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難波弘之デビュー40周年記念ライブ

2016.09.14
鍵盤生活40周年記念ライブ

鍵盤生活40周年記念ライブ

難波弘之

(2016)

#Tatsuro Yamashita Performance

難波弘之デビュー40周年記念ライブに参加してきました。難波弘之、そうる透、松本慎二のセンス・オブ・ワンダーはパワフル。4時間半、めちゃくちゃエネルギーのいる曲々を疲れも知らず、楽しげに、そして上手い。プログレ/ブリテッシュの共通点があるも極めて多様なゲストの個性と力量がぶつかり合い、一瞬たりとも飽きない、それでいてどこか心暖まる、楽しいライブでした。

会場の EX THEATER は六本木に3年ほど前に開場した、着席キャパ1000弱のライブハウス。定刻18時すぎに 金子マリ&Bux Bunny のデビュー盤ジャケットが投影され、その1曲目「あるとき」の音源が流される中、センス・オブ・ワンダー(SOW)の3名が登場。そのまま明るいファンファーレのイントロと難波のヴォーカルによる「SLOW DOWN」。続けて山下達郎・吉田美奈子作の「夏への扉」、これぞ変拍子なインスト「百家争鳴」が続きます。次はちょっと Yes っぽいナイーブな「ココロと心臓」は出たばかりの新作から。ここまでのステージは SOW の3名だけ。「アナログシンセでいまどき六本木でこんなの演ってるのぼくたちだけ」と明るい自虐で和ませます。

5曲目に最初のゲスト(だったはずの)バーニー日下部が招き入れられます。どちらもギターインストで《速いの》M-5 と《泣きの》M-6 の2曲で好対照なソロを観客ゴクリ。これでようやくフォーリズムが揃います。なんでもゲストに招かれてからバーニーの元へは難波弘之から次から次へと音源が送られてきたとのこと。「彼はだまされやすいひとだから」(難波)という可哀想も観客うれしい流れで、バーニーはこの日のハウスバンドに吸収されます。

7曲目にいよいよ玲里登場。最初に「3分もらいました」と自己紹介を述べ、難波氏との出会いを語り(生まれたときからお世話に)、難波弘之のファンとして50周年、60周年もその先も追っていきたいとの賛辞を礼儀正しく述べます。ああいい育ち方してるな〜、と演奏前から会場をつかむ。曲は6曲、挨拶代わりの先の新作「不透明」、セカンドアルバムからの「ペシミストの夜明け」(いいなあ、この曲の《ややこしい》構成)、この夜は来られずも40周年記念がほのめかされた金子マリとバックス・バニーの「セレナーデ」(亀渕ユカ作詞、難波弘之作曲)はヴォーカリストとして、さらに難波とのコンビで演劇集団キャラメルボックスに提供したポップス M-10・M-12、堂々のサンソンでオンエア曲 M-11「シュガー・ベイビー」では作ったときに目の前に SUGAR BABE のバッジがあった、とは山下達郎への報告を兼ねたメッセージ。


ここで休憩。会場にはお母様である難波千鶴子氏の歌曲の独唱が流されていました(NHKラジオ?の音源っぽい、ちゃんと聴いてればよかった、ビール飲んでまして…)


2部は SOW による新曲「浮遊」から。しかしインストかと思わせて忘れた頃に歌が出てくるんですよね。プログレだから仕方ないか。美しい旋律は織田哲郎の作。

続いて3人目のゲスト高嶋政宏が登場。いきなり着ている《ポセイドンTシャツ》をうれしげに指差し、ブルース曲調バックにおかしな日本語のラップを歌っている…クリムゾンの "Cat Food"(意訳)だった ( ゚д゚)。「猫飯、おかわり」…ここからがすごかった。ポセイドンを脱ぐと下には《Red Tシャツ(裏ジャケ)》。おおっと思ったら "Starless" のイントロ。歌い込んでる。プログレおたくエピソードの数々は、難波弘之からも絶賛。しかし "Starless" を生で聴いたのは初めてだ。この人はまじで John Wetton 好きなんだなあ。これ完コピに近いもので、イントロの歪んだ美しいトーンと展開部の単音上昇メタリックソロを再現したバーニー。インプロビゼーションは難波弘之も活躍の SOW 流にアレンジで再生。いいもの見せてもらいました。と思うもつかの間、次は玲里を招き入れて彼女との2声ハーモニーによる「風に語りて」。今度は Greg Lake の叙情もいい。クリムゾンのバッキングでさらりと決められる玲里にもまた別な魅力を。最後は高嶋の自曲を SOW アレンジで。このシングルのカップリングが "Starless" だったんだって!恐れ入りました。

高嶋政宏の怪演のあと、難波弘之が舞台下手の袖に立って次のゲストを招き入れる。一瞬の沈黙のあと山下達郎登場。で、ぼそぼそと下手で話す2人がかわいらしい(機材設定のための時間稼ぎ)。「ブリテッシュはこんな時でないとできない」の弁は15年前の難波弘之25周年ライブ時のゲスト出演と同じなれど、前回の緊張感とは違い、最初っから達郎さんバンドの上手さを讃えるたたえる。入りは和やかなれど演奏始まると高い集中。「DERAM、IMMEDIATE で育った」という山下達郎フェイバリットが「Cadillac」「サテンの夜」「青い影」と3連発。60年代後半に巣鴨・池袋でロックな中高生活を同い年として過ごした仲を見せつけます。続いて「難波君がどうしてもやりたいというので1曲増えた」という The Nice の "Hang On to a Dream"。Tim Hardin がどうたらこうたらと一瞬サンソンモードもいいところ。さらに驚きは "Still Got the Blues"。「バーニーさんがいるならこの曲」と山下達郎のリクエストで達郎ヴォーカルと泣きのバーニーギターを満喫。山下達郎はバンドを絶賛し終止、歌う嬉しさが止まらない状態。とくにバーニーへの賛辞は最上級。締めは「これぞロックンロール」と宣言しガツンとキンクス!ここまで達郎6曲、マニアックツアーよりもマニアックなステージで大団円(あれ、誰のステージ:)。そして舞台は SOW にもどり難波の華麗な旋律と指さばきが楽しめる「DUNE」を3名で奏でます。


アンコールは《キッツイやつ》演ろうと「オペラ座の怪人」。難波弘之はショルダーキーボードのサービスも含め弾きまくります。そしてお待ちかねの「くるみ割り人形」。この2曲を SOW のトリオで締めくくります。

ここでゲストが全員ステージへ。なにやら玲里がケータリングワゴンを。なんと前日誕生日の難波弘之へバースデーケーキのファーストバイト?の儀式。おまけに当日誕生日の松本慎二へも。本当にいいお嬢さんだなあ。これは難波さんにはすっかり秘密で。そこで難波弘之の「ベタな曲」な意向で山下達郎に歌わせてしまったのがこの曲 "Hey Jude"。どっと湧く客席。嗚呼、ポール先生の大名曲を達郎さんが真剣に歌っている。これは夢か幻か、しかも一緒にコーラスさせてくれるなんて…我に返ると最終曲 "Stand by Me"。こちらは山下、高嶋、玲里でリード廻し。玲里がすごくいい味出している。


ここまで4時間半、SENCE OF WONDER + Burny のプロフェッショナルと、難波弘之の指さばきを十二分に堪能しました。流麗なクラシカルロック・テイストのみならず、曲中に巧みに挿入される、ジャージーやリズム&ブルースの味わいを持つ難波フレーズ。「この5年でさらに上手くなっている」とは山下達郎の弁。それは演奏技術のみならず芸術性やグルーブ感までをのもの。難波さん、最高の夜をありがとうございました。


難波弘之 鍵盤生活40周年記念ライブ
    〜 一生 鍵命 〜  
2016年9月10日 EX THEATER ROPPONGI
SENCE OF WONDER 〔難波弘之(Key,Vo) そうる透(D) 松本慎二(B)〕
高嶋政宏 / Burny日下部 / 玲里 / シークレットゲスト
  1. SLOW DOWN ~ 流れゆく愛 / SOW (1986)
  2. 夏への扉 / SOW (1979)
  3. 百家争鳴 / SOW (1982)
  4. ココロと心臓 / SOW (2016)
  5. 953691 / Burny 日下部 (1987)
  6. Time Was / Burny 日下部 (1987)
  7. 不透明 / 玲里 (2016)
  8. ペシミストの夜明け / 玲里 (2012)
  9. セレナーデ / 玲里 (金子マリ & Bux Bunny 1978)
  10. The Door Into Summer / 玲里 (2011)
  11. シュガー・ベイビー / 玲里 (2016)
  12. 目醒めの空(あお) / 玲里 (2011)
    (休憩)
  13. 浮遊 / SOW (2016)
  14. Cat Food(日本語意訳) / 高嶋政宏 (King Crimson 1970)
  15. Starless / 高嶋政宏 (King Crimson 1974)
  16. I Talk to the Wind / 高嶋政宏 (King Cromson 1971)
  17. こわれるくらい抱きしめたい / 高嶋政宏 (1993)
  18. Cadillac / 山下達郎 (The Shamrocks 1965)
  19. Night in White Satin / 山下達郎 (Moody Blues 1967)
  20. A Whiter Shade of Pale / 山下達郎 (Procol Harum 1967)
  21. Hang On to a Dream / 山下達郎 (The Nice 1969)
  22. Still Got the Blues / 山下達郎 (Gary Moore 1990)
  23. You Really Got Me / 山下達郎 (The Kinks 1964)
  24. Dune / SOW (1988)
    (アンコール)
  1. オペラ座の怪人 / SOW (1985)
  2. Nut Rocker / SOW (ELP 1971)
  3. Hey Jude / 参加者全員 (The Beatles 1967)
  4. Stand by Me / 参加者全員 (Ben E King 1961)



終演後掲出されたメンバーの寄せ書き


(参考)難波弘之 25周年記念ライブ (2001)

(たかはしかつみ)