2014.09.21
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Mull of Kintyre
Paul McCartney and Wings
Single (1977)
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スコットランドの独立を問う住民投票(2014年9月18日)の行方を気にしていました。あのおとなしい(と思われる)スコットランド人が英国から離れる声を上げたことに驚きました。現在、世界各地で国家や民族や宗教をめぐる紛争が起きていますが、彼らは彼らのやり方で国のありかたを議論したのです。
1977年暮れの Wings すなわち Paul McCartney の大ヒットシングル曲「Mull of Kintyre(夢の旅人)」を取り上げます。キンタイアとはスコットランド南西に長く突き出した半島で、マルとはゲール語で岬を意味します。キンタイアはおおざっぱに言うとブリテン島の北から3分の1の所に位置します。リバプールは南から3分の1くらい。
Mull of Kintyre, oh mist rolling in from the sea
My desire is always to be here
Oh Mull of Kintyre
「海霧が巻き寄せてくる」とあります。2番の歌詞には「鹿のように草原をかき分け」ともある。これはぼくの大好きな釧路というか厚岸ではないか。
ポールは三拍子のアコースティックギターにのせて、スコットランドの地方への愛を歌います。ポール先生はビートルズ末期にスコットランドの農場を手に入れ、そこでリンダとの生活をスタートさせました。ロンドンやビートルとしての喧噪を逃れ、毎夏を過ごしていたそうです(ジョンは軽井沢でしたが)。その農場「ハイ・パーク」がキンタイア半島にあります。ソロデビューの『McCartney』や二作目『Ram』の関連する数々の写真や、レコーディング時の生活基盤がここにあったといいます。ポール自身はマル・オブ・キンタイアは突端の岬などの特定の場所ではなく、キンタイア一帯を考えていたようです。
この曲を特徴づけるのがバグパイプ。キンタイア地元の21名のバグパイプバンドのメンバーが録音に呼ばれました。ルート音が途切れなく鳴らされながら、装飾的な旋律が彩ります。面白いのはこの楽器の高音域で、間奏の最高音ではパイプ全員で音がひっくり返りそうになるところ。高さはハイAくらいですが、これが標準的なバグパイプの限界音域なのでしょうか。ちょっと人間くささがあります。
しかしバグパイプは郷愁を感じる一方で音が馬鹿でかい楽器です。これはバグパイプが戦争で使われていたことと関係がありそうです。かつて戦闘の最前線でこの楽器が使われていたといい、現在でも英国軍はバグパイプを従軍させているそうです。スコットランドはイングランドとも事を構えていた歴史を持つので、バグパイプを英国が使うことにも色々な意味が見いだせます。キンタイアはスコットランド王朝の起源となったスコット人が1500年ほど前にアイルランドから渡ってきた地ともいい、バグパイプの起源もその時代のようです。独立の投票は賛成45%反対55%で否決。投票率は85%でした。対立と融和が冷静な議論を通じて行われる、とても勉強になる出来事でした。ポールは「Stay Together」を表明していましたが、どのような感想を持っているでしょうか。
スコットランドには我々日本人の琴線にふれる音楽が多くあります。「夢の旅人」も日本でしっかりヒットしていました。ぎんざNOWでせんだみつおが「マル・オブ・キンタ○」と連呼していたとかいうどうでもいいことを時々思い出します。ポールはこの曲をスコットランドにゆかりのある地を中心に時々取り上げています。私は中止になったこの5月の公演で「夢の旅人」を期待していました(夕暮れの国立競技場の Mull of Kintyre...)。期待される再来日公演を待ちましょう。
今日の1曲
(たかはしかつみ)