2015.07.16
Passing By Passing By
The Beach Boys

Friends (1968)

梅雨寒だなと思っていたら、晴れた途端に一気に猛暑がやってきました。何というか中庸がないというか、息をつかせぬ極端な天候の展開に面喰っています。これも温暖化の影響なのでしょうか。ここ最近の夏は本当に過酷です。

そんな昼下がりに照り返しの熱風が吹いている赤坂の街を歩いていました。アスファルトの道路とコンクリートのビルに囲まれた都心はまさに“Summer in the City”。あまりの暑さについカフェに逃げ込んでしまいました。
店に入るとこの曲が耳に飛び込んできました。街角で知っている曲が流れてくるとちょっと嬉しくなりませんか。

The Beach Boysのインストゥルメンタルの曲「Passing By」。この曲が数あるBeach Boysのインストの中でもとりわけ好きな一曲なので、「おっ」とばかりに耳を傾けてしまいました。でも、そのカフェで流れていたのがなんでこの曲だったのかちょっと不思議です。インストだしアルバムの、それも彼らのキャリアの中では比較的地味な『Friends』に収められている、シングルカットもされていない作品だったからです。BGMを選曲した人はどうしてこの曲を選んだのだろうと想像が膨らみます。

そういえば今年の夏Beach Boysを聴くのは初めてかもしれません。というかここのところしばらく彼らの曲を聴いていなかったと思うので、夏のスタートがBeach Boysというのが何だか嬉しくて、久しぶりに彼らのアルバムを引っ張り出して聴くことにしました。

いかにもBrian Wilsonらしい箱庭のような設えの曲で、彼自身のコーラスやオルガンを配したアレンジは『Pet Sounds』以降の作風そのもので彼の異端の才能ぶりが仄かに漂っています。
Beach Boysはキャリアの初期はほかのガレージ・バンドと同じようにギター・インストものをたくさんレコーディングしています。やがて、ブライアンがスタジオに籠って曲作りに専念するようになっていくにしたがって、そうした屈託のないサーフィンホットロッド・サウンドから離れて、内省的で複雑で実験的なメロディ進行を持つサウンドへと徐々に変化していきます。インスト曲も同様にブライアンのそうした内面の変化を反映したものになっていきます。

そうしたBeach Boysの一連のインスト曲だけを集めたコンピレーションが山下達郎氏の選曲で日本編集のCDとして出ています。このアルバム一枚でインストゥルメンタル曲という側面から彼らの歴史を辿ることができます。

カフェでたまたま聴いた「Passinng By」。とてもいいきっかけになったから今年の夏は久しぶりにBeach Boysをたくさん聴いてみようかな。シャワーのように。



今日の1曲


(Kazumasa Wakimoto)




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