2014.10.05
 Silence Is Golden Silence Is Golden
The Tremeloes

AUDIO WITH A G: Sounds Of A Jersey Boy, The Music Of Bob Gaudio (1967)

2006年にトニー賞を受賞し世界的なヒットとなったブロードウェイ・ミュージカルの『ジャージー・ボーイズ』。名匠クリント・イーストウッド監督の手で映画化され、日本でも大変な話題になっています。
アメリカン・ショービズ界の“大立者”The Four Seasonsの光と影を描いたこの映画。ニュージャージーの決して裕福とは言えない若者たちの立身出世ストーリーを光として、サクセス・ストーリーにまつわるスキャンダルと挫折を影として・・・。光が強ければ強いほど影も濃くなる。光よりもとりわけ影のほうに独特の深みを持たせるクリント・イーストウッドらしく、音楽以外にあまり知られていなかった挿話を横軸として描くことで物語は群像劇として成立していきます。そしてクリント・イーストウッドらしいオプティミズムがスパイスされていることもあって、映画を見た後にスッと胸のすく思いが残ります。

主人公のFrankie Valliにまつわるストーリーをはじめとして
“ニューヨークの伊達男”
プロデューサーのBob Creweの際立った存在感(じつはもっとすごい人だったのではないか・・・笑)などは、エンターテイメントとして外せない要素ですが、登場人物のうち地味ながら重要な役割を果たしていたのがBob Gaudioでした。
勿論、Four Seasonsのなかで大半のヒット曲を作曲し、音楽的に彼が重要なポジションであったことに間違いはありません。彼がわずか15分で書き上げたという「Sherry」なしにその後のFour Seasonsの成功はなかったし、映画の最後でも彼はその矜持を垣間見せています。しかしそのことが逆にたぐいまれな才能を持つリード・ヴォーカリストの陰にあった彼の立ち位置を示していたと言えなくもないのではないか、映画を見ながらそんな風に思いました。

Bob Gaudioという人のことについて、グループのヒット曲を書いていた人ということ以外にあまり多くのことを知りませんでした。Frankie Valliがエンターテイナーとして今日までステージに立ち続ける存在であるのに対して、Bob Gaudioがある時期から裏方として作曲やスタジオワークに専念していたということもあるかもしれません。

映画では、そんな彼がFrankie Valliのよき友人としてまた理解者として重要な役割を果たしています。毀誉褒貶の激しい芸能界にあって、クールなプロの作曲家としての一面が長く彼らを友人として、ビジネスパートナーとして結びつけてきたのではないかとも思いました。そう考えると、この『ジャージー・ボーイズ』はサイドストーリーとして実はBob Gaudioの物語であったのかもしれない。

Frankie Valliの陰に隠れて地味な存在のBob Gaudioですが、映画に合わせてそんな彼にフォーカスした作品集が出ています。彼の業績を讃える充実した内容。映画をBob Gaudio視点で観ていた僕のためにあるようなCD(自画自賛 笑)。

Bob GaudioはFour SeasonsやFrankie Valliのソロでも数多くの名曲を残してきましたが、それ以外にも彼の作品は数多くの人に歌われています。そうした作品もこのCDには収められています。

「Silence is Golden」はFour Seasonsの1964年のシングル「Rag Doll」のB面に収められています。「Rag Doll」が全米1位を獲得したことで、B面のこの曲は彼らの曲としては地味な存在ですが、その後67年にThe Tremeloesがカヴァーし全英1位を獲得する大ヒットとなりました。このアルバムにもTremeloesのテイクが収められていますし、僕がこの曲を初めて聴いたのも彼らのテイクでした。

「Sherry」や「Big Girls Don’t Cry」のようなラテンフレーバー溢れる初期のヒット曲もあれば「The Sun Ain’t Gonna Shine(Anymore)」や「Can’t Take My Eyes Off You」のようなスケールのある曲も書ける。そんな中にあってこの美しいバラードはBob Gaudioの作曲家としての多彩な才能を感じる佳曲です。

Lennon-McCartneyがBeatlesのアイコンであるならば、Bob GaudioもThe Four Seasonsを世界的なスターにした立役者。そして素敵な作品の数々で僕たちの世界を豊かにしてくれた素晴らしい音楽家。もう少し評価されてもいいのになあ。

今日の1曲


(Kazumasa Wakimoto)




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