2015.01.18
I Didn't Know What Time It Was I Didn't Know What Time It Was
Stan Getz & Gerry Mulligan

Getz Meets Mulligan In Hi-Fi (1957 )

 寒い毎日が続いています。真冬の暖かい部屋で聴く音楽、時にはジャズはいかがでしょうか。サックス奏者の共演で心の中を暖めるのはどうでしょうか。
 私のCDの棚でジャズを見ると、圧倒的にサックス奏者の作品が目につきます。ジャズを聴き始めたとき、入門者がたどるように、テナー・サックスの John Coltrane やアルト・サックスの Eric Dolphy といったサックス奏者のCDを買い求め、聴く時間を過ごしました。その中で、きょう紹介する二人のサックス奏者、テナー・サックスの Stan Getz とバリトン・サックスの Gerry Mulligan は私のお気に入りのプレイヤーです。
 このアルバムは、小粋で面白い趣向のアルバムとしてジャズ・ファンには知られた1枚です。アナログ盤のA面ではお互いの持ち楽器を交換して演奏し(テナーは Mulligan、バリトンは Getz)、B面ではそれぞれ自分の持ち楽器で演奏する(テナーは Getz、バリトンは Mulligan)という楽しいセッションのアルバムとなっています。因みに、ライナー・ノーツによると、持ち楽器の交換は Mulligan が提案したそうです。
 「I Didn't know What Time It Was」は、有名な作詞家・作曲家コンビの Richard Rodgers-Lorenz Hart の作品で、数々の歌手、ミュージシャンが歌い、演奏しているスタンダード・ナンバーのひとつです。CD化(1991年)の際に追加されたこの曲はそれぞれの持ち楽器で演奏されます。
 出だしの Getz が吹く主旋律のハスキーがかったテナー・サックスの音から、それに並走するように、Mulligan のバリトン・サックスがゆったりと演奏されます。サックスの音の違いはありますが、一枚の布を織りあげるような、サックス奏者の職人芸を見る思いを抱かせます。
 Getz の柔らかでハスキーなテナーの音に対して、Mulligan は、バリトン・サックスという、どちらかというとサックスの中であまり日の当たらない楽器に独自のメロディ楽器として光をあて、テナーに拮抗する音の味わいを感じさせます。
 加えて、二人のサックスの音色を支える Lou Levy のピアノ、Ray Brown のベース、Stan Levey のドラムがとてもいい塩梅なんです。


今日の1曲


(伊東 潔)




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