が出来る時代です。

いまだに大滝さんのいない風景にはなかなか慣れることができませんが、自ら「音頭」をとって踊っていくというとカッコよすぎですが、「波を見てくるわって ビーチに消えた 君を探しに独り歩き出す」努力をしたいと思っています。



最後に一句。

この滝はいつか来た滝
ああそうだよ
ナイアガラの花が咲いている。
霧の中に うかびくる
やさしい影 盆踊り


(霧の中のトニー谷)

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