2015.11.11
Hey Jude Hey Jude
The Beatles

The Beatles 1+ (2015)

 ビートルズの新譜?をまた買ってしまいました。2000年に発売されたベスト盤『The Beatles 1』に映像がついたものです。いろんなフォーマットが出ていますが、赤が1枚もの、黄色が2枚組、赤に青字が3枚組です。構成はベスト盤CD、映像DVD/BD、オマケ映像DVD/BDからの組み合わせ。余談ですが、このジャケットの色替えパロディーをドイツ・グラモフォンが5年ほど前に彼らの111周年記念でやっています(111枚組を出した (゚д゚)。グラモフォンの担当の方々は大喜びしてるんじゃないでしょうか。しかし、赤地に青字は気持ち悪いです、ポール先生の発案らしいけど。


11月11日記念
The Beatles 1 + Deutsche Grammophon 111


 ぼくは70年代の後半にビートルズを聞き始めたので、ビートルズ映像の飢餓時代。ほとんどビートルズの動くところを見たことがありませんでした。『ヤァ!ヤァ!ヤァ!』などはたまにテレビでやってたのですが、演奏映像はなかなか見れない。フイルム・コンサートなどと呼ばれた上映会に行ったりしました。中学のときに『The Beatles Greatest Story』という映像寄せ集めの映画があって(1978年)たんなる寄せ集めだったのですが、動くビートルズに深く感動しました。画面釘付けで動けなくなっちゃう感じ。それこそ有楽町スバル座とかでやったと思うのですが、あの映画は何だったんだろう。時が流れて、1995年には公式ドキュメンタリー『The Beatles Anthology』が鳴り物入りで編まれますが、曲は完奏されない短尺編集で、ちょっとがっかり。

 さて、深く感動していた映像の一つが「Hey Jude」。ポール先生の切々アップ、ジョンがエピフォン・カジノをかき鳴らす、お顔的にはこの頃のジョージが一番好き、リンゴもいる(あたりまえか)。『1+』のパッケージを開けて最初にヘイジューを見たのはいうまでもありません。ポールのどアップで始まるこの曲は、4人のシンプルな演奏を経て、後半のコーラスになだれ込みます。終盤はエキストラに呼ばれた300人の客にもみくちゃにされながら一緒にコーラスを歌います。

 しかしこの映像なんとなく記憶と違う。冒頭拾えてなかったはずのリンゴのタンバリンの音がする。音を上げたな、とこれについては思いました。しかし、出てくる人が微妙に違う。コーラスの入りでジョンが手をあげて「カモン」とシャウトなんてあったっけ?...これは私が知らなかっただけで「ヘイジュード」は数テイク撮影されていて、出回ったビデオも3種類は公式にあるとのこと。それもそのはず、DVD/BDのオマケの方にも「ヘイジュード」の別バージョンが収録されていました。こっちの方がわたしの記憶に近い。

 ビートルズの初期のレコーディングは2トラック録音だったそうですが、「ヘイジュード」はビートルズとしては初の8トラック録音。それも保守的でまだ4トラだった EMI のアビーロードスタジオをこのときだけ飛び出して、トライデントスタジオ(Queen で有名なスタジオです)で録音したとのこと。ビートルズは何故このシングルで8トラ環境で録音をしたかったのでしょうか?オーケストラを使っていますが、他のアレンジは至ってシンプルで4リズムはおそらく一発録りで済むはず。もしかしたらこのプロモビデオ撮影のことも頭にあったのか?

 このビデオかなり不思議なビデオで、演奏はレコード音源、ヴォーカルは別(撮影時ライブ)に聞こえます。8トラのレコーディング音源から、マイナスワンのカラオケを作っていたのか?しかしヴォーカルは時々レコード音源ぽいのが聞こえて、ポールの声がダブルトラックになったりします。雑、というかテープと演奏をあわせるためには必要だったか。まあとにかくポール先生はかなり生き生きと歌ってます。ちなみに客は300人であれども、ビートルズが観客の前で歌うのは、コンサートをやめた1966年のキャンドルスティックパーク以来であったとのこと。いやー、飽きないですね、ビートルズ。



 CDの音源についても軽く。息子の Giles Martin がリミックスしています。ビートルズこれまでの再発はリマスターが主で、リミックスは一部の企画ものを除くと初めてのこと。これがいい仕事をしています。私が一番驚いたのは「Penny Lane」。このリミックスはすごいですよ。全ての楽器が原音にどんどん近づき、かつオリジナルミックスのテイストを損ねない、と私は感じてます。盤全体的に、打楽器は金属音がし、ベースは太くなり、ヴォーカルの臨場感が増しています。好きな音というのは好みがあると思いますが、ここまで見せられちゃったら、もう後戻りできない感じ。発売50年も経ってこんなに音が良くなるなんて。全アルバムをジャイルズにこの手法でリミックスしてほしいです。

 ビートルズはプロモビデオを制作し続けてきたにもかかわらず、ビデオ集がありませんでした。この商品、決して廉価ではないですが、CD+2DVDで輸入盤が5000円程度。えらく手間ひまかかってる作品なのにシンプルに映像集としてこの値段で出してくれてよかった。今までお布施を払ってきた甲斐があったというものです。




(たかはしかつみ)




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