駆け出しの音楽家だった Jimmy Webb、5th で輝く
2015.02.12
Carpet Man
The 5th Dimension
The Magic Garden (1967)
Johnny Riversは自らが立ち上げた”Soul City”というレーベルで、売り出し中のThe 5th Dimensionのデビュー・アルバムに作曲家、アレンジャー&コンダクターとして彼を迎え入れました。
このアルバムでJimmyはゴキゲンなジャンプ・ナンバー「Up,Up And Away (ビートでジャンプ) 」をトップ10に入るヒットに導き、一躍有名になります。
The 5th Dimensionは男性3人、女性2人からなる混声のコーラスグループでロサンゼルスを中心にクラブなどで活動していたところ、Johnny Rivers の目に留まり66年に”Soul City”からデビューします。3曲目のシングルとして発表されたのが「Up,Up And Away」でこれが彼らにとっての最初のメガヒットとなります。
時代はまさに“サマー・オブ・ラブ”。ヒッピー文化の真っただ中にあって気球に乗ってどこまでも上昇していくような高揚感が時代の空気にマッチしていたのではないでしょうか。
このヒットに気を良くしたJohnny Riversは彼らの次作『The Magic Garden』の作曲・編曲・コンダクターとして全面的にJimmyを起用します。プロデューサーはJohnny Riversのレコーディングにも関わっていたBones Howe。The Associationなどを手掛けていたプロデューサーです。
しかし実際にはJimmy WebbとBones Howeとの共同プロデュースに近い形だったのではないでしょうか。
なぜならば作曲した彼自身がアルバムのコンセプトや雰囲気を主導していたのではないかと思うからです。実際Richard Harris の『A Tramp Shining』や Thelma Houstonの『Sunshower』でも彼はプロデューサーとしてクレジットされており、このアルバムではJimmyのキャリアが浅かったためにJohnny Rivers がBones Howeを後見人として付けたのではないか、そんなふうに想像しています。
アルバムのインナーにはThe 5th DimensionのメンバーとBones Howe、Jimmy Webbが和やかに談笑する写真が収められています。
バックを支えるのはHal Blaine (Dr.) 、Larry Knechtel (Key) 、Joe Osborne (B) 、Mike Deasy (G) 、Tommy Tedesco (G) 、Dennis Budimir (G) らThe Wrecking Crewの面々。リズムセクションはさすがに的確で安定感があります。さらにホーンやストリングスを贅沢に配したアレンジが際立っており、そこにのびやかに拡がっていく混声コーラスが心地よく展開されます。
Jimmy Webbのプロデューサーとしての最初の作品となった本作は意欲的なアルバムとなりました。Jimmy によるアイデアが満載されたコンセプト・アルバムで、プロローグとエピローグに挟まれた楽曲はThe Beatlesの「Ticket to Ride」を除いてすべて彼の作品。彼の作家的野心が垣間見られます。まるでミュージカルや映画のサウンド・トラックのような流麗でリリックな構成は、もしかすると彼は映画音楽の世界で活躍することを夢見ていたのかもしれないとさえ思います。「Up,Up And Away」の流れをくむ「Carpet Man」や「The Magic Garden」をはじめとする弾けるようなサウンドと溌剌としたコーラスワーク、そして美しく流麗なメロディは秀逸です。
後にJimmy Webbはオリジナル・メンバーとしては最後となる、75年に発表された『Earthbound』というアルバムで再度彼らのアルバムをプロデュースします。西海岸の名手たちをバックに録音されたこれもトータル・アルバムでソウル寄りの作品でしたが、気球が着地したともとれるアルバム・タイトル通りアルバム全体としては今一つ精彩を欠いた内容で、この『The Magic Garden』を超えるものではありませんでした。ちょっとオーバー・プロデュース気味かな (笑) 。
いずれにせよThe 5th Dimensionはしっかりとした実力のあるグループで、駆け出しの音楽家だったJimmy Webbを磨き、貴重な体験の場を与えてくれたことは言うまでもありません。
今日の1曲
(Kazumasa Wakimoto)