2014.11.01 竹内まりや 33年ぶりの全国ツアー記念
souvenir again 2010.12.22 大阪城ホール souvenir again 2010.12.22 大阪城ホール
竹内まりや

Mariya Takeuchi Live (2010)

「でもAKBには負けないからね!」・・・笑いが拡がったところで、会場の空気が一挙に柔らかく和んでいくのを感じた。

竹内まりやの10年ぶりのコンサートの最終日。大阪城ホールは本当に竹内まりやがステージに立つのか?、本当に歌うのか?といった半信半疑、期待と不安がない交ぜになった緊張感に支配されていた。いやいや大げさでも何でもなくまるでツチノコでも探しに来たように(笑)。観客の何割かは初めて彼女の歌う姿に接しているはずだし、それ以外の客席のほとんどが10年ぶりのライブに立ち会うわけで非日常中の非日常。どこかよそ行きの雰囲気が漂っているのも無理はない。かく言う僕だって恐ろしくドキドキしながら見守っていたのだ。

冒頭のくだりは「マーケティング調査」と題して拍手でオーディエンスの年齢層を十年代ごとに区切って調べていた時のもの。10代の観客に「親御さんに付き合わされて来たんだよね。本当はAKBを見に行きたいのにね」に続くコメント。各世代ごとに彼女の印象的なコメントが続く。40代に向けて「今一番大変な世代だと思います」、50代には「同じ時代を生きてきた同士」、70代には「ジョン・レノンも生きていれば今年70歳、言わばロックンロールを生み出した世代」と。これらのコメントは間違いなく「人生の扉」に連なっていく。このコンサートは"10年"というセンテンスが隠れたテーマになっていたのだと思う。竹内まりやの10年ぶりのコンサート。各世代ごとに向けられたメッセージ。

10年というのは長くもあり、短くもある。10年という時間の経過は人生において何かが大きく変わることもあれば、ベーシックな部分においてはさほど変わることのない時間の流れでもある。変わっていくもの普遍的なもの・・・。そして寧ろ僕たちは変わらない竹内まりやと変わらなかった自分たちに意を強くしたのではないか。

10年前の彼女のコンサートに立ち会った多くのファンはもう10年も経つのかという感慨とともに、あっという間の10年だったな、と思ったに違いない。この10年をどう過ごしてきたかということに思いを馳せながら、彼女の変わらない歌声に身を委ねていくと、次第にそれはこれからの10年が実り多いものになっていくといいな、という希望へと昇華していく。メッセージは確実に僕たちに届く。アンコールに「M」の真っ赤なセーターを着た彼女が颯爽と現れた時に僕たちの希望はすでに会場をひとつに束ねていた。ライブの展開は見事にそうした僕たちの希望をすくい取ってくれていたようだ。

この閉塞感の漂う時代に、でも生きていくことは、歳を重ねていくことは決して悪くないなと思うのだ。誰もが幸せそうな上気した顔で会場を後にするのを見ながら、僕はそう思った。

だから僕たちは竹内まりやを聴く。10年後もまた同じ笑顔でここに集うために。

(Kazumasa Wakimoto)




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