2019.10.23 - Magic Voice | ||
Sette uomini d'oro
I Cantori Moderni di Alessandroni (1965) |
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Magic Voicesシリーズ、
今回はイタリアのコーラス集団、I Cantori Moderni di Alessandroni を取り上げたいと思います。
I Cantori Moderni di Alessandroni(以下、I Cantori Moderni) はイタリア映画音楽を中心に多くのサウンドトラックそして、イタリア・カンツォーネ、そしてイタリア以外の海外ミュージシャンのバックボーカルなど、多岐に渡って活動してきたコーラス集団です。I Cantori Moderni の生みの親である、ミュージシャン、映画音楽作曲家の Alessandro Alessandroni のことから話を進めていきたいと思います。
Alessandro Alessandroni は1925年、イタリア、ローマ生まれ。2017年、92才で亡くなっています。10代前半にマンドリンを弾き始め、その後、ギターを始めとし、サックス、シタール、アコーディオン、キーボードと多くの楽器を手にするようになります。そしてそういった楽器や歌唱のみならず、口笛の名手でもありました。10代の頃からダンスバンドを結成し、音楽活動を開始します。
1961年に男性3人、女性1人の4人のグループ、Quartetto Caravels を結成します。メンバーには後の奥様となる Giulia De Mutiis が在籍していました。このグループで数枚のシングルをリリースしました。
その活動と並行して、Alessandro Alessandroni に幼少からの幼馴染で駆け出しの作曲家からある依頼が舞い込みます。その若き作曲家とは、後にイタリアを代表する作曲家として名を馳せる Ennio Morricone です。その Ennio Morricone からの依頼とは、今度手掛ける映画『荒野の用心棒』(PER UN PUGNO DI DOLLARI、1964)のテーマ曲のギターと口笛の演奏してほしい旨の依頼でした。説によると映画製作の予算が限られていたため、Ennio Morricone は幼年期からの知り合いの Alessandro Alessandroni に依頼したとのこと。Alessandro Alessandroni はそれを快く引き受け演奏。その後、次回作の映画『夕陽のガンマン』(PER QUALCHE DOLLARO IN PIU、1965)でもギターと口笛を演奏します。
ここで、2002年に Alessandro Alessandroni が Ennio Morricone の初期の作品群を実際に演奏した2002年のライブの模様を観てみたいと思います。
Ennio Morricone Medley / Alessandro Alessandroni(Live、2002)
Ennio Morricone の Alessandro Alessandroni への演奏力の信頼は深く、映画音楽におけるコーラスワークに関しても Alessandro Alessandroni に一任して依頼するようになります。Alessandro Alessandroni は自分のグループ、Quartetto Caravels を発展させて、コーラス集団、I Cantori Moderni を結成します。
I Cantori Moderni には、奥様の Giulia Alessandroni(Giulia De Mutiis)、Ennio Morricone の作品を中心に素晴らしいソプラノを披露することになる 女性シンガー Edda dell'Orso、男性シンガー Raoul などが在籍していました。
このコーラス集団は、Ennio Morricone の作品のみならず、多くのイタリア映画音楽、そして国内カンツォーネのシンガーそして、イタリア録音における海外のミュージシャンのコーラスワークも手掛けるようになります。その一部を挙げると、Little Peggy March、Paul Anka、Neil Sedaka、Stevie Wonder といったミュージシャンです。
I Cantori Moderni が参加した作品を今回は映画音楽中心に聴いていきたいと思います。
La fortuna è dietro l'angolo(Pisano-Scarnicci-Tarabusi) / Quartetto Caravels(1961)
まず初めに、I Cantori Moderni の前身にあたるグループ、Quartetto Caravels の楽曲。男性3人、女性1人の4人のグループで、演奏しながら歌うグループだったようです。ラテン要素もある軽快なナンバーです。
『続・夕陽のガンマン』(英題:The Good, the Bad and the Ugly)タイトル曲 / Ennio Morricone(1966)
セルジオ・レオーネ(Sergio Leone)監督のいわゆる "ドル箱三部作" の第3作目の作品、『続・夕陽のガンマン』のタイトル曲。I Cantori Moderni の存在なくしては語れない程の特徴あるコーラス、そして、リーダーである Alessandro Alessandroni による口笛です。この頃の Ennio Morricone の音楽とコーラス集団、I Cantori Moderni とは切っても切れない密接な関係にありました。
Car Drive〜『Black Box Affair Il mondo trema』/ Gianni Ferrio(1966)
イタリアの映画音楽家、Gianni Ferrio が担当した映画『Black Box Affair』(1966)から。都会的なメロディーと洒落たコーラスでとっても気に入っている曲です。
『黄金の七人』(原題: Sette uomini d'oro)テーマ曲 / Armando Trovajoli(1965)
1965年公開のイタリア映画『黄金の七人』より。Cantori Moderni がコーラスを手掛けた作品では最も人気が高い楽曲だと思います。Armando Trovajoliによる軽快なリズムと I Cantori Modernin のスキャットとの絶妙なコンビネーション!タイトルの幕開けにふさわしいテーマ曲に仕上がっています。
Mah nà mah nà 〜『天国か地獄か』(原題:Heaven and Hell) / Piero Umiliani(1968)
イタリア映画音楽家、Piero Umiliani 作曲による人気曲。その後多くのカバーが生まれました。オリジナルのサウンドトラックのこの男声は Alessandro Alessandroni によるもので、女声は奥様の Giulia Alessandroni を中心に構成されたスキャット。絶妙なボーカルのタイミングで笑いを誘います。
"La nostra notte" (Our Night) / Ennio Morricone & I Cantori Moderni(Live、1967)
最後にテレビ用のライブの模様を。冒頭に Ennio Morricone が登場。その後、I Cantori Moderni の女声のみのコーラスが始まります。全員の氏名等は不明ですが、判明した方のみ。右から2番目は Gianna Spagnuolo、イタリア国内で多くのアニメーション等の歌唱吹替も行った女性です。右から4番目は Edda dell'Orso、ソロで多くの Ennio Morricone の作品に参加。ここでも一歩前進してソロで素晴らしいハイソプラノを聴かせてくれます。右から5番目は Giulia Alessandroni (Alessandro Alessandroni の奥様)で Kema の名前でも活動しています。