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2019.02.10
Mas Que Nada

Mas Que Nada

Lani Hall

(1966)

#Magic Voice

(2019年2月3日SSB『リクエスト特集』で Sergio Mendes & Brasil'66 "Pretty World" がかかったので、)

Magic Voicesシリーズ、
今回は Lani Hall を取り上げます。

Lani Hall は現在も人気あるシンガーで、A&M Records の Herb Alpert の奥様としても広く知られている方です。多くのラテン・ナンバーやボサノバを歌い、ブラジル国民からも愛されたシンガーですので、ブラジル出身と思われている方も多いと思いますが、アメリカ出身の方です。今回は主に、Sérgio Mendes & Brasil '66 に所属していた1966年から1971年頃までの時代を取り上げていきたいと思います。

1964年にアメリカに移住したブラジル出身のピアニスト、作曲家、アレンジャーの Sérgio Mendes は1965年に、Sérgio Mendes & Brasil '65 を結成します。Sérgio Mendes は母国ブラジルの音楽や自分の音楽の支柱になっていたジャズのならず、アメリカ国内や世界で流行している楽曲にも目をつけ、その曲をラテンタッチ、ボサノバのアレンジでレコードをリリースすることを考えます。そしてAtlantic Records から、シングル Lennon-McCartney の "All My Loving" をリリースしました。その時の女性ボーカルは Wanda Sá という人です。

同年の1965年、Sérgio Mendes はシカゴの喫茶店で歌っていた、1人の女性に出会います。当時、20才の Lani Hall です。その素晴らしい声を聴いた Sérgio Mendes は、Atlantic Records から A&M Records への移籍をきっかけに、その Lani Hall を西海岸に招いて、自身のグループを Sérgio Mendes & Brasil '66 として再結成し、A&M Records から再デビューします。音楽マーケティングに長けていた、A&M Records の首脳陣、Herb Alpert や Jerry Moss からの提案もあって、Sérgio Mendes & Brasil '66 は女性ダブル・ボーカルのスタイルで売り出すことになりました。

Sérgio Mendes は、Lani Hall の声に惚れ込んでいましたので、そのスタジオ録音の際、女性ダブル・ボーカルの部分を Lani Hall だけの声のユニゾンで多重録音で行いました。Sérgio Mendes の優れたアレンジのみならず、Sérgio Mendes & Brasil '66 の音の特徴というのは、この Lani Hall による"1人ユニゾン"が心地よく感じる大きな要素となっていると思います。
シカゴ生まれの Lani Hall はポルトガル語が話せませんでしたが、Sérgio Mendes による発音の指導の下、レコーディングが行われたそうです。


しかし、もう1人の女性ボーカリスト、Bibi Vogel、Janis Hansen、Karen Philipp がまったく歌っていなかった訳ではありませんので、念のため。

Sérgio Mendes & Brasil '66 時代の Lani Hall の声を聴いていきたいと思います。


Mas Que Nada (Jorge Ben) / Sergio Mendes & Brasil '66 (1966)

A&M Rocords 移籍の第一弾アルバム『Herb Alpert Presents Sergio Mendes & Brasil '66 』から。1963年に作られた Jorge Ben の楽曲をスマートに仕上げて、万人にも聴きやすいものとなり、世界的なヒットとなりました。今回は映像付きで。映像が付きで聴くと2人で歌っているものと錯覚してしまいますが、Lani Hall による"1人ユニゾン"です。


Goin' Out of My Head (Teddy Randazzo-Bobby Weinstein) / Sérgio Mendes & Brasil '66 (1966)

オリジナルは Little Anthony & the Imperials で、曲は Bobby Weinstein-Teddy Randazzo によるもの。このナンバー、Sergio Mendes & Brasil '66 で初めて聴いたので、とても思いれがあります。これも Lani Hall による"1人ユニゾン"です。 (音源はレコーディングのもの) 。隣の女性ボーカルは Janis Hansen。


The Frog (Joao Donato) / Sérgio Mendes & Brasil '66 (1968)

Joao Donato のこの特徴あるナンバーを。とても素晴らしいグルーヴ。この The Frog は Sergio Mendes & Brasil 66 が4枚目のアルバム『Look Around 』で取り上げて、その後、多くのブラジルのミュージシャンが演奏するようになりました。今回も楽しいダンス振りが入った映像を一緒に。


The Fool On The Hill (Lennon-McCartney) / Sérgio Mendes & Brasil '66 (1968)

Lennon-McCartney のナンバーを洒落たアレンジで。アルバムでは3枚目のアルバム『Fool On The Hill』から。このアルバムからストリングスは入るようになります。ここから以降、隣の女性ボーカルは Karen Philipp になります。


Pretty World (Antonio Adolf-Tibério Gaspar) / Sérgio Mendes & Brasil '66 (1969)

ここでも書きましたが、1970年、日本万国博覧会でも演奏したこの曲を。ブラジル、リオ出身の Antonio Adolfo と Tibério Gaspar の共作曲で70年代ブラジルを代表する楽曲。それにアメリカの Bergman 夫妻が英詩をつけたものです。映像の衣装もちょっと万博的。とっても可愛い曲です。


So Many Stars (A. Bergman-M.Bergman-Sergio Mendes) / Sérgio Mendes & Brasil '66 (1968)

"1人ユニゾン"ではなく、Lani Hall の単独ボーカルを聴いてみましょう。アルバム『Look Around 』に収録されたナンバー。その後、多くの歌手が取り上げスタンダードナンバーとなりました。作曲は Sergio Mendes。流麗なストリングス・アレンジは Dave Grusin。


Love Song (Lesley Duncan) / Lani Hall (1972)

Lani Hall は1971年に Sérgio Mendes & Brasil '66 を離れ、ソロ活動に入ります。1972年のソロ・デビューアルバム『Sun Down Lady 』から。曲はシンガーソングライターの Lesley Duncan によるもの。プロデュースとアレンジは Herb Alpert。翌年、Lani Hall は Herb Alpert と結婚しました。

(富田英伸)