2019.04.06 - Songwriter
Only You Only You
Buck Ram - Songwriter

(1955)

(2019年3月31日、SSB「内田正人さん追悼 ザ・キング・トーンズ特集 」で、 "Only You" がかかりましたので。)

Songwriterシリーズ、
今回は Buck Ram を取り上げたいと思います。
Buck Ram は1930年代から活躍を始めた人ですが、特に1950年代に The Platters を手掛け、現在まで通じる、いわゆるポピュラー・ミュージックに大きく貢献した人です。

Buck Ram の簡単な経歴から。
Buck Ram は1907年シカゴ生まれ、1991年に亡くなっています。1930年代中期には Buck Ram のクレジットが発見できます。1944年には Buck Ram's All Stars 名義でインスト曲をシングルリリースしています。その他、Ella Fitzgerald、Cab Calloway、Harry James、Glenn Miller などに楽曲を書きました。

1950年代中期になり、Buck Ram は The Platters というまだ世に知られていないグループに出会います。The Platters はそれまで Ralph Bass というプロデューサーが手掛けていたいわゆる "Race Music" と言われた範疇の黒人層をマーケットにしたごく普通のR&B ボーカルグループでした。

Buck Ram はまずリードシンガーにオーディションで選抜した Tony Williams を抜擢します。Tony Williams は当時人気だった 女性R&Bシンガーの Linda Hayes の弟でした。またグループに華を添えるように女性ボーカルに Zola Taylor も加入させました。ちなみに Zola Taylor は 後に Frankie Lymon の奥さんになった人です。

Buck Ram は Ralph Bass から引き継ぐ形で The Platters をメジャーの Mercury Records に移籍させました。目的は "Race Music" からの脱却です。そしてマーケットを黒人層のみならず、アメリカ中産階級層も狙って、The Platters を売り出します。

1955年、Buck Ram が書き、新生 The Platters はこれまでにない Mercury Records の設備の整った録音スタジオで録音された "Only You (And You Alone)" はUS R&B Chart の1位を記録、後に世界的ヒットとなりました。同年リリースの "The Great Pretender" も US R&B Chart の1位を記録、The Platters の人気を決定づけました。

The Platters が、ヘビーな Doo Wop ファンに今一つ人気がないのはあまりストリート感を感じず、ソウル色が薄く感じるところだと思いますが、楽曲的にも優れ、歌唱も素晴らしく、今の時代でも充分聴くに値する楽曲ばかりです。The Platters を中心に聴いていきたいと思います。


I'm Gettin' Mighty Lonesome For You (Buck Ram) / Ella Fitzgerald & Her 4 Keys (1942)

後に偉大なジャズシンガーとして評価される Ella Fitzgerald が1942年に Decca Records で吹き込んだ楽曲。Buck Ram にとっても初期の作品となります。


A Christmas Prayer (Buck Ram) / The Penguins (1955)

"Earth Angel (Will You Be Mine)" で知られる、The Penguins に提供したクリスマスナンバー。The Platters のプロデュースの同時期に作られた作品です。


Only You (And You Alone) (Buck Ram) / The Platters (Federal 1954)

Only You (And You Alone) (Buck Ram) / The Platters (Mercury 1955)

"Only You" はまず初めに1954年にマイナーレーベル、Federal Records からリリースされましたが、翌年、Mercury Records で録音し直され、そのバージョンが世の中を席捲し、R&Bチャートを7週間1位を記録します。Federal Records 盤のリードボーカルはかなり細めですが、Mercury Records盤 と同じく、Tony Williams だと思われます。


The Great Pretender (Buck Ram) / The Platters (1955)

"Only You" のヒットを受け、Buck Ram が次に書いた曲。Buck Ram が滞在したホテルの洗面所で20分で作ったと伝えられています。テナーサックスは映画『ピンクパンサー』などでも知られる、Plas Johnson が演奏しています。この曲は映画『アメリカン・グラフィティ』(1973) でも印象的に使われました。

(You've Got) The Magic Touch (Buck Ram) / The Platters (1956)

1956年、Mercury Records からリリース。同年、R&Bチャートの4位を記録。Buck Ram 自身も Buck Ram and His Orchestra 名義でシングルリリースしています。


Twilight Time (Nevins-Nevins-Dunn-Ram) / Three Suns (1946)

Twilight Time (Nevins-Nevins-Dunn-Ram) / The Platters (1956)

元々は 1940年代のインスト・グループ、Three Suns がオリジナルです。各資料によると作曲は Three Suns のメンバーで、後に Aldon Music を設立することになる Al Nevins、Morty Nevins、Artie Dunn で、後に Buck Ram が詩をつけたとなっていますが、1944年時点でインストナンバーにも関わらず、Les Brown などのシングルでは既に Buck Ram のクレジットが掲載されています。真意の程は不明ですが、後に The Platters のヒットによって広く知られるナンバーです。





(富田英伸)

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