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山下達郎 Performance 2015-16 レビュー

2016.05.05
Performance 2015-2016

Performance 2015-2016

山下達郎

(2016)

#Tatsuro Yamashita Performance

2015年10月スタートの『山下達郎 PERFORMANCE 2015-2016 40TH ANNIVERSARY』が2016年4月に無事千秋楽をむかえました。1975年4月にシュガー・ベイブの一員としてレコードデビューした山下達郎の40周年記念ツアー。笑いから涙まで色々いただいたパフォーマンス。達郎さん、バンド・スタッフのみなさん、ありがとうございました。

正月でほぼ折り返す全64公演、最終的に固まったセットリストは次の25曲の3時間半です。
  1. Sparkle (1982) / For You
  2. Daydream (1980) / Ride On Time
  3. Windy Lady (1976) / Circus Town
  4. Down Town (1975) / Songs
  5. 土曜日の恋人 (1985) / Pocket Music
  6. Endless Game (1990) / Artizan
  7. 風の回廊 (1985) / Pocket Music
  8. すてきなメロディ (1975) / Songs
  9. 過ぎ去りし日々 “60’s Dream” (1975) / Songs
  10. Can't Take My Eyes Off You (new) / cover
  11. Dancer (1977) / Spacy
  12. Chapel Of Dreams (1986) / OnSt 2
  13. おやすみロージー (1989) / JOY
  14. Angel (1999) / OnSt 3
  15. クリスマス・イブ (1983) / Melodies
  16. 希望という名の光 (2010) / Ray of Hope
  17. さよなら夏の日 (1991) / Artizan
  18. Sugar (1975) / Songs
  19. Bomber (1978) / Go Ahead!
  20. Let's Dance Baby (1978) / Go Ahead!
  21. アトムの子 (1991) / Artizan
  22. Happy Happy Greeting (1998) / Kinki 提供曲 (Rarities)
  23. Ride On Time (1980) / Ride On Time
  24. 恋のブギ・ウギ・トレイン (1979) / アンルイス提供曲 (JOY)
  25. Your Eyes (1982) / For You

"Sparkle" に始まる冒頭の4曲で今回のライブの熱量を十分に感じます。早くもM2 "Daydream" から、しつこくも気持ちいいカッティング合戦と難波弘之の長めのエレピソロが。そして80年代かと思わせながら、最初のハイライトである "Windy Lady (Sugar Babe Version)" 〜 "Down Town" のシュガー・ベイブのレパートリーへ。この4曲はツアー終了記念として 2016.4.24のサンデーソングブックで早速オンエアされました。

M5 からの3曲は 80年代後半テイストで。「初めて人前で歌います」という "土曜日の恋人” は初期達郎コンピューターミュージックの疾走感が手に取るように再現。そしてコーダでは新たにアレンジされたコーラスが新たなコーラスの二人 ENAさん・ハルナさん によって奏でられたとき、この新編成のバンドの成功を確信しました。

続けてシュガー・ベイブふたたび。"すてきなメロディ" は、一度聴いたら忘れられない 達郎=ハルナのデュエット。12月に書いたシュガー・ベイブの原稿はネタバレ自粛でしたが本当はハルナ賛辞を書きたかった。M9 はアコースティックギターを抱えて舞台セットのベンチに腰掛けてのパフォーマンスで40年を振り返ります。

M10はおなじみ Frankie Valli の "君の瞳に恋してる"。客席の湧きようは本人もネタにしたほどの25曲中最大級のもの。それに気を良くしてかヤケクソかはわからねど、終盤戦では片膝パフォーマンスやら花道パフォーマンス(マイクケーブルが延びないのでわざわざワイヤレスに持ち替える!)まで飛び出す次第。しかし湧かせたのはアンサンブルも。イントロの完成度は、宮里陽太のバリトンサックスと柴田俊文のシンセで作っていたのか?

「明るい曲を」選曲した本ツアーにあって、M11 "Dancer" は「唯一まじめな曲も」と断っての演奏。『Performance 2013』で明かされた60年代安保の想い出から、現代政治・国際情勢へのメッセージとも。宮里陽太の驚くべきサックスソロがコンサート前半を締めくくり、お楽しみアカペラへ。アカペラコーナーは毎晩演った "ロージー" を軸に3曲が演奏されます。自信作 "Chapel.." が圧巻。そして舞台は佳境へ。

"クリスマス・イブ" "希望という名の光" "さよなら夏の日" の鉄板クラシックスが演奏されます。発表30年、5年、25年というでこぼこの曲たちが醸し出す一体感。この3曲は、聴くたびに感動のポイントが変わってくる、どこで泣かされるかわからない危ない曲たちなのです。

舞台はさらにもう一つシュガー・ベイブが用意されている。"Sugar"。この "Sugar" はいい。達郎=佐橋のギターソロバトル、達郎カッティングの鬼と化す。コーラス隊のかわいい手のクルクル。全てが意外な(失礼)喜びでした。この曲を経ていつもの大団円へ向かいます。



音楽が主役だった時代

「40代後半から60代が山下達郎のリスナーの中心、この世代は文化の中心に音楽があった」と山下達郎は指摘します。山下自身、90年代以降音楽活動持続の方法を模索し続け、ライブ中心の活動に改めてたどり着いたのが2008年。ここから9年で6回のツアーを敢行します。年またぎも含めると毎年のツアー。そのツアーが確立した今、変化したのは山下の音楽活動ではなく、音楽シーンそのもの。「音楽がダンスや映像の脇役になってしまった」。そんな中、山下達郎は音楽の豊かさを精緻な技術と愛情とお笑いで高らかにうたいます。「かっこよく歳をとりましょう」。達郎さんもファンも貪欲に前を向きます。40周年、いまだ良くなる山下達郎ツアーでした。



こんなことも

おまけの曲と差し替え曲
追悼
クリスマス・イブ
65.5公演
ポスター
メンバー


達郎さん、最高のツアーありがとう。「また会いましょう」



(たかはしかつみ)