2015.11.24
月のうさぎと地上の夢 月のうさぎと地上の夢
櫛引彩香

恋する運命 (2014)

 1970年代の後半に日本のポップス、ニュー・ミュージックと呼ばれる音楽シーンの中でユーミンを筆頭にして多くの女性シンガー・ソングライターが生まれました。彼女らの音楽的遺伝子というと大げさですが、それらが後の、日本の現在のシーンを形成する女性シンガー・ソングライターの音楽のバックグラウンドになっていることは言うまでもないことでしょう。
 先に紹介した女性シンガー・ソングライターの井上侑さん、ミムラス内藤彰子さんのそれぞれの歌やサウンドを耳にすると、そう感じとれるのではないでしょうか。
 前置きが長くなりましたが、今回も引き続き、私の好きな日本の女性シンガー・ソングライターの一人を紹介します。
 2015年、デビュー(アルバム・デビュー)15周年を迎えた櫛引彩香(くしびきさやか)さんです。櫛引彩香さんといっても知らない方が多いのではないかと思います。彼女の音楽キャリアに短く触れたいと思います。
 彼女は青森県出身の女性シンガー・ソングライターで、1999年にシングル盤の「いつもの気分で」でメジャーデビューし、2000年に冨田恵一氏他のプロデュースの下にデビューアルバム『MUSH☆ROOM』をリリースし、2002年には鈴木祥子さん他のプロデュースで2枚目のアルバム『Essential』をリリースしました。その後は、活動をインディー・レベルに移し、今までに8枚(櫛引彩香トリオ名義のカバー・アルバムやミニ・アルバムを含めて)のアルバムをリリースしてます。今年、彼女はデビュー15周年の記念して、ヒックスヴィルのメンバー、旧知の松田岳二さん他を迎えてデビュー・アルバム「MUSH☆ROOM」の全曲再現ライブを行いました。
 さて、今回、取り上げる「月のうさぎと地上の夢」は、2014年のリリースされた彼女の最新アルバム『恋する運命』に収められている歌です。
 彼女の柔らかで温かいヴォーカルをシンセの浮揚感あるサウンドにのせて、「月のうさぎの夢」と地上の私と「アナタの夢」の世界が童画的なイメージの中で歌われるといったらいいのかしら。
 Aメロの「感覚は飛び跳ね/そっぽ向いて笑う/それでもどことなく魅力的」とBメロの「アナタの夢はとてもステキだから/私は遠くでずっと見守っているよ」がとても気持ち良く耳に馴染むメロディとして聴けます。打ち込みとシンセのサウンドながら、彼女の歌を聴く者を酔わせます。
 このアルバムでは、英語詞の「I Say A Little Prayer」やシンプルなバンド・サウンドをバックに軽快な歌の「ふたりの旅」ほかも彼女の歌の魅力を感じさせます。もっと知ってほしい女性シンガー・ソングライターのひとりです。

(伊東 潔)




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