【イントロダクション】
シリーズ「Cinema Music Composers」について
今回から新シリーズ「Cinema Music Composers」を開始します。
音楽が好きになるきっかけは映画音楽だったと思います。
小学生高学年の頃、劇場で映画を観るなんて、1年に数回しかなかったので、ほとんどがテレビの洋画劇場でしたね。そんな中で出遭ったのが、NHKFMで土曜、夕方にオンエアしていた、映画音楽評論家、関光夫さんがやっていた「ポピュラーアラカルト」という番組でした。もうお亡くなりになりましたが、関光夫さんの映画音楽番組は、戦後すぐから始まったそうです。
とにかく今のようにDVDとかレコーダーとかなかった時代、映画を気軽に観ることができない時代。この番組の1時間は世界を旅するような夢の時間でした。この番組で知った映画をいつか観たいなあ〜、と思いながら録音ボタンを押していました。そして、演奏している人、唄っている人、よりも"作った人"、を意識するようになったのも、関光夫さんの映画音楽番組の影響大です。そんな関光夫さんを真似て始める「Cinema Music Composers」です(笑顔)。
Cinema Music Composers シリーズ、
初回は Dave Grusin を取り上げたいと思います。
Dave Grusin はアメリカ西海岸を中心にジャズ、コンテンポラリーな音楽のピアニスト、アレンジャーとして日本国内でも広く知られるミュージシャンですが、今回は映画音楽または作曲者としての Dave Grusin にスポットを当て、2回に分けて取り上げたいと思います。
Dave Grusin は1934年、コロラド州リトルトン生まれ。父親はバイオリン奏者、母親はピアニストで、幼い頃から音楽の中で育ちました。大学でも音楽を学び、学士号を授与。1962年には Epic Records からピアニストとしてのアルバム『Piano, Strings And Moonlight』、『A Jazz Version Of The Broadway Hit "Subways Are For Sleeping"』をリリースしています。その後活動の拠点はテレビで『The Andy Williams Show』でアレンジャーやコンダクターをやりました。
またスタジオでは Mel Torme、Peggy Lee といったジャズ歌手のアルバム等でアレンジを担当。1968年には Sergio Mendes & Brasil '66 のアルバム『Fool On The Hill』でアレンジを担当。その後も A&M Records で Sergio Mendes & Brasil '66 の一連のアルバムや Herb Alpert のアルバムで Dave Grusin はストリングス・アレンジャーとして参加し、頭角を現すようになります。
1960年中期には主にテレビの主題曲や劇判を担当。『0022アンクルの女』(The Girl from U.N.C.L.E.、1966-1967)、『スパイのライセンス』(It Takes a Thief、1968-1970)、『The Name of the Game』(1968-1971)、『刑事コロンボ/殺人処方箋』(Prescription: Murder、1968)などがあります。
Dave Grusin が1960年代後半に担当した映画音楽やその後の活動については第2回目で。
Sara Jane (Dave Grusin) / Dave Grusin (1962)
Dave Grusin の初リーダーアルバム『Piano, Strings And Moonlight』からの曲。このアルバムは既存のジャズスタンダードナンバーが中心に取り上げれていますが、本作のみ、Dave Grusin の作曲によるもの。精細なピアノ、そしてストリングスが美しいですね。
The Name Of The Game (Dave Grusin) / Chaquito (1972)
Dave Grusin が手掛けたテレビ映画『The Name Of The Game』。Dave Grusin は1968年にシングルをリリース。今回は Chaquito 名義でリリースしたイギリスの Johnny Gregory のバージョンで。このバージョン、とってもグルーヴがあって気に入っています。
It Takes A Thief (Dave Grusin) / Chaquito (1972)
これも Dave Grusin が手掛けたテレビ映画『スパイのライセンス』から。これも Dave Grusin は1968年にシングルをリリースしています。この曲もグルーヴ感ある Chaquito こと Johnny Gregory のバージョンで。
April (Dave Grusin) From "The Girl from U.N.C.L.E."/ Dave Grusin (1967)
『0022アンクルの女』(The Girl from U.N.C.L.E.、1966-1967)から Dave Grusin が手掛けた劇判から。このテレビ番組のテーマ曲は Jerry Goldsmith が担当。劇判部分は Dave Grusin、Richard Shores、そして Teddy Randazzo が担当しました。ボサノバ調の洒落たナンバーです。
The Singleman Party Foxtrot (Dave Grusin) From "The Graduate" / Dave Grusin (1968)
1968年公開の映画『卒業』(The Graduate)からのナンバー。ストリングスの音色がとっても綺麗なナンバー。Dave Grusin は自身のピアノ演奏もさることながら、ストリングのアレンジは絶品だったと思います。
The Heart Is A Lonely Hunter (Dave Grusin) From "The Heart Is A Lonely Hunter" / Dave Grusin (1968)
1968年公開の映画『愛すれど心さびしく』(The Heart Is A Lonely Hunter)のテーマ曲。このテーマを聴くと初めてこの映画を観た時の何ともやるせない哀しい気持ちが蘇ってきます。映画音楽家としての Dave Grusin が認識された作品となりました。
Beyond The Reach Of Love (Dave Grusin) From "The Heart Is A Lonely Hunter" / The Blossoms (1968)
映画『愛すれど心さびしく』からもう1曲。Dave Grusin には珍しくポップス調の曲を。ボーカルは The Blossoms が歌いました。Darlene Love がリードを取っているようです。
(富田英伸)