2016.11.11 - Songwriter | ||
I Can't Let Go
Chip Taylor (1966) |
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Songwriterシリーズ、今回は Chip Taylor を取り上げます。
Chip Taylor、本名は James Wesley Voight。1940年に生まれています。2才上の兄が俳優のジョン・ヴォイド (Jon Voight)。したがって女優のアンジェリーナ・ジョリー (Angelina Jolie) は Chip Taylor の姪っ子に当たります。
1950年代には Wes Voight の名前で自作のロカビリースタイルの楽曲で活動、シングルを数枚リリースしています。1960年代に入ると名前を Chip Taylor に変え、シンガー、そしてソングライターとして活動していくことになります。
1963年に Justine "Baby" Washington に Norman Meade という人と共作で、"I Can't Wait Until I See My Baby "というシングルをリリース。Norman Meade は後にソングライター、プロデューサーとして知られる Jerry Ragovoy のことです。
その後 Chip Taylor はソングライターとして、Gene McDaniels、Jimmy Helms、Johnny Tillotson、Little Eva、Bobby Vinton、Bobby Fuller four などに楽曲を提供していきます。その多くが Ted Daryll と共作となっています。
1966年になるとスタジオセッション・ギターリストの Al Gorgoni と組んで、Just US というグループを結成。 Kapp Records からアルバムと数枚のシングルをリリースします。
Al Gorgoni について触れておきます。
Al Gorgoni はニューヨークを拠点として多くのセッションに参加したアコースティック・ギターの名手として知られています。Four Seasons の初期の作品、例えば、"Sherry"、"Big Girls Don't Cry"、"Dawn" 等は Al Gorgoni がギターで演奏に参加。他に Ruby & the Romantics の "Our Day Will Come"、The Cowsills の "The Rain, The Park and Other Things" 等々に参加。
B.J. Thomas の1972年のアルバム『Billy Joe Thomas』では、Steve Tyrell と共同でプロデュースを担当。全面的なアレンジも Al Gorgoni が行いました。
Chip Taylor は1965年にバンド、The Wild Ones に "Wild Thing" という曲を提供。翌年、イギリスのビートバンド、The Troggs が取り上げ、大ヒットとなります。
また、Chip Taylor と Al Gorgoni が見い出したと言われている女性歌手、Evie Sands に "I Can't Let Go" という楽曲を提供。1966年にその曲をイギリスの The Hollies が取り上げ、これまたスマッシュヒットとなります。
1967年には Evie Sands に書いた "Angel of the Morning" がヒット。後に Merrilee Rush、Juice Newton らが取り上げました。
1971年、Chip Taylor は先の Al Gorgoni、そして Trade Martin と組んで、Gorgoni,Martin & Taylor を結成。2枚程アルバムを制作しています。
Trade Martin についても少し触れておきます。
Trade Martin も1950年代から活動しているシンガー、ソングライター、アレンジャーです。Red Bird Records では主にアレンジを担当。 Barry Mann の シングル "Talk To Me Baby" などを手掛けました。1972年には Buddah Records からソロアルバムをリリースしています。
以下、Chip Taylor の楽曲を聴いていきたいと思いますが、上記の通り、多くのミュージシャンに取り上げられることが多いので、数曲聴き比べていきたいと思います。
Sad Songs (Chip Taylor) / Chip Taylor (1961)
1961年、MGM Records からリリースしたソロシングル。1950年代、Wes Voight 名義でリリースしていた楽曲はロカビリー調でしたが、1960年代に入るとそれが少し薄れて様々な楽曲を書くようになります。
I Can't Wait Until I See My Baby's Face (Chip Taylor-Norman Meade aka Jerry Ragovoy) / Justine "Baby" Washington (1963)
I Can't Wait Until I See My Baby's Face (Chip Taylor-Norman Meade aka Jerry Ragovoy) / Dusty Springfield (1967)
1963年に Justine "Baby" Washington に提供した作品。共作は Jerry Ragovoy。この曲がソングライターとして出発する機会となったと言われています。SSBでは Jerry Ragovoy 特集でオンエアされました。
1967年にイギリスの歌姫、Dusty Springfield がアルバム『Where Am I Going』でこの曲を取り上げました。素晴らしいアレンジ、グルーヴ感です。
Takin' Back What I Said (Chip Taylor) / Little Eva (1965)
1965年、Dimension Records で Little Eva に提供した楽曲。AB面共、Chip Taylor の作品です。アレンジは Charles Callelo。この頃はブリル・ビルの作家達とも交流があったそうです。
Strange Song (Chip Taylor) / The Sandpipers (1967)
1967年、The Sandpipersのアルバム『Misty Roses』に収められていた1曲。プロデュースは Tommy LiPuma。アレンジは Perry Botkin, Jr. が担当。優しい曲です。
I'll Give My Heart to You (Chip Taylor-Al Gorgoni) / Kathy McCord (1968)
1968年、Rainy Day Records からリリースした作品。Kathy McCord という女性は当時16才で、Chip Taylor の旧知のミュージシャン、Billy Vera の妹だそうです。Kathy McCord は1970年に CTI Records からアルバムをリリースしています。
Just Let It Happen (Chip Taylor-Trade Martin) / Chi Chi (1966)
Just Let It Happen (Chip Taylor-Trade Martin) / The Arbors (1967)
1966年、Kapp Records で Chi Chi こと Chi-Chi McCauley に提供した曲。Chi-Chi McCauley はRed Bird Records で数枚シングル・リリースをしている女性歌手。Trade Martin との共作です。アレンジは Jimmy Wisner が担当。同年、Chip Taylor 自身も歌っています。翌年にボーカルグループ The Arbors が取り上げました。こちらは Bill Stegmeyer がアレンジを担当しました。落ち着いた素晴らしいアレンジです。
I Can't Let Go (Chip Taylor-Al Gorgoni) / The Hollies (1966)
I Can't Let Go (Chip Taylor-Al Gorgoni) / Gorgoni, Martin And Taylor (1972)
Chip Taylor のもう1つ代表曲。Al Gorgoni との共作曲です。The Hollies の方はイギリスらしくシャープで溌剌としています。1972年には Chip Taylor 自身のグループ、Gorgoni, Martin And Taylor でセルフ・カバー。こっちは落ち着いた大人な雰囲気が漂います。どちらもとても演奏力が高いです。
Angel of The Morning (Chip Taylor) / Evie Sands (1967)
Angel of The Morning (Chip Taylor) / Chip Taylor (1971)
Chip Taylor の代表曲の1つ。オリジナルは Evie Sands。後に Merrilee Rush、Juice Newton らも取り上げましたが、1971年、Chip Taylor 自身のボーカル・バージョンがいいです。Chip Taylor は歌唱力、表現力も素晴らしいです。