2015.05.10
Hope For The Future Hope For The Future
Paul McCartney

Single (2014)

Paul McCartney の日本公演から1週間ほどたちましたが、いやはや楽しかった。今までの来日で一番楽しかったですよ。武道館が話題となりましたが、私が一番好きな武道館のエピソードはサイクリング。ポール先生は武道館の2日後(←3日後まで日本にいた ^_^)自転車で武道館を再訪して、他人のコンサートの仕込みに潜り込んで記念撮影まで。そういうことするからお医者様のお世話になるんだから(笑い)。

いまの Paul McCartney の何がいいのかというと、Beatles を Wings を自然に演じられていること。 Paul McCartney が Paul McCartney に自然になれる境地に達したのではないかと思います。ポールがポールでそれがどうしたといわれるかもしれませんが、ここまで来るのは長かった。70年代はビートルズの影と戦い、80年代はジョンの喪失にもがき、90年代はリンダを失い・・・、2000年に入り再婚もうまく行かず・・・

ポールといえどもビートルズを演じるのは楽でない、ポールは常に何かと格闘していました。それが、演じるのでなく自然にやるだけでいい、まさに「Let It Be」に達したのが70歳を超えたポール先生なのではないでしょうか。ああ見えてもポールは気を遣う方で、ポップを演るとロックがないブルーズがないといわれ、複雑な曲を書くと打算的といわれ、一方 素で振る舞うとジョンにからかわれ・・・。そういうことに実は振り回されていたのではないかと思います。かつて萩原健太さんが「ポールを悪くいうな」と冗談めかして言っていたのもようやく記憶の彼方になりました。

音源として残されたライブパフォーマンスを聴いても同じことを思います。演奏に力みが消え、選曲もある種のこだわりがとれ、ちなみに高音も今の方が楽に出しています。バンドの演奏能力(15年一緒にやっている)とサウンドエフェクトの技術向上も大きな要因でしょうか。バンドもビートルズサウンドが血肉となっている。50年前の同じギターを使っている「Paperback Writer」や、今回リスト入りした「Being For The Benefit Of Mr. Kite!」なんてここまでできるの!と。技術的課題はプロジェクト全体でかなり解決されている。

今回よかったもう一つの理由は、観客が良かった。もともとポールの観客は熱意が高くて、年齢高いのによく歌ったりする(高いから歌うのか?)のですが、今回のスタジアムでの歓迎感は圧倒的。去年の病気中止がとてもいい方に出ていたと思います。(「カエッテキタヨ、ユウゲンジッコウ」って去年すっぽかしといて有言実行もないでしょう先生!)またニューアルバム『NEW』が観客の耳になじんできたのもよかったこと。一昨年日本公演ではあったリリース直後で新曲の?感もありませんでした。さらには武道館ブームにメディアが乗っかって、報道が大きかったのも心地よかったですね、主催者側は武道館公演を売り切るのに最後まで苦労していましたが。翌日のNHKニュースが日米首脳会談とネパール大地震とポールの武道館だったそう。


今日の1曲


今日の1曲は、昨年末 2014年12月にリリースされた新曲「Hope For The Future」。大阪で「セカイハツコウカイ」とポールの紹介。単純で力強い旋律と、とても前向きな歌詞を持ちます。プロデュースは Giles Martin。音はかなり分厚い作りになっています。アコースティックギターから大オーケストラへと音が重なり、エレキギターと管弦楽のユニゾン間奏とか、かなり湿っぽいエコーのドラムとか、父 George Martin 風というよりは Phil Spector。音場や声の感じの類似性から、ドームの追体験として私はこればかり聴いています。なおこの曲は当初ダウンロードだけで発売され、1月に入って12インチシングルが発売されました。日本盤が発売されなかったため、日本のユニバーサルミュージックの公式ページにも「価格 : オープン・プライス」との記載。CDは発売されませんでした。ポールの音源ですら従来の接し方ができなくなってきています。しかしこれアナログ盤できくと気持ちいいですよ。




OUT THERE TOUR 2015 JAPAN SET LIST
21 Apr Kyocera Dome, Osaka. 23 25 27 Apr Tokyo Dome.

  1. Magical Mystery Tour (or Eight Days A Week)
  2. Save Us
  3. Can't Buy Me Love (or All My Loving)
  4. Jet (or Listen To What The Man Said)
  5. Let Me Roll It
  6. Paperback Writer
  7. My Valentine
  8. Nineteen Hundred And Eighty Five
  9. The Long And Winding Road
  10. Maybe I'm Amazed
  11. I've Just Seen A Face
  12. We Can Work It Out
  13. Another Day
  14. Hope For The Future
  15. And I Love Her
  16. Blackbird
  17. Here Today
  18. New
  19. Queenie Eye
  20. Lady Madonna
  21. All Together Now
  22. Lovely Rita
  23. Eleanor Rigby
  24. Being For The Benefit Of Mr. Kite!
  25. Something
  26. Ob-La-Di, Ob-La-Da
  27. Band On The Run
  28. Back In The U.S.S.R.
  29. Let It Be
  30. Live And Let Die
  31. Hey Jude

  32. Day Tripper
  33. Hi, Hi, Hi
  34. I Saw Her Standing There (or Can't Buy Me Love)

  35. Yesterday
  36. Helter Skelter
  37. Golden Slumbers / Carry That Weight / The End


簡単に曲目紹介を。

開演前はツアー専属 DJ Chris Holmes によるポールのリミックスが流れます。ここで聴けます

オープニングチューンは「Magical Mystery Tour」、日により「Eight Days a Week」。最初の4曲はポールらしいポップチューン。2曲目に新曲の「Save Us」が必ず演奏されていて、このマイナーチューンは演奏しやすそう。

4曲目は鉄板の「Let Me Roll It」。気がつくとポールは20年以上このブルース曲を外したことがありません。「Paperback Writer」と続けて演奏に無理がない。

7曲目、既に古典性を獲得したかの「My Valentine」(わずか3年前の曲)を皮切りにピアノに座っての演奏。前半のハイライトになった「The Long And Winding Road」〜「Maybe I'm Amazed」の叙情性。

続いて60年代の曲を続けて14曲目は新曲「Hope For The Future」。ドームでは「トウキョウハツコウカイ」。

16曲目「Black Bird」〜「Here Today」は一人で弾き語りの静寂。

続いて新曲2曲とビートルズのポップな曲からサージェントの再現まで違和感なく続け(18-24曲目)、フィナーレへ導入する「Somethig」や「Band On The Run」の楽曲構成の見事さ。

ラストはアリーナ中程まで爆風が来る「Live And Let Die」と、とてもとても自然な「Hey Jude」。そして「Golden Slumbers メドレー」まで続くアンコール。全37曲、2時間40分通した真摯な演奏。

ポールはツアーで、選曲をほとんどいじりません。曲のキーもアレンジもいじらず、アドリブもしません。おまけにステージギャグまで毎日一緒。これだけワンパターンでありながら、なぜ毎回毎回ポールのコンサートに行ってしまうのか?それはポールのパフォーマンスに引き込まれるから。毎回毎回、同じ曲を同じように演奏し、同じように曲に入っていく。ポールが曲を純粋に楽しんでいる。それを観ると、あたかもその曲の誕生に立ち会っているように感じてしまうのです。ポールとバンド全体のオートマティズムがそうさせます。

東京ドームはこれで通算18公演となりました。すっかりポールの聖地です。





BUDOKAN 2015 SET LIST
28 Apr Budokan, Tokyo

  1. Can't Buy Me Love
  2. Save Us
  3. All My Loving
  4. One After 909
  5. Let Me Roll It
  6. Paperback Writer
  7. My Valentine
  8. Nineteen Hundred And Eighty Five
  9. Maybe I'm Amazed
  10. I've Just Seen A Face
  11. Another Day
  12. Dance Tonight
  13. We Can Work It Out
  14. And I Love Her
  15. Blackbird
  16. New
  17. Lady Madonna
  18. Another Girl
  19. Got To Get You Into My Life
  20. Being For The Benefit Of Mr. Kite!
  21. Ob-La-Di, Ob-La-Da
  22. Back In The U.S.S.R.
  23. Let It Be
  24. Live And Let Die
  25. Hey Jude

  26. Yesterday
  27. Birthday
  28. Golden Slumbers / Carry That Weight / The End


武道館も少々。

武道館コンサートは Out There Tour の一環というよりは、ポールが時々行う Special Concert の一つとみた方がよさそう。セットの骨格はツアーと同じですが、14曲けずってレア曲追加の2時間コース。追加は「One After 909」「Dance Tonight」「Another Girl」「Got To Get You Into My Life」「Birthday」の5曲。「Another Girl」は「セカイハツコウカイ」の大サービスで大盛り上がり。「Dance Tonight」は07年発表で日本へのミッシングリンクの解消。外したのは、ジョンのため曲とジョージのため曲は外して、ナンシーのため曲とリンダのため曲を残したのは ある種の納得感:)「1985」を残して「Band On The Run」を外したのはかなり大胆。ステージも客席もドームから武道館に移動してきているので、ライブハウスを感じました。互いの期待と気合いがぶつかるレスポンス。そんなの初めて。


ポール・マッカートニー大先生、チョーサイコー、ゼッコウチョーでした。また来てください。日本のファンはずっとお待ちしています。

(たかはしかつみ)




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