2015.07.10 - Star Song Special
Stairway To The Stars Stairway To The Stars
Sarah Vaughan

At Mister Kelly's (1957)

 邦題「星へのきざはし」。「星へのきざはし」という邦題が良くありませんか。原題の「Stairway To The Stars」は、直訳すれば「星への階段」になります。しかし、これを「星へのきざはし」とつけた御仁が洒落て、粋な邦題をつけてくれたものです。さて、私のような凡人でも月や星にはロマンティックな想いを馳せる気持ちになる時もちょびっとあります。まくらはこのくらいにします。

 この「Stairway To The Stars」という歌は、元々は Matt Malneck と Frank Signorelli の作った「Park Avenue Fantasy」というダンス音楽でして、Paul Whiteman や Glen Miller のビッグバンドがダンス・ホールで演奏していたものです。映画ファンには、ビリー・ワイルダー監督のコメディ映画の傑作の「お熱いのがお好き」の中で使われ、お耳馴染みかもしれません。その後「Stardust」ほかの作詞家 Mitchell Parish が1952年に詞を付けて、「Stairway To The Stars」の題名で歌われるようになったスタンダード・ナンバーと言えます。

 この歌は、女性ジャズ歌手の Ella Fitzgerald 他の歌唱で知られていますが、私はなんといっても同じ女性ジャズ歌手の Sarah Vaughan の歌をおすすめしたい。
 1958年、33歳(女性にお歳は失礼)の時に、Jimmy Jones のピアノ、Richard Davis の Bass、Roy Haynes のドラムスのトリオをバックに歌ったシカゴのナイトクラブ(ジャズクラブ?)を収録したライブ盤の「At Mister Kelly's」の中で歌われています。

 彼女の歌唱の魅力は、高音、低音、それぞれに安定感があり、そして、柔らかなビブラートにあります。
 そういうと、彼女の歌が技巧派のように受け取られますが、彼女の歌の表現力は、スウィングする歌でもバラードでも技巧だけでは表現しえないものを聴く者に強く感じさせます。それらの魅力を嫌みのない自然体で歌う彼女のヴォーカル・スタイルは女性ジャズ歌手の御三家と言われてる Ella, Billie Holiday とは違う色合いを歌に滲ませています。
 このバラードでもその歌唱の魅力がじわじわと聴く者の心の中に響いてきます。

 「Let's Build A Stairway To The Stars / And Climb That Stairway To The Stars / With Love Besides Us To Fill The Night With Song」

の歌いだしから、二人の夢の中で星、月へ想い、そして天国へまで馳せる歌詞。ひとつひとつの言葉をかみしめ、歌のイメージ、世界を柔らかく歌い上げる Sarah Vaughan の歌唱は何回、耳にしても素晴らしいです。彼女の話がメインになりましたが、夜空の星を見ながら聴くにはいい歌だと思います。

今日の1曲


(伊東 潔)




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